軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

17.王って凄いな。

さすがと言うべきか、周りの戸惑いをよそに獣人国の王は微笑んで農業隊と俺に視線を向けた。

王を守る騎士達は、4人。

王に一番近い騎士以外は、表情が強張っている。

元々顔色の悪かった獣人は、途中で足が動かなくなったようだ。

傍にいる農業隊に視線を向ける。

もしかしたら、目が1つなのが怖いのかもと思ったが、違ったようだ。

やっぱり岩で出来ているからかな?

「御前の――」

「悪い。堅苦しいのは嫌いだ」

話の途中で悪いが、そんな話し方をされたらいたたまれない。

気軽にとは言わないが、なるべく普通が良い。

王を見ると、表情が少し動いたがすぐに元に戻ってしまった。

表情から気持ちが一切読めないのも、厄介だな。

「では……森の神様に会う事ができ、大変うれしく思います。これからも長くいい関係を築けたらと思っております」

少し迷いがあったが、俺の希望を通してくれたようだ。

凄く丁寧だが。

「俺も会えて嬉しいよ。今回は、面倒事を頼んで悪かったな」

あれ?

なんで俺、こんな偉そうに言ってるんだ?

「いえ、そんな事はありません。教師達ですが、身分ははっきりした者達ですので、ご安心ください」

「ありがとう」

やっぱり。

何か変だ。

「森の神様。これからのご予定はどうなっているのでしょうか?」

「すぐに戻る予定だ。今から戻れば、夕方には家に着くからな」

王の表情に驚きが浮かんだ。

ん?

一体何に驚いたんだ?

「そうでしたか。それは残念です。歓迎の宴をと考えていたのですが」

宴?

王が開く?

無理無理。

「畏まった場は苦手なんだ。だから遠慮させてもらうよ」

俺の言葉に、神妙に頷く王。

その態度に少し疑問を感じるが、特に気にする事もないだろう。

王と挨拶もしたし、宴も断ったし、帰ろう。

「そろそろ出発の準備をしたいんだが? 問題ないか?」

「失礼しました。教師たちの確認は致しますか?」

確認?

王が身元を保証しているみたいだし、問題はないだろう。

「いや、必要ない」

「ありがとうございます」

えっ、ありがとう?

不思議に思って王を見るが、嬉しそうな表情で傍にいる騎士に指示を出していた。

暫くすると、大きな荷物を持った教師達と、おそらく一緒に来る騎士達が姿を見せた。

あれ?

5日前にも会ったキミールが、少し離れた所に立っていたダダビスに大きな荷物を渡している。

それを受け取ったダダビスは、集まった騎士達の前にキミールと一緒に立った。

そうか、彼らが来てくれるのか。

良かった。

初対面の者たちだと緊張するからな。

あっ、彼はギルスだったな。

それに、ダダビスと一緒にいたカフィレット。

あとは、初めて見る獣人の2人だな。

女性が1人いるが……可愛いのに俺よりデカいな。

まぁ、分かってたけどさ。

ところで、4人のはずが6人になってるな。

部屋数は……足りるな。

それなら大丈夫だろう。

「主? どうかしましたか?」

「なんでもないよ。えっと、飛びトカゲは……いた!」

農業隊も鋭いよな。

でも、そっとしておいてほしい。

獣人の女性より小さくて悔しいなんて、言えないから!

誤魔化すように、上を飛んでいる飛びトカゲに合図を送る。

「おぉ~、王が!」

「森の王が」

「素晴らしい」

「美しい」

えっ?

飛びトカゲが俺の傍に下りた瞬間、獣人達の興奮した声があちこちで聞こえた。

なんで?

コアも森の王だけど、ここまで騒ぎになる事ないのに。

なんで龍だと、こんなに興奮するんだ?

「主、コアは比較的に森から出ているが、我らはほとんど森から出ないからな」

飛びトカゲが俺の様子に気付いて教えてくれる。

珍しさから、興奮しているのか。

……ちょっと、煩いな。

「静まれ」

王の威厳に満ちた声に、騒がしかった声が一瞬で消える。

凄い、さすが王。

「不快な思いをさせてしまい、申し訳ありません」

「すぐに落ち着かせてくれたから、大丈夫だ。しかしたった一声で静めるなんて、さすがだな」

「そんな、滅相もございません」

ん~、もう少し砕けて話してくれたらいいんだけど。

それはもっと関係を深めてからかな。

「主、彼らを乗せれば良いのか?」

下りてきた飛びトカゲの視線が、教師達に向く。

あっ、今にも倒れそう。

大丈夫かな?

まぁ、最悪気絶しても魔法で固定するから問題無いけど。

「あぁ、頼む」

「では、こちらに荷物を」

農業隊が、教師達に近付き指示を出す。

教師達の顔色は真っ白だ。

「その子は、農業隊の1体だ。優しい子だから怖がる必要はない」

俺の言葉に、何か言おうとするが音にならず頷くにとどまる3人。

本当に大丈夫か?

