軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

14.エントール国結界警備隊 スワ隊長

ーエントール国結界警備隊 スワ隊長視点ー

その連絡を受けた時、頭の中が真っ白になった。

今、俺は何を聞いたんだ?

聞き間違いか?

あぁ、聞き間違いか。

うん、そうに違いない。

「隊長。現実逃避は止めてくださいね」

一緒に連絡を聞いていた副隊長の声に、ハッとする。

隣を見ると、副隊長の「逃げるなよ」という圧をひしひしと感じる。

……逃げられない。

「ボルフォ」

「今は仕事中なので、『副隊長』です!」

幼馴染が冷たい。

「森の神がいらっしゃるんです。隊長が対応しないで誰が対応をするんですか?」

「あ~、聞き間違いじゃなかったのか!」

「違いますよ! 分かっているでしょうが!」

副隊長の言葉に項垂れる。

分かってるけど、分かりたくないって事があるだろう?

それに、副隊長が必死になるのは、俺が逃げたら対応するのは副隊長だもんな。

今聞いたばかりの連絡を頭の中で繰り返す。

「森の神が此処に、お供と来る事。到着までに、それほど時間はかからないだろう」という事だったな。

あとお供に、

「なぁ、お供にゴーレムが1体と聞こえた気がするんだが」

「えぇ。そうです。森の神のお供に、フェンリル王、ダイアウルフ、チュエアレニエの王と思われる存在にその子供のアルメアレニエが数匹。そしてゴーレムが1体。そう連絡がきました」

マジか。

そのゴーレムって、宰相を捕まえた時に現れた噂のゴーレムだよな。

俺は見なかったが、見た者達に聞いた話によると。

操縦者がいないにも拘わらず混ぜ物を簡単に倒し、喋ったらしい。

最初に聞いた時は、「まさか」と思った。

そんなゴーレムを見た事が無かったからだ。

だが、そのゴーレムを見た者達が、皆同じ事を言うので真実なんだと理解した。

「あっ! ゆっくりしている暇はない。すぐにダダビス団長に連絡をして来てもらわないと!」

「はいっ」

たまたま定時報告に来ていた部下が、返事と共に執務室を飛び出していく。

後は、何をしたらいいんだ?

「ダダビス団長と話をするでしょうから、どこか場所が必要となりますね」

「そうか。えっと、休憩室か? あそこなら周りから視界を遮るようになっているし」

まて、休憩室だと?

「そこが場所的に良いでしょうが、綺麗とは言い難いですが……どうします?」

どうしますって言われても。

「掃除するしかないだろう。他にめぼしい場所はないしな」

今日中に掃除をして、あとはお菓子の用意か?

「連絡では、『それほど時間はかからないだろう』とありましたよね? あれって、今日中に着くと考えていいんでしょうか?」

そうだ。

今の連絡でそう言っていた。

普通ではありえない距離の移動だが、森の神ならそれがあり得る。

あの結界騒動の数日後、他国の結界も修復された事を聞いたが、それが行われた日時を聞いて全員が唖然とした。

三国の結界を同じ日に、しかもそれほど時間を掛けずに修復されていたからだ。

足の速い獣人達でも、エントール国からエンペラス国へ行くには最短で5日は、オルサガス国には8日は必要だ。

それも一切、休憩を入れず速度も落とさず行けたとしてだ。

「すぐに此処に到着するかもしれませんね」

結界騒動の日の森の神の速さを考えたら、ありえる。

「すぐに休憩室の掃除を!」

「了解です」

副隊長が執務室を飛び出し暫くすると、彼が部下たちに集合を掛ける声が聞こえてきた。

これで休憩室の準備は大丈夫だ。

「あとは、飲み物とお菓子か? あった方がいいよな?」

こんこん。

ん?

誰だ?

「ギルスです」

「どうぞ」

「森の神がこちらに来ると噂が立ち、門に獣人達が集まってきています」

「はっ?」

もう噂が流れたのか?

しかも、門に獣人達が集まっているだと?

急いで窓から門を見る。

確かに、かなりの数の獣人達が集まっているようだ。

あの感じだと、まだまだ集まってきそうだな。

「どうしますか?」

「どうって……全員で歓迎したらいいだろう」

王が来た時も、全員で歓迎をするんだから。

「それは、止めた方がいいかもしれません」

「なぜだ?」

「反対側の門にいる友人に、森の神の様子を聞いてみたんですが」

ギルスは気が利くな。

「それで?」

「森の神が姿を見せて、ちょっとした騒動になったそうです。当番になっていた結界警備隊の全員が門に集まってしまったらしく」

それは仕方ないな。

かなり興奮しただろう。

「森の神は、その様子を見ると立ち止まり、門に近付かれなかったと言っていました。もしかしたら、騒がれるのがお嫌いかもしれません」

なにっ!

