軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

18.瞬間移動? 転移?

「フォローする者ですか?」

ん?

何か含みがあるような言い方に聞こえたな。

王を見るが、特に表情に変化はなく同じ笑みだ。

まぁ、その笑みで王の心情が分かりづらいんだが。

「彼らのために、ありがとうございます」

……気のせいだったのかな?

「いや、気にするな。じゃあ、またいつか」

分からない事を考えても仕方ない、帰ろう。

「次に会えた時は、ゆっくり話が出来ればと思います」

そう言うと、頭を下げる獣人国の王。

それを見ると、なんだかちょっと……なんだろうな。

よく分からない気持ちになる。

「コア、クロウ、帰ろう」

隣にいる農業隊を見ると、ぐっと親指を立てる。

準備万全らしい。

それにクスっと笑うと、足に力を込めて一気に森の中に入る。

あ~、早く子供達や仲間達に会いたい。

森を入るとすぐにシュリの姿を確認できた。

止まろうかと思ったが、速度を落としてシュリの前を通り過ぎる。

たぶん、付いて来てくれるはず。

後ろを確認すると、思った通り合流していた。

「シュリ。処理してくれたんだな、ありがとう。怪我とかしてないか?」

シュリは強いが、大群だと言っていたから心配だ。

「大丈夫だ。あんな中途半端な魔物どもに、後れを取る事は絶対に無い」

「凄い自信だな」

シュリの言葉に感心してしまう。

「当然ですよ。シュリ殿と混ぜ物の力の差は歴然としています」

速度を上げても余裕で隣を走っている農業隊が、当然とばかりに言いきる。

そうなんだ。

そういえば、コアやチャイも余裕で倒していたな。

そんなに力の差があるのか。

「頼もしいな」

そう言えば、俺も何度か混ぜ物を倒した事があったな。

見た目からはどんな攻撃がくるか分からないと聞いたから、だったら攻撃される前に倒せばいいと、見つけたらすぐに首を切り落とすようにしている。

この方法なら、混ぜ物も普通の魔物と一緒だ。

先手必勝、良い言葉だ。

それにしても、帰るだけというのは暇だな。

なんか、パッと帰る方法があれば……やっぱり瞬間移動か?

そういえば、妹が「一度訪れた場所は、転移が出来るから便利だよね」とゲームをしながら言っていたな。

久しぶりに、思い出したな。

前はもっと頻繁に思い出していたのに。

あれ?

妹は転移と言っていたな、瞬間移動と何が違うんだ?

……転移の転は、位置を変えるという意味があるな。

転移にも、同じ意味があったような気がする、たぶん。

えっとつまり……「俺の位置を変える魔法」という意味か?

合ってるのか、これ……。

次を考えよう。

えっともう一つの、瞬間移動の瞬間は短い時間だよな。

移動は、ある場所から他の場所に位置を変えるという意味だから……「俺の位置を短い時間で他の場所に変える魔法」という意味になる……のか?

……駄目だ、頭がこんがらがってきた。

深く考えるのは止めよう。

単純なのが一番だ。

妹が転移と言ってたんだから、行きたい場所に行く魔法は転移魔法だ。

転移魔法は、一度訪れた場所には行ける?

一度訪れた……そうか、イメージ出来るからだ。

それなら、今の俺でも転移魔法を使えるんじゃないか?

イメージさえできれば行けるんだから。

イメージは、家の庭でいいな。

しっかりとイメージして……一瞬で場所が変わるのもいいかもしれないが、失敗した時の事も考えないとな。

一瞬で移動出来たけど全く知らない場所にいたとか、考えただけで恐ろしい。

そうだ、扉みたいなものを通って自分の足で移動できるようにしたらどうだろう?

これなら失敗したとしても、扉の向こう側に行かなければいいだけだ。

あっ、扉の向こう側の人と交流できれば、移動する前に目的の場所なのか確認が取れるんじゃないか。

よしっ、最初からしっかりイメージを作って……扉はいちいち開けるのは面倒だな。

どうして、扉のイメージがすぐに浮かんだんだ?

……あぁ、有名なアニメの影響か!

俺には、扉は必要か?

……いらないような気がするな。

扉は止めて、黒い枠の中に転移魔法が展開されるイメージにしよう。

完璧!

「転移魔法」

「「うわっ」」

えっ?

コアとクロウの焦った声に2匹に視線を向けるが、俺の体が何かに引っ張られた為に確認が取れなかった。

「えっと、なんで木の上なんだ?」

俺の体を引っ張って木の上に載せたシュリに、視線を向ける。

「あれは何だ?」

シュリの警戒した声に、緊張しながら視線の先を追う。

いったい、何があるんだ?

