軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

41.ここから来たのか!

階段を下りていくと、パッと明るくなる。

妖精の話では、ここは何もない空間になるんだよな。

「確かに、何もないな」

明るくなって見えたのは、無駄に広い空間。

何をするために作ったのかは、不明らしい。

魔力で空間を調べても、何も引っかからない。

ただ、空間の真ん中に結界壁が見えた。

「あれにも妖精が入っているのか?」

抱っこしている妖精に聞くと、腕の中で何やら震えている。

「どうした?」

「ちょっと感動して――」

無視。

「あそこに妖精は、入っているのか?」

「いいえ。私が入っていた結界壁なので、今は何もないですよ」

「繋がっていたんだ」

「はい。地下1階から地下4階まで繋がっています」

妖精は1匹だな。

良かった。

「何もないし、次に行くか」

次が問題の花畑だよな。

おそらく、香りが問題なんだと思う。

香りで判断力とか鈍らせているような気がする。

「香りか。結界で防げないかな?」

今まで結界で香りを防ごうと思った事が無いんだが、たぶん出来るはずだ。

えっと……香りは空気に紛れ込んでいる異物という認識でいいよな。

空気か。

空気中の……微細な粒子まで高性能フィルターでキャッチ。

空気清浄機の宣伝で見たフレーズなんだけど、これって使えるよな?

空気清浄器の高性能フィルターに、有害な香りをキャッチさせるイメージを作って……。

さすが、空気清浄機は身近にあったからイメージしやすい。

「主? 急に黙り込んだが、どうした?」

コアが不思議そうに俺を見る。

「いや、死者の花の香り対策を考えていたんだ」

「香り対策か」

コアがチャイを見る。

やっぱり、心配なんだな。

「チャイを香りから守る方法は思いついたから、大丈夫だ」

「そうか」

嬉しそうにコアがチャイにすり寄る。

急なコアの態度に、チャイの尻尾が激しく揺れている。

本当に仲がいいな。

さてと、もう一度しっかりイメージを作るか。

空気清浄機に高性能フィルターを5枚セットして、結界内に……空気清浄機を通った空気だけ結界内に入れるようにしよう。

よしっ、出来た!

「香りも防ぐ結界」

自分と仲間の周りが淡く光るが、すぐにその光は消えてしまう。

「さっきの光が、新しい結界か?」

「あぁ。これで、死者の花の香りを防ぐはずだ」

2匹の子蜘蛛を見る。

彼らを覆う魔力の流れを感じるので、彼らにも無事に結界は張れたようだ。

これで問題の香り対策は完璧。

……たぶん。

「行こうか」

3階に下りるために階段に足を掛ける。

ちょっと緊張するな。

香りを防ぐ結界が失敗だったら、すぐに戻って来ないと危ないからな。

小さく息を吐いて、階段を下りる。

ゆっくり階段を下りると、ふわりと通り過ぎる風を感じた。

そして次の瞬間、花の香りを感じて立ち止まる。

「花の香りが」

失敗したのか?

「さすが主だな」

えっ?

「微かに死者の花の香りを感じるが、体に異変を感じない」

コアの言葉に、魔法が成功している事を知ってホッとする。

でもどうして、完全に香りを防ぐことは出来なかったんだろう?

……あっそうか。

有害な香りと特定してイメージを作ったからだ。

「それにしても、いい香りだよな」

有害な香りだけにして正解だったな。

香りが楽しめる。

「あれが死者の花だ」

コアの言葉に視線を向ける。

風にゆらゆらと揺れる、空間いっぱいに咲く死者の花。

白く輝く石を細長く赤い花弁が守るように包み込んでいる姿に、花に興味が無い俺でもちょっと魅入られる。

クラッとは来なかったが、確かに時間を忘れて見てしまうな。

「皆、大丈夫か?」

コアとチャイ、ここまで付いて来てくれた子蜘蛛2匹を見る。

大丈夫とそれぞれが反応してくれるので、ホッとして腕の中の妖精を見る。

視線が合うと、震えだす妖精。

よしっ、問題なし。

「そういえば、死者の花は『死者が苦しむと咲く』と聞いた事があるな」

「え、そうなのか?」

コアの言葉に首を傾げる。

「あぁ。本当なのかは知らないが」

死者が苦しむと咲く?

ただの迷信か?

「それは本当の話だよ。死者の花は、死者の苦しみの声に反応して咲くんだ」

迷信ではなく、本当の話なのか。

つまり、この広い空間にいっぱいに咲く花の数だけ、死者が苦しんでいるという証拠。

腕の中の妖精が、花畑をじっと見る。

「昔はもっと少なかったのに、どんどん増えて今ではこの状態なんだ」

それは、苦しんでいる死者が多くなっているという事か?

魔眼が影響しているのだろうか?

それなら解決したから、死者は苦しみから解放されると思うが。

「死者の花が、減ってる様子は無いか?」

「無いよ。今も増え続けているから」

つまり、魔眼とは関係ないという事だな。

「どうすれば、死者達が苦しみから解放されるのか、知ってるか?」

見習い達によって、ずっと苦しめられていた者達の声を聞いた事があるが、あれは酷かった。

あんな状態の者達がいるなら、早く解放してやりたい。

「解放する方法は分からない。奴らも知らないみたいだったから」

見習い達も知らない?

つまり、奴らは放置したのか。

「そうか」

死者の苦しみを解放するには、どうしたらいいんだ?

そもそも、この花を咲かせている者達はどこにいるんだ?

もしかして、墓場か?

地下神殿から繋がる3つ目の場所。

そこにいるのか?

「そういえば、少し前なんだけど魔物がこの空間に迷い込んできた事があったな。しばらくするとおかしくなって、森に帰って行ったけど」

えっ?

妖精の言葉に、首を傾げる。

魔物が迷い込んだ?

そんな事が可能なのか?

ここまで来るの、本当に面倒くさかったんだぞ?

扉を開けるボタンが、天井にあったし!

「本当に、ここまで魔物が辿り着いたのか?」

「うん。この空間と森が急につながったんだ」

「はっ? この空間と森が直に繋がった?」

「そう」

それなら迷い込むこともあるか。

というか、この空間は直で外と繋がれるのか?

主導権を取ったら、色々試してみないとな。

「ところで、魔物はどんな風に様子がおかしくなったんだ?」

こっちも気になるな。

「えっと、いきなり苦しみ出して、それであっという間に魔物の姿が消えるほど黒い影に包まれてしまったんだ。で、その状態で森に帰って行った」

黒い影に包まれた?

それって、森で見た呪いの掛かった魔物の事じゃないか?

切っても、切ってもすぐに再生して厄介な魔物だった。

そういえば、「呪われた魔物は急に現れた」とトロンが言っていたな。

別の空間から来たのなら、急に現れた説明がつく。

待った。

死者の花は、魅入られた者を養分にするだけではなく、呪いも掛けるのか?

もしそうなら、此処で花を見ているのは危ない。

「妖精。死者の花を見ていたら、呪われるのか?」

「呪い?」

「黒い影の正体は呪いだ。それで、魔物達はどうやって黒い影に覆われたんだ?」

「呪い……えっと、花の中に飛び込んでじっとしていたら、急に苦しみ出したんだ」

それは、花に触れたから呪われたという事か?

死者の苦しみを閉じ込めた花。

……確かに触れたら呪われそうだな。