軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

104.エントール国第3騎士団団長5

-エントール国 第3騎士団 団長視点-

目の前の人物にばれないように、小さくため息を吐く。

なんで俺、ここにいるんだろう?

いや、確かに森の神と話をつけたのは俺だよ?

そう、俺だ。

だからと言ってなんで教師の選定に参加しないと駄目なんだ?

俺はただの騎士だぞ?

団長なんてたいそうな肩書がついているけど。

「それで、どうだった? マルフォラ団長」

「名前が挙がった教師たちに連絡を取りましたが、かなり迷っているようです」

第2騎士団団長マルフォラの言葉に、エスマルイート王が渋い表情を見せる。

「それは、恐怖心からか?」

怖くも感じるよな。

報酬は良くても、過ごす場所は森の王や森の神が住む森の奥。

その場所がどんな場所なのか、誰も知らないのだから。

しかも周りには、フェンリルやダイアウルフはいるだろうし、ガルムも目撃されている。

なによりチュエアレニアやアンフェールフールミまでいる可能性があるのだから。

そういえば、チュエアレニアの子供たちの中に糸を操る個体が目撃されたらしい。

今までにない種類らしく、森を研究していた者達が「自分の目で見たい」と興奮していた。

俺だったら、絶対に遭遇したくないけどな。

「それもありますが、『自分などで本当にいいのか?』という言葉をよく聞きました。皆、森の神に気後れしているようです」

その気持ちは非常に分かる。

俺があの時どれだけ自分を奮い立たせていたか