軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

43.とりあえず浄化!

一番近くにある黒い箱に近付く。

そっと中を覗き込む。

頼むから遺体とか、死骸とか、意味不明な物体とか止めてくれよ。

遺体と死骸って何が違うんだっけ?

いや、今はそれはどうでもいい。

「……えっ? 死者の花? なんで、箱の中に死者の花が入っているんだ?」

妖精が腕の中で、もぞもぞと動いている事に気付く。

どうやら、知らずに力を込めて抱きしめていたようだ。

そっと力を抜くと、腕の中から箱の上にふわふわと飛び出した。

「妖精。なぜこうなっているのか分かるか?」

箱に入れている意味があるはずなんだが。

「分からない。でも死者の花を閉じ込めるなんて、駄目だ」

声が悲しそうだな。

「主。これは駄目だ」

水色を見ると、他の箱の中を順番に確かめている。

「駄目とは?」

妖精と水色が駄目という以上は、何か不味いんだろうな。

「死者の花は、亡くなった者達の苦しみを受け止めて咲く。綺麗な花に見えるのは、死者達を慰める意味もあるんだ。死者の花を箱の中に閉じ込めてしまったら、死者との繋がりが切れてしまう。繋がっていた死者達は、行き場をなくした苦しみで更に苦しんでいるはずだ」

苦しみを解放できず、それまで以上に苦しんでいる死者達がいるという事か。

「でも、地下3階で咲いていた死者の花は、負の感情が濃すぎて浄化が間に合っていないんだろう? 死者の花が咲いたとしても、苦しさからは解放されていないんじゃないか?」

「死者の花が、全く対処出来ていなかったわけじゃない。少しだけだとしても、苦しさから解放されていたはずだ。でも、箱の中にある花と繋がっていた者達は全く解放されず、内に負の感情が溜まっていくだけだ」

「なるほど」

箱を壊すとどうなるんだ?

空間全体を見渡す。

「この階、他の階より広いよな?」

コアを見ると、空間の奥を見て頷く。

「正確にどれくらい広いのかは分からないが、3階の花畑が在った空間より広いのは間違いない」

一体どれだけの数の死者の花が閉じ込められているんだ?

もしこれを一気に解放したら、負の感情が一気に解放されるという事か?

「水色、この箱を全て壊すとどうなる?」

「この花の数だからな。相当な負の感情が閉じ込められているはずだ。一気に解放すると、世界全土が呪われる可能性がある」

今度は森だけでなく、世界が呪われるのかぁ。

ははっ……マジかよ。

「主、その呪いは世界を滅ぼすかもしれない」

えっ、滅ぶの?

水色を見ると、頷かれた。

「それじゃ、箱を壊すのは絶対に駄目という事だな。でも、このままにしておいていいのか?」

「箱の中に閉じ込めれた負の感情は恐らく、どんどん濃くなっていると思う」

「でも、箱の中の花と死者は繋がっていないんだよな?」

それなら濃くなることは無いと思うが。

「負の感情は浄化されない限り、なぜか増え続けるんだ。死者の花と繋がっていなくても」

そうなんだ。

「箱の中で増え続けた負の感情は、いずれ箱から溢れると思う」

つまり、俺が箱を壊さなくても、いずれこの世界は滅ぶという事だな。

俺の力が暴走して滅ぶか、呪いで滅ぶか。

どっちもお断りだ!

「つまり、どうにかしてこの中の負の感情を浄化するしかないという事か」

浄化は得意だ。

つまり、俺が浄化していくしかないのか?

そういえば、妖精が力が増したとか言っていたな。

「妖精は、この箱の中の死者の花を浄化できるか?」

「どうかな? 閉じられた空間だから、出来ると思うけど」

閉じられた空間?

そういえば、空間の浄化が妖精の力だったな。

俺とは浄化の種類が違うのかも。

「そうだ。負の感情と呪いとの違いは?」

どちらも浄化出来るようだけど、どんな違いがあるんだ?

「負の感情が、人や獣人、魔物に取り込まれると呪いになるんだ」

水色の言葉に首を傾げる。

取り込まれる?

「感情には、それを受け止める存在が必要となる。花だけに収まっていたら、花に触れても呪われない。花から溢れた負の感情が、花に触れた者に吸い込まれてしまうんだ。吸い込まれた感情を処理出来れば、呪いに変化する事は無い。でも許容範囲を超えると、それまで苦しいと訴えるだけだった感情が攻撃性を持つ呪いへと変化するんだ」

感情には、器が必要なのは分かった。

花に触れて呪われたのは、花では収まり切れなかった負の感情が花の傍で漂っているから。

処理? 浄化の事かな?

まぁ、吸い込んだ感情を受け取った者が抑えこめたら問題なし。

抑えこめなかったら、呪いになると。

これでだいたいは合ってるよな?

「全ては浄化次第か」

黒の箱を見る。

浄化するにしても、まずは知らないとな。

そういえば、どうして死者の苦しみは浄化出来ないほど濃くなっているんだ?

「水色。死者の苦しみが浄化が間に合わないほど濃くなっている原因が分かるか?」

「分からない。そんな事が起こるはずが無いんだが」

「そうか」

たぶん、その原因を突き止めないと、浄化を繰り返しても意味がないだろうな。

根本を正す必要があるはずだ。

でも、とりあえずこの黒い箱の状態を調べよう。

黒の箱に手をそっと、置く。

呪われるかとドキドキしたが、何も起こらなかった事にほっと息を吐く。

……これ、どうやって中を調べたらいいんだ?

箱の中に魔力を流してみるか?

「ゆっくりゆっくり」

指先から魔力を箱の中を目指して流す。

魔力が何かを通り抜ける感覚を伝えた。

これで調べられる――。

「げっ!」

箱から勢いよく手を離す。

そして指先を見る。

視線の先には真っ黒に変色した指先。

「浄化」

ふわっと指先が光と、元の肌の色に戻った。

「なんだ今の」

一瞬。

そうたったの一瞬。

箱の中の何かに触れた。

その瞬間、世界中を壊したい衝動にかられた。

「大丈夫か?」

コアの心配そうな声に、なんとか頷く。

正直、全然大丈夫ではない。

気を抜くと震えだしそうだ。

「何か、あったのか?」

何か……あれは、

「箱の中の、たぶん逃げ場を無くした負の感情なのかな? それに触れた瞬間、体が乗っ取られそうになった」

焦った。

というより、一瞬だったのに凄い恐怖を感じた。

それに、凄い憎しみを俺に叩きつけてきた。

「箱の中は、調べないほうがよさそうだ」

調べなくても、負の感情が危険な物だと分かった。

どうにかしないと。

もう一度、箱に指先で触れる。

息を吸い込んで、吐いて。

ゆっくりゆっくり、箱の中に魔力が入り込んで……通り過ぎた!

「浄化」

体の中からごっそりと魔力が消えた事に気付く。

「あっ、良かった。今回もすぐに溜まったな」

無くなった魔力が一瞬で戻った事に、ホッとする。

箱の中を覗き込む。

黒い箱なので、うっすらと見える死者の花。

「マジで? 死者の花に、変化が見られないんだけど」

今の浄化、かなりの魔力を使ったんだけど。

……変化なしかぁ。