軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

44.家に帰ろう。

箱の中の死者の花を見て、眉間に皺を寄せる。

手ごたえが無さすぎる。

地下1階にあった魔石。

大量に魔力を注ぎ込んでも、ほとんど溜まった形跡はなかった。

それでも、あの魔石の変化を感じた。

それは今までの事に比べたら、凄く小さな変化だったけど確かに感じる事が出来た。

でも今の浄化では、本当に何も感じなかった。

やり方を間違えたとは思わない。

つまり、俺の大量の魔力を使った浄化でも変化を起こすほど影響を及ぼせなかったという事だよな。

この箱の中の負の感情はどれだけ濃いんだ?

「主様? 大丈夫?」

ふわふわと飛ぶ妖精が、心配そうに俺を見る。

コアも水色も、少し不安そうだ。

「大丈夫。ただ、この箱の中を浄化するには工夫が必要らしい」

普通に浄化をしてもだめなら、何か方法を考えるしかない。

とはいえ、俺の最大の魔力を使っても影響を与えないなんて、どうしたらいいのか。

「主様。終わったみたい」

何が?

首を傾げて妖精を見ると、妖精が何かを見ている事に気付く。

視線を追うと、俺の腕。

「あっ。主導権か」

黒い板が巻かれている腕を見る。

特に変化はない。

本当に、終わったのか?

黒い板をトントンと叩いてみる。

次の瞬間、頭に激痛が走った。

「くっ」

なんだこの痛み!

「「「「「主!」」」」」

仲間達の慌てた声がするが、今はそれどころじゃない。

痛い!

締め付けられるような痛みに、膝をついて頭を抱える。

いつまで続くのかと不安に駆られる中、目を閉じているのにどこかの風景が見えた。

そして、まるで映画を見ているように映像が流れだす。

痛みで見る余裕などないが、どうもこの地下神殿が作られる様子らしい。

でも、どうして今なんだ?

もしかして、この映像のせいで頭が痛いのか?

映像を止めてくれ!

くそっ、無理か!

連続的に襲ってくる激痛に耐えながら、心の中で悪態を吐く。

そうでもしないと、意識を持って行かれそうだ。

時間にして数分。

俺からすると、数時間と言われてもおかしくないが。

ようやく、少しずつ痛みが引いていく。

所々見た映像を思い出す。

おそらく、この地下神殿という場所が見てきた歴史を見せられたのだろう。

無理矢理。

「はぁ。酷い目にあった」

後ろにドサッと座り込む。

まだ微かに痛みを訴えるこめかみを押さえる。

まぁ、これぐらいでは痛みは引いてくれないので、気休めだけど。

「主様、ごめん。こんな事になるなんて」

妖精が、声を震わせている。

「妖精のせいじゃないから気にするな。それに、もう大丈夫だ」

手を伸ばして妖精を撫でる。

手から伝わる震えに苦笑して、ぽんぽんと軽く叩く。

あっ、完全に痛みが無くなった。

「はぁぁ」

長いため息を吐く。

腕に巻き付いている黒い板に視線を向ける。

「えっ?」

視線の先には、銀色のブレスレット。

どうやら、勝手に変化したようだ。

しかも、このブレスレットには見覚えがある。

次の自分の誕生日に、買おうか迷っていた物と同じデザインだ。

「確かに欲しかったけど、今は微妙な気持ちになるな」

そういえば、映像の中に見習い達の姿があったな。

今まで声だけだったもんな。

3人の姿を見たら、憎しみが湧き上がるのかと思っていた。

俺がこうなっている元凶だから。

でも、不思議なほど何も感じない。

既に、見習い達に罰が下ったからだろうか?

まぁ、憎しみに囚われている暇ないし、良かったかな。

「とりあえず、家に帰ろう」

映像は自由自在に取り出せるようなので、家に帰って確かめたい。

おそらく膨大な映像だろうからな。

「帰るのか?」

水色が黒の箱に視線を向ける。

確かにどうにかしないと駄目だが、今は無理だ。

「今はどうすることも出来ないんだ。少し待ってくれ」

受け取った映像の中に、解決策があればいいが。

あと、世界の核の周りの呪いの原因も。

死者の花も呪いで、核の周辺も呪い。

もしかして、繋がっているかもしれないな。

うん、やっぱりかえって映像を確かめよう。

「そうか。分かった」

ゆっくり立って、腕を上に伸ばす。

背中からゴリゴリ音がする。

痛みに耐えるため、体を丸め力を入れていたから体が少し固まってしまったようだ。

「主様。古代遺跡と墓場は見ていかないの?」

古代遺跡と墓場?

あぁ、地下神殿と繋がる3つの空間か。

受け取った映像からどんな所なのか確認できそうだけど、実物を見ていくのも重要だよね。

「その2つを見てから、帰ろうか」

妖精の案内で、あのややこしい廊下を通ることなく地上へ戻る。

「妖精の元まで行った、あの苦労はいったい何だったんだ?」

地下神殿の柱を見ながら、ため息が出る。

あの無駄な廊下。

なんの意味があったんだか。

「主様。既に主導権を完璧に握っているから、繋がって欲しいと願えば繋がると思うよ」

そうなんだ。

だったらまずは、

「古代遺跡へ繋がれ」

目の前に、扉が現れる。

また、扉だ。

これって俺の中の固定観念かな?

何処かと繋がる場合は、絶対扉が必要みたいな。

まぁ、問題ないからこのままでいいけど。

「開けてみるぞ」

扉を開けそっと中を覗き込む。

薄暗いが、洞窟のように見える。

そして、奥には石で出来た遺跡が確認できた。

「あそこにロープがいたのか」

扉の中に入り、遺跡に近付く。

特に魔物がいたり、仕掛けがあったりはしないようだ。

「ん?」

遺跡の近くに、ゴミが少し落ちている事に気付く。

鍋に服?

この遺跡には、人が入った事があるはずだから、彼らのかな?

古代遺跡の前に来たが、壊れ過ぎて元が何か分からないな。

石の建物だったことは分かるし、柱も数本残っているが後は崩れている。

ロープがいた場所も、これではどこか見当もつかない。

ちょっと残念だな。

「随分、壊れているな」

コアの言葉に頷く。

「次に行こうか」

あれ?

そういえば、妖精は?

あぁ、チャイの上か。

「チャイ、ありがとう」

チャイの頭を撫でると、背中に乗っている妖精を見て小さくため息を吐いていた。

どうも本意ではないようだ。

ごめんな。

地下神殿に戻り、古代遺跡との繋がりを切る。

思うだけでいいの、楽だな。

「墓場へ繋がれ」

問題はこっちだよな。

墓場って!

現れた扉は、古代遺跡へと繋がった扉と変わらない。

そっと、扉を開ける。

ただ、さっきのように一気には開けず、ゆっくりと何かあったらすぐに閉められる態勢をとる。

「…………」

何事もなく開く扉。

ホッとしながら、中を覗きこむ。

「草原だよな」

覗きこんだ視線の先には、明るい草原が広がっていた。

墓場と言っていたから、どんよりした墓場のイメージをしたが、全く違う。

「墓石がずらっと並んでいるのかと思った」

本当に、何もない。

でも、この場所を見習い達は怖がっていたんだよな?

だから、何かあるはずなんだが。

「探すより、受け取った映像を確かめるか」

扉を閉めて、繋がりを切る。

よしっ、帰ろう。