軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

15.エントール国第3騎士団団長1

-エントール国 第3騎士団 団長視点-

森の神の姿が見えなくなった瞬間に、どっと疲れに襲われた。

「戻るか」

俺の言葉にキミールと結界警備隊のスワ隊長が無言で頷く。

門を通り村に入ると、大きく息を吐き出す。

魔石の事があるので問題なかったとは言わないが、無事に終わった。

「怖かったぁ」

キミールの言葉に、スワ隊長が何度も頷くのが見えた。

確かにあれは怖かった。

それにしても、溜めこんでいる魔石が見つかるとは思わなかった。

「しかし、どうやって中に入ったんだ?」

魔石の貯蔵庫には、厳重な警備が敷かれている。

獣人達の警備はもちろん、魔法による多重結界や魔道具による生体センサーなどだ。

あのゴーレムは、それらを全て突破した事になる。

「生体センサーは、ゴーレムには反応しないか」

いや、生体センサーが反応しないとしても、登録した者以外が中に入れば警告音が鳴る設定だ。

外からは中が絶対に見えないから、魔石の事を知っていた上で中に入ったはず。

なのに、警告音が鳴らなかった。

いったい、どんな方法で貯蔵庫の中に入ったんだ?

「貯蔵庫の中を確認するように連絡をしておいてくれ」

スワ隊長に視線を向けると、神妙な表情で頷いて近くにいた部下に指示を出した。

「それにしても、凄い魔力でしたね。森の神から溢れる魔力で、体が震えそうになりました」

スワ隊長の言葉にキミールが苦笑する。

「今日はまだ穏やかな方だったよ。前の時は、もっと魔力が溢れていたから」

「そうなんですか?」

スワ隊長の驚いた表情に、頷く。

確かに、今日の魔力は以前に比べるとかなり抑えられていた。

それに、前の時より穏やかな感じがしたな。

「ダダビス団長、失礼します」

結界警備隊の1人が、緊張した面持ちで俺の前に来る。

森の神と関わるようになってから、隊員達から特別な存在に見られるようになってしまった。

俺としては、何も変わらないんだが。

「なんだ?」

「王様から『連絡待つ』と伝言がきています」

「あぁ、分かった」

面倒だな。

きっと会えなかった事をぐちぐちと言われるんだろうな。

前の時も俺の隊だけが会ったから、戻った時に「羨ましい」と連呼されたからな。

「団長。顔に、面倒だと出てますよ」

「俺は正直だから」

「知ってますが、王様の前では隠してください」

王様の前で隠す?

それこそ、意味がないだろう。

「王様は俺の性格を知っている。今更、態度を改めたって意味がないだろう」

態度を変えたら、大笑いされそうだ。

「まぁ、あの王様ですからね。団長の態度が変わったら『気持ち悪い』ぐらい言いそうですよね。最近は団長の態度が気に入っている節がありますし」

「分かっているなら、なぜ隠せと言ったんだ?」

「今の宰相から、文句が出まして」

「あぁ、あいつか」

前の宰相が解任になって、2週間後ぐらいに決まった公爵家の次男だったか?

あれ?

伯爵家だったかな?