ちょっと、心配になってくるな。

「森の神。荷物は各自で持って行きますが」

ダダビスが、教師の1人の肩をぽんぽんと叩く。

騎士が隣に来たからなのか、肩を叩かれた獣人はちょっと安堵した表情を見せた。

「邪魔になるから、農業隊に渡してくれ」

不思議そうにダダビスが、農業隊に荷物を渡す。

農業隊は受け取った荷物を持っていたバッグに収納する。

目の前からパッと荷物が消えた事に、ダダビスの体がびくりと震える。

隣の獣人はふらついている。

あっ、説明すればよかった。

ごめん。

いつもの癖で。

「……凄いですね」

王が呆然と荷物が消えた場所を見つめている。

おっ、王のこんな表情は初めてだ。

まぁ、今日初めて会ったんだけど。

「異空間に収納しているんだ」

……たぶん。

「異空間ですか」

どういう原理なのかは、一切不明。

ただ、イメージしたら出来てしまったからな。

でも、記憶装置もイメージでどこかの空間に作ったんだから、あれと同じだろう。

たぶん。

頼むから難しい質問はしないでくれ。

農業隊がさっさと指示を出して、荷物を受け取っている。

騎士達も教師達も少し戸惑っているが、指示には従ってくれているようだ。

よし、全荷物の収納完了。

「ダダビス達と、教師達は、飛びトカゲに乗ってくれ」

あっ、飛びトカゲの名前に反応した。

無視だ無視。

気にしないからな!

「えっと、我々が乗ってもいいのでしょうか?」

キミールの体が微かに震えている。

そんなに怖いのか?

あっ、違う。

森の王という存在は、この世界では特別だった。

つまり、尊い存在に乗っていいのかという事か。

でも、飛びトカゲに乗ってもらわないと、家に着くのに時間がかかる。

シュリに乗ってもらう事も出来るが、安定しているのは飛びトカゲだ。

それにシュリは今、森の中なんだよな。

ここに来る途中、何か見つけて「処理をしてくる」と言って止める前に行ってしまった。

一体何の処理だったのか。

まぁ、呼べばすぐに来てくれるだろうけど。

「飛びトカゲが嫌ならシュリに乗る事も出来るけど」

「シュリ殿ですか?」

不思議そうな表情のダダビス。

「アンフェールフールミの事だ」

あれ?

教師の1人が倒れた。

「やっぱり飛びトカゲに乗ってくれ」

なんでだろう。

全員が無言で頷いている。

アンフェールフールミって、もしかして恐ろしい存在として伝わっているのか?

まぁ、ちょっと巣穴から不穏なものは感じるが、それぐらいだよな?

「色々誤解があるようだな。これから少しずつ改善していけばいいか」

岩人形達の事もだけど、一緒に過ごせば怖くない事はすぐに分かるだろう。

「主、シュリから連絡がきた。処理は済んだようだ」

コアの言葉に、周りにいた者達が緊張した表情を見せる。

「いったい、何を処理していたんだ?」

「ん? 混ぜ物の大群が近くまで来ていたんだ」

混ぜ物。

厄介な魔物だと言っていたな。

なるほど。

それの処理に行ってくれていたのか。

「そうか。ありがとう」

飛びトカゲに視線を向けると、騎士達や教師達が並んで乗っていた。

が、教師2人は完全に眠っているようだ。

まぁ、起きる頃には家に着いているだろう。

きっと彼らには、それが一番いいはずだ。

「体は魔法で支えられてるから、揺れもないし風で飛ばされる事もない。だから安心して空の旅を楽しんでくれ」

飛びトカゲの鼻をポンと叩く。

そういえば、獣人達が乗りやすいように大きさを調整してくれているんだな。

「よろしくな」

俺の言葉に頷いた飛びトカゲは、王をちらっと見た後に上空に向かった。

真上でくるくると2周すると、家のある方へ飛び去った。

「さて、俺達も行こうか」

コアとクロウに声を掛けると、2匹は体を伸ばし準備を始める。

王を見ると、飛びトカゲが飛び去った方を見つめていた。

「大丈夫です。彼らの安全は保障しますから」

飛びトカゲには強力な結界を施したから攻撃されても防げるし、魔法の力で獣人達を落とす事もない。

かなり安全な移動だ。

「いえ、その心配はしていません」

そうなのか?

「彼らが、何か失態を犯さないかと思いまして」

失態か。

「周りにフォローする者がいるから、大丈夫だろう」

一つ目達なら、その辺りもしっかり見てくれるだろう。

それに、教師や騎士の失態って?

失敗なら分かるけど、失態?