「あっ」

視線の先には、先ほど俺がイメージした黒の枠があった。

しまった。

「凄い魔力を感じるが……ん? この魔力」

シュリの言葉に視線が泳ぐ。

またやってしまった。

いや、まさか転移魔法が発動するとは思わなかったんだ。

イメージをして言葉にしたが、魔力は込めていない。

なのにどうして転移魔法が発動したんだ?

そういえば、時々同じ事をするな。

「主の魔法か?」

さすがシュリ、正解!

って、思ってる場合じゃなかった。

「そう。あれは俺の魔法で作った物だから、大丈夫だ」

「そうか」

シュリが安心した声を出すと、俺を前足で器用に抱えると木の上から降りた。

どうやって俺を抱えているんだ?

ちょっと興味があるな。

というか、1人で降りられるんだが。

「これはどんな事が出来るのだ?」

木から降りたシュリと俺は黒の枠に近付いた。

その瞬間、ふわりと黒の枠の中が微かに光った。

「何か見えるぞ」

シュリが光っている部分を指すと、確かに黒の枠の中には少しぼやけた映像が浮かんでいた。

だが、それがどこなのか分からない。

俺がイメージしたのは、家の庭だ。

でも、映し出されているのは俺が知っている庭ではない。

「失敗したのか?」

良かった。

魔法の発動と一緒に移動しなくて。

「それにしても、コアとクロウはどこへ行ったんだろう?」

この魔法が発動したからコアとクロウは驚いたんだよな。

周りを見回すが、どこにもいない。

なんだろう、嫌な予感がする。

「主、コアとクロウがいる」

「えっ!」

シュリにが指しているのは、歪んだ映像。

まさかと思い確認をすると、コアとクロウの姿が見えた。

そしてその2匹の後ろに見える物に首を傾げる。

「あれ? 庭だ」

「あぁ、気付いたら庭が映っていてコアとクロウがいた。主、何の魔法なんだ?」

成功したという事か?

「転移魔法だ」

さっきも聞かれていたよな。

「……また、凄い事を……」

シュリが少し呆れた声を出す。

凄い事も気になるが、まずはコア達に謝らないと。

「コア、クロウ。ごめん、大丈夫か?」

「主、大丈夫だ。いきなり視界が変わって驚いたが、気付いたら庭にいた。この黒い物は何だ?」

2匹は俺の少し前を走っていたから、目の前に現れた転移……門でいいのかな?

それに突入してしまったんだろう。

無事で本当に良かった。

「それは、転移魔法で作った転移、門だ」

門というほど立派ではないから、ちょっと恥ずかしくなってしまった。

もう少し、改良して門に見えるようにしようかな?

「転移門! つまり、此処から、主の下へ行けるのか?」

コアの質問に首を傾げる。

どうなんだろう?

こっちから無事に庭に行けたという事は、逆も大丈夫なんだろうか?

「安全性を確かめていないから、まだ移動は駄目――」

「凄い、来られたぞ!」

コア……駄目だって言ったのに。

「本当だ、来られた」

クロウ、お前もか。

転移門を見ると、アイ達が不思議そうに近付いて来たのが見えた。

そういえば、庭と家が見えるという事は、転移門が現れたのはいつも神達が現れる場所の近くか?

あれ?

転移門から見えていた庭が……揺れたと思ったら他の場所になってしまった。

あっ、コアが前脚で黒の枠をツンツンと叩いている。

あれが関係あるのか?

「んっ? 繋がっている場所が変わったのか?」

コアが不思議そうに、再度黒の枠を叩くと映し出された場所が変わった。

どういう仕組みなんだ?

枠をつつくと、行ける場所が変わるのか?

でも、映し出されている映像は、庭に比べると不鮮明で何となく不安を覚えるな。

「繋がる場所が変わるのだな」

コアが数度黒の枠を叩く。

その度に繋がる場所が変わるのだが、ぼやけ方が酷くなっていく。

そういえば、どうやってこの場所と繋げたんだろう?

叩いていたら、順番が来るのか?

「ぼやけて見えなくなってしまった」

コアの言葉に視線を転移門に向けると、ぼやけて何を映しているのかさっぱり分からない状態になっていた。

コアも叩くのを止めて様子を見ている。

「あっ」

叩くのを止めてしばらくすると、家の庭の映像が映し出された。

庭にいるアイが驚いた表情で、俺を見ている。

どうやら、暫く放置すれば、庭に繋がるらしい。