どっちでもいいけど、確か貴族達から推薦されたんだったよな。

「俺は、あいつが嫌いだ」

どうも、あの人を見下すような視線が気に喰わない。

「そうなんですか? 俺は、話の分かる人物だと思いましたが」

「どこがだよ! 奴のせいで教師を1人変える羽目になったのに」

しかも教師本人ではなく、彼の遠い親戚に問題を起こす人物がいるからという、意味の分からない理由でだ。

本当に、いらない事をしやがった。

「まぁ、彼も認めてもらおうと必死なんでしょう。宰相の地位に就いてはいますが、今はまだ確定ではありませんから」

半年間の仮採用か。

王もなぜそんな事を言い出したのか。

何か思惑があるんだろうが、さっぱり分からない。

「あの、王様に連絡は……」

あっ、忘れてた。

目の前にいる隊員がものすごく困った表情をしているので、ちょっと心が痛む。

「悪い。連絡が取れる場所まで、案内を頼めるかな?」

「はい」

隊員の後に付いて行くと、結界警備隊の隊長室の隣の部屋に案内された。

中に入ると、離れた場所と連絡を取るための通信道具があった。

「悪い、待たせたな。繋いでくれ」

「はい」

隊員が通信道具を操作すると、すぐに繋がった音が聞こえた。

「第――」

「どうだった」

王様、名前ぐらい名乗らせてくれ。

「第三騎士団団長ダダビスです。どうとは、どういう意味ですか?」

「ダダビス、急かして悪かった。で、森の神の用事は何だったんだ?」

全然、悪かったと思ってないな。

まぁ、いつもの事だけど。

ん?

隊員が、驚いた表情で俺を見ているな。

きっと、俺の王様への態度が普通ではないからだろうな。

「教師となる者達の情報を求めていたようです。なので女性が1人と男性が2人だと知らせました」

「教師の情報?」

「はい。それと、森の神と共に来ていたゴーレムに魔石の貯蔵庫を見られました」

「はっ?」

まぁ、その反応になるよな。

「な、なんと説明した?」

王様の焦った声に、森の神との間で起きた全ての事を説明した。

「そうか。特に、問題視されなかったか。よかった」

「それより王様、教師ですが決まりましたか?」

5日後に迎えが来るので、早々に決めてもらわないと。

教師達の準備もあるだろうからな。

「まだだが、迎えは5日後と森の神と約束をしたんだな?」

王様の言葉に肯定を返す。

「はい」

「分かった。すぐに決めるように指示を出す。そうだ、ダダビスとキミールとカフィレットは護衛として一緒に行ってもらうから。お前たちも準備をしておいてくれ。じゃっ!」

「はっ?」

最後に凄い言葉を残して切れた通信に、深いため息を吐く。

俺とキミールは決まっていたが、カフィレットもか。

しかも護衛?

「カフィレットもですか?」

「そう、みたいだな」

カフィレットに丸投げするつもりだった仕事をもう一度振り分けないと駄目だな。

面倒くさいな。

「えっと、準備をしないと駄目ですね。家は用意してくれるみたいだから……家ってそんなに簡単に建つんですかね?」

キミールの言葉に、首を傾げる。

もしかしてという事があるから、野営の準備も持って行った方がいいんだろうか?

……いや、いらないな。

「カフィレットに決まった事を言わないとな」

森の神の家か。

……嬉しいという気持ちと、恐れ多いという気持ちと、あと……森の王がいるところだよな。

色々、不安だ。

「団長、顔色悪いですよ」

「キミール、お前もな」

………

教師として正式に選ばれたと、オルトル男爵の下へ報告へ行く。

隠れ屋の一室に通されると、タルレスタ女伯爵の姿もあった。

「失礼いたします。教師の件ですが正式に決まりました」

「よくやったわ。おめでとう」

「さすがだ。おめでとう」

タルレスタ女伯爵とオルトル男爵の言葉に、頭を下げる。

「やる事は分かっているわね?」

「はい。子供達を手なずける事と森の神に接近する事。あと、森の神にエントール国の王の悪評をさりげなく流す事です」

最後の1つが問題だろうな。

いや、森の神と少しでも親密になれば、住み込みになるのだからチャンスはあるか。

焦りは禁物だな。

「そうよ。一番重要なのは、子供達をしっかり掌握する事」

えっ?

子供達が一番重要なのか?

俺は王の事だと思ったが。

「びっくりしてるわね」

タルレスタ女伯爵がクスっと笑う。

この人は、笑うと綺麗だが怖さを感じるな。

「わざわざ教師をつけるほど、森の神は子供達を大切にしているみたいだから。子供達を掌握すれば、色々とやりやすくなると思うわ。だから一番は、子供達の掌握よ」

確かに、エントール国から教師を呼び寄せるほどだ。

大切なんだろうな。

俺が動きやすくなるためにも、まずは子供を攻略するか。

「分かりました」

これが成功すれば、地位も金も手に入る。

必ず成功させて見せる。

それにしても、子供か。

優しくして、遊んでやればすぐに懐くだろう。

簡単だな。