軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

42.死者の花の役目

あの時、呪われた魔物は数匹いた。

見つけた魔物は全て浄化したが、他にいなかったんだろうか?

この空間と繋がった場所が、2ヶ所だけでは無かったら?

もしかしたら、森の何処かに今もまだ呪われた魔物が、潜んでいるかもしれない。

「妖精、迷い込んだ魔物は何匹いた?」

「えっと……4匹。あの時迷い込んだ魔物の数は4匹だよ」

「そうか」

4匹か。

迷い込んだ魔物は全て浄化出来ていたんだな。

あれ?

何かが引っかかるな。

なんだろう?

……別におかしな事は無いはずだけど。

でも何か、違和感が。

「えっと、この空間は森と繋がる事が出来る」

あぁそうか。

この空間が森と繋がるのは、栄養となる魔物を引き寄せるためだ。

地下神殿と森が繋がっても、あの通路の仕掛けでは此処まで来られないだろうからな。

でもそれならどうして、4匹の魔物は栄養にならずに呪われたんだ?

それが気になったのか?

何かもっと大きな……、

「迷い込む? おかしいな、妖精の言い方では――」

「俺がどうしたの?」

不思議そうに見つめる妖精を見る。

さっき妖精は「少し前なんだけど魔物がこの空間に迷い込んできた事があった」と言った。

この言い方だと、珍しい事が起こったみたいな言い方だ。

でも、頻繁に魔物がここに来るなら、あんな言い方にはならないよな。

「主様?」

聞いて確かめた方が良いな。

「この空間に魔物は良く迷い込むのか?」

「俺が知っている限り1回だよ」

1回?

という事は、死者の花はこの空間に魔物を呼ばなくても栄養を取る方法があるという事か?

あ~、何かが分かると新しい疑問が生まれる。

「疲れる」

まぁ、ゆっくり理解していくしかないな。

「この花は、魔物から栄養をもらうんだよな? この空間に魔物を呼ばないなら、どうやって栄養を補給しているんだ?」

「世界のどこかに、死者の花の分身となる花を1輪咲かせて、その花が栄養を取ってくるんだ」

分身となる花?

そんな物を作れるのか?

死者の花に視線を向ける。

「分身の花が咲く場所は、だいたいどの辺りなんだ?

「決まりはないよ。命がある場所なら何処でも」

「そうなんだ、でも、どうして1輪なんだ? これだけの花があるなら、もっと咲かせられるだろう」

けっして花の数が増えて欲しいわけじゃないが。

「決まりだよ。どんなに死者の花が増えても、1輪だけ」

決まり……世界と死者の花の間にルール?

これを聞くのは……後にしよう。

「分身の花は死者の花より香りが濃いから咲くとすぐに魔物が寄って来て、意識混濁状態になるんだ。で、弱ったところを花がパクリと食べちゃうんだ」

「えっ!」

それって、死者の花より恐ろしい存在なんじゃ。

というか、花がパクリって何?

パクリから想像できるのって、花が魔物を丸飲みなんだけど。

「丸飲み」

さすがに無いな。

「そう、魔物1匹をそのままパクリ」

……まさかの正解?

こんな恐ろしい花が、森の中に急に出現するのか?

こわっ。

あっ、そういえば呪われた魔物が現れた場所に花が咲いていたよな。

まさか、あの花?

いや、それは無いか。

あの花は、チューリップぐらいの大きさだった。

まさかあれが、魔物をパクリだなんて。

それに、傍に寄って花を観察したけど、香りなんてしなかったし。

「死者の花の分身って、どんな花なんだ?」

「白と赤の色があって、花弁の数は5枚。見た目は普通の花だよ」

あれ?

それって、やっぱりあの白と赤の花か?

「巨大な花じゃないのか?」

魔物を丸飲みするんだから、巨大な花じゃないと無理だろう。

「元は小さい花だよ。栄養になる獲物が目の前にあったら、花弁が巨大になって獲物をパクリと包み込んでそのままシューって」

そのシューって、溶かす音か?

これ以上は、聞かない。

消化する方法を知る必要はない。

絶対に無い。

「分身の花らしき物を見つけた事があるけど、香りはしなかったぞ?」

「それは既に、香りが必要なかったから消えたんだと思う」

つまり必要な栄養を確保した後という事か。

食べてるところに遭遇しなくて良かった。

「あれ? あの時、花は2輪咲いてたな」

白と赤の花が1輪ずつ。

妖精は決まりで1輪だけだと。

「花が2輪? おかしいな、それは起こらない現象のはずなんだけど」

妖精にも分からないのか。

死者の花について他に分かりそうなのは、龍達だな。

あとで確認だな。

「そういえば分身の花を、人の国で見かけたと言っていたな」

「人の国? 獣人がいっぱい栄養になってた時期かな? 数百年、同じ場所に咲き続けた事があったみたいだから」

獣人がいっぱい?