窓から門をもう一度確認する。

集まった獣人達がかなり盛り上がっている。

「それなら、あの盛り上がりは駄目なんじゃ」

「おそらく。ただ、今言った事も予測なんですが」

予測か。

たまたま、近付かなかったとか。

それとも、ダダビス団長がこちらの村に居ると知っていて、すぐに移動するから……いや、それなら最初から此処へ来るな。

考えても答えは出ないが、不安要素は減らした方がいい。

「すぐに、当番以外の騎士達で獣人達を移動させてくれ。見るなと言えば不満が出るだろうから、遠くから見る事は許可を出す」

急がないと、いつ来るか分からないのに。

「すぐですか?」

「あぁ、森の神の異常な移動速度を考えるといつ来てもおかしくない」

ギルスは結界騒動の事を思い出したのか、頭を下げるとすぐに執務室を出ていった。

騒がれるのが嫌い、か。

もし違ったとしても、急に来た事で対応できなかった事にしよう。

それにしても、

「ギルスをここに置いておくのは、勿体ないよな」

すぐに向こうの門の友人に様子を聞いてくれるなんて、やはり優秀だ。

あの容姿でなければ、間違いなくもっと上に行けるのに。

「王都のクソ貴族共が。ギルスを見た目だけで判断しやがって」

バタバタバタバタ。

「失礼します!」

「副隊長、お前……」

廊下を走って、しかも扉を叩くことなく開けたよな。

冷静に行動するように気を付けていたのに、素に戻ってるがいいのか?

「掃除を終わらせました。最後に女性騎士に、見た目を整えてもらっています」

あっ、仕事モードになった。

さすがの副隊長も混乱中か。

「ありがとう。ギルスに集まった獣人達の移動を頼んだ」

俺の言葉に副隊長が不思議そうな表情をする。

彼もきっと、集まった獣人達と一緒に森の神を歓迎するつもりだったんだろう。

「ギルスが向こうの門にいる友人に聞いたんだが、どうも騒々しいのは好まれないようだ」

真意のほどはまだ不明だが。

「そうなんですか? 分かりました」

不思議なんだろうな。

獣人達は、とにかく賑やかなのが好きだからな。

「あれ? 扉が開いてる? 隊長、副隊長」

補佐の気の抜けた声に、緊張感が少し緩む。

こいつの声はどこか力が抜けるんだよな。

「どうした?」

「はい。あと数分で門に到着するかもしれないと、森にいる監視役から連絡がありました」

「「本当に速いな」」

副隊長と視線を合わせる。

そしてホッと力が抜ける。

間に合ってよかった。

「あっ、集まった獣人達はどうなった?」

「騎士達総動員で、移動させてます。森の神が来る頃には完了しているでしょう」

「よかった。あとは、ダダビス団長が来るまでもてなすだけだな」

よしっ。

行くか。

執務室を出て、門へと向かう。

「すみません!」

「なんだ?」

不測の事態か?

止めてくれ。

「子供達が、騎士の制止を振り切って門へ行ってしまって」

「俺が行く。隊長は森の神を門で迎えてくれ。なるべく早く戻る」

副隊長が、連絡に来た部下と走っていくのを見送る。

「隊長、俺は森の状態を監視しておきます。他国の間者が動く可能性があるので」

可能性というより、確実に動くだろうな。

森の神がエントール国と関わりをもった事は既に知られている。

そのせいで、間者の数が倍になったからな。

「頼む」

補佐を見送り、1つ大きく深呼吸をする。

「副隊長、早く戻って来ないかな?」

門を通り抜け、森が見える位置に立つ。

チラリと、門から村を見るが副隊長が来る様子はない。

まさか1人で対応するのか?

森の様子が変わった事に気付いた。

森の神が、近付いているんだろう。

「まさか、俺1人で出迎えるとは……」

あっ、森から姿が……おぉ~、本当にチュエアレニエだ。

凄い迫力だな。

フェンリル王にダイアウルフ。

聞いていた通りだな。

えっと、ゴーレムは……いた。

聞いていた通り、小さいな。

本当に混ぜ物を簡単に倒したんだろうか?

えっ、止まった?

「どうしよう」

とりあえず、話をしないと駄目だよな。

よしっ、行こう!