作品タイトル不明
21.家の紹介をしよう
「ここが玄関。悪いが鍵は付いていないんだ。1階は、キッチンとダイニング。皆が集まれるリビングにトイレと風呂がある。各自の部屋は2階になっているから」
玄関を開けて簡単に説明したが、反応がない。
後ろにいるはずなんだが。
不思議に思い振り返ると、ダダビスもギルスも玄関で呆然としていた。
村で見た家と比べると、かなり違うから驚いたようだ。
でも、ダダビスもギルスも騎士だ。
王城を見た事があるはず、というか中にも入った事があるだろう。
それに比べたら、驚く事も無いと思うんだが。
「はっ、あぁえっと。ここを本当に我々が使っていいんですか?」
ダダビスの言葉に頷くと、彼の口から変な音が漏れた。
大丈夫か?
「まずはリビングに行こうか」
玄関からリビングへは広い廊下を通って行く。
広さはギルスの大きな体でも余裕ですれ違えるほどだ。
と言っても、俺の家の廊下ほどは広くないが。
扉を開けると、広くて明るい空間が広がっている。
そこに、大きめの椅子とそれに似合うテーブル。
ゆったり座れるソファまであるから、一つ目達は凄い。
「すごっ」
「いや、ここに本当に住むのか?」
ダダビスのビックリした声と、ギルスの少し不安そうな声に笑みが浮かぶ。
「ここがリビング。好きに使ってくれていいから。で、隣がダイニング。そうだ、夕飯をどこで食べる?
俺達は、ウッドデッキで食べているんだけど。一緒に食べられそうなら、一つ目達の負担が減るんだが」
「主、そんな事は気にしなくて大丈夫です」
ダダビス達に説明をしていると、一つ目が問題ないと言ってくれる。
うん、急に現れるのは止めて欲しいびっくりするから!
「負担じゃないか?」
面倒を見る者が、増えるんだけど。
「全くなりません」
胸を張って言う一つ目。
それならいいが、準備とか色々大変だと思うんだよな。
「あの、夕飯は皆さんと一緒で、大丈夫です」
ダダビスの焦った声に視線を向けると、ギルスも頷いている。
「そうか? じゃあ、夕飯の時間になったらここから見えているあれ、あのウッドデッキのところまで来てくれ。雨が降ったら、家の中に入ってくれていいから」
「「えっ!」」
ん?
何か変な事でも言ったか?
「えっと。ここまでで何か聞きたい事は?」
ダダビスが首を横に振る。
ギルスは何かを言いたそうに口を動かす。
「なんでも言っていいぞ」
「夕飯には、どなたが一緒に食べているんですか?」
「子供達や子天使たちは絶対に参加しているかな。疲れて寝てしまったら別だけど。あとは自由参加なんだ。だから夕飯時にならないと分からない。あぁでも、飛びトカゲならほぼ毎日いるな。家の事や仲間達の事で知りたい事があるなら、一つ目に聞くといいよ。なんでも知ってるから」
俺よりしっかりしているからな。
一つ目達に聞けば、間違いなしだ。
「そ、そうですか」
あれ?
ギルスの声が震えているような気がするが、ビビるような事は言ってないよな?
……うん、言ってない。
そういえば、夕飯で何か言い忘れがあるような気がするんだが……あっ!
「週に一度、酒乱会があるんだ。森に出ている者達は無理だが、それ以外の仲間は全員が参加しているんだ。ダダビス達も参加できるならしてほしいかな」
「酒乱会? えっとそれは何ですか?」
ダダビスの困惑した声に、苦笑する。
やってしまった。
「酒乱会は酒を飲む日の事なんだ」
「あっ、お酒ですか」
ダダビスの納得した様子に、ホッとする。
酒乱会は俺と仲間達だけに通じる言葉だったのを忘れていた。
「他に質問が無いなら、説明の続きをいいか?」
とりあえず家の説明を終わらせよう。
「「はい」」
「こっちはキッチン。簡単な料理が出来るように準備しておいたから。そっちは冷蔵室と冷凍室」
キッチンの隣の小部屋を指す。
そういえば、食材を入れておくと言っていたけど、入ってるかな?