惑わされる獣人が多かったのか?

いや、花が咲いていたのは人の国だ。

人の国で獣人がいっぱい……まさか、奴隷?

前の王は、確か多くの獣人を殺したと聞いた。

「妖精、栄養になる者は死んでいてもいいのか?」

「うん。死んですぐなら問題ないよ」

「そうか」

「同じ場所に咲き続けるのは、珍しいのか?」

「主導権を持っている者が指定すれば出来るけど、花の役割がばれたら対処されてしまうから。普通は、同じ場所に咲かせ続ける事はしないよ」

でも、数百年は同じ場所に咲き続けた。

それは、咲き続けても対処されないからだよな。

どうして、対処されなかったんだ?

獣人達がいっぱい。

もしかして、前の王は遺体の処理に死者の花を利用してた、とか?

そういえば、見習い達は自分達を崇める存在を優遇してたよな。

死者の花の事を教えたかもしれないな。

見習い達や前の王が目の前にいたら、首をへし折ってたかも。

ん?

……別の事を考えよう。

「どうして、死者の花は分身なんて面倒な物を作って栄養を取っているんだ?」

コアの話では、死者の花でも充分に栄養は取れるだろうに。

「この世界で死んだ者達の負の感情が濃すぎるから、妖精がいる場所でしか咲けなくなったんだ。でも、栄養は必要。それで分身を作ったんだよ」

負の感情が濃いから妖精がいる場所でしか咲けない?

妖精の、空間の浄化が出来る事と関係してそうだな。

「もしここで咲いている死者の花が世界で咲いたら、周辺は一気に呪われてしまうよ」

マジか。

しかも呪い。

あぁ、分身ではなく死者の花の本体に近付いたから、魔物達は呪われたのか。

……ここにいる俺たちは大丈夫なのか?

「ここにいて呪われないか?」

「俺の力が増しているから大丈夫だよ」

妖精の浄化の力か。

「死者の花の役目は、世界で死んだ者の苦しみや恨み妬みを受け止めるためにあるんだ。そして、綺麗な花を咲かせて、ゆっくりとその受け止めた物を浄化する。世界を歪ませないために生まれた花が、死者の花だよ」

ビックリした。

いきなり水色の声がすると思ったら、真上にいた。

外を調べたいからと別行動をしていたが、いつ来たんだ?

あっそれよりも、結界。

「香りも防ぐ結界」

言い終わると、水色の周りに結界が張られる。

よしっ。

既にこの場所に、普通にいるから意味ないかもしれないけど。

「死者の花には、役目があったんだな」

しかも、かなり重要な役目が。

「森の奥にあった死者の花も異常に感じたが、ここの死者の花はあれよりも異常だな」

水色の言葉に首を傾げる。

森で見た死者の花はコアも見ているよな?

コアと視線が合うと、意味が分からないのか首を横に振っていた。

「どういう意味だ?」

「濃すぎる。花の真ん中にある白い石。あれが浄化をする役目があるんだが、真っ白だ。本来は透明のはずなのに」

俺が見た死者の花は、全て白い石だった。

コアも白い石だと言っていた。

本来は透明の石なのか。

「水色、森の洞窟に咲いていた死者の花を知っていたのか?」

「あぁ、ユグドラシルの力を借りるために、あの場所に咲いていた」

ユグドラシルってエコの事だよな。

いや、時期的に前のユグドラシルの方か。

「この世界の死者の花は最初は普通だったんだよ。でも、時間が経つと変わってきたんだ」

死者か。

どうして負の感情が濃くなったんだ?

それが分かれば、死者の花を本来の状態に戻せるという事だよな。

「負の感情が濃くなった原因は分かるか?」

水色を見るが首を横に振られた。

妖精からも反応が無い。

死者の花の状態で負の感情が濃くなった事は分かったが、原因は不明か。

「そういえば、ここは地下4階があるんだったよな。そっちも確認しよう」

ここで考えても、原因は分からないだろう。

なら、何か手掛かりを見つけるしかない。

水色も一緒に地下4階へ向かう。

「……なんだこれ」

「ここが何かは分からないんだ。隙間から見ただけだから」

隙間?

妖精の言葉に、結界箱がある場所に視線を向けると、布が何重にも巻かれた結界箱があった。

かなりこの空間を隠したかったみたいだな。

まぁ、隙間があるようだけど。

部屋を見渡す。

黒い長方形の岩がずらっと並んでいる。

均等に置かれているそれは、大きさから棺桶のようにも見える。

「墓場?」

妖精が言っていたよな。

「ここは違うよ。墓場は、地下神殿と繋がる場所の1つだよ」

そうだった。

でも、棺桶が並んでいる墓場にしか見えないんだが。

これ、今から調べるんだよな。

かなり、嫌かも。