扉を開けて中を見る。
一通り、揃えてくれたのか。
「この中にある食材は自由に使ってくれ」
「いいんですか?」
俺の隣から、冷蔵室を覗いたダダビスが1歩中に入って、瓶を手に取る。
それは、木の実と蜂蜜で作ったジャムだ。
「あぁ、此処にある物は、一つ目達が獣人達にと用意した物だから。問題ない」
「ありがとうございます」
「朝食は……」
朝食まで一緒だと、獣人達は気を遣うよな。
朝ぐらいはゆっくりしたいだろうし。
「朝食は、獣人達に任せていいか?」
「あっ、はい。大丈夫です」
隣の冷凍室の中も確認する。
中には、お肉や氷。
冷凍果物があった。
「これって……」
冷凍された果物を手に取るギルス。
ダダビスも少し驚いている。
果物を冷凍させたりしないんだろうか?
「その果物は、半解凍で食べるとうまいんだよ。食べてみてくれ」
「えっ、あっはい」
なぜか戸惑った様子のダダビスとギルスに首を傾げる。
まぁ、冷凍果物が初めてならそういう反応になるのかな?
「あとはトイレとお風呂の説明だな。こっちだ」
この家のトイレはちょっとすごい。
何と、扉の取っ手に手を翳すだけで、扉が自動で開くのだ。
その機能に気付いた時は、一つ目の凄さを知っている俺でも唖然としてしまった。
ちなみに、俺の家のトイレもこの家と同じように進化した。
「この扉はわざわざ開ける必要は無いんだ。手を翳せばいいから」
実践で扉の開け方を説明する。
「「すごっ」」
ダダビスもギルスも気に入ってくれたようで、良かった。
トイレの使い方を簡単に説明する。
自動で水が流れる事には、もう一度驚いていた。
いい反応。
「次にお風呂な。各部屋にはシャワー室が付いているけど、湯船は1階のここだけなんだ。こっちは男湯で隣が女湯。別々だから気を付けてくれ。お湯はいつでもいっぱいだし、クリーン魔法でいつでも清潔。体をゆっくり伸ばせるように、大きめに作ってくれているから、ギルスぐらい大きくても5人は同時に入れるかな」
お風呂の出入り口から中を覗き込む。
「湯舟?」
「あれか?」
ダダビスとギルスの様子から、湯船に馴染みがない事が窺えた。
「入った事は無いのか?」
俺の言葉に頷く2人。
無いのか。
「疲れた時とか、ゆっくりお湯に浸かると疲れが取れるからおすすめだぞ。一度試してみてくれ」
「分かりました」
ダダビスが覚悟した表情で言う。
いや、そんなに力まなくていいと思うんだが。
「無理だったらいいからな」
1階の説明はこれぐらいだよな。
「次は2階だ。2階は各自に小部屋を用意したから。少し狭いが、大丈夫かな?」
2階に上がると、使っていない部屋を一つ目に案内してもらう。
「この部屋を使って説明するな」
各自の部屋には、ベッドとテーブルと椅子。
棚があって、部屋から繋がる小部屋が2つ。
1つはトイレでもう1つはシャワー室だ。
「トイレの使い方はさっきと同じで、こっちはシャワー室だ」
小さいキッチンも付いているから、ワンルームマンションみたいだな。
「ここまでで、質問があったら言ってくれ」
ダダビスとギルスは部屋を見渡して首を横に振る。
「何もないのか?」
「はい。素晴らしい部屋を用意してくれてありがとうございます」
ダダビスが頭を下げるので、慌てて止める。
「こちらがお願いして来てもらうんだから、当然だ」
それにしても、紹介していて改めて思ったけど、一つ目も農業隊も三つ目も凄すぎる。
「あっ、1つだけ確認が」
ダダビスが何かを思い出したのか、俺を見る。
「どうした?」
「此処の家賃はいくらぐらいになるんですか?」
ダダビスの質問に首を傾げる。
ギルスも気になるのか、俺をじっと見つめる。
というか、家賃?
「いや、いらないから」
「えっ、無料ですか?」
ギルスが驚いたのか、尻尾がふわりと一瞬大きく揺れた。
「こんな森の奥に来てもらったんだから、これぐらいは用意するよ。気にせず使ってくれ」
俺の言葉に嬉しそうに頷くギルスと、少し戸惑ったダダビス。
ダダビスの方が慎重派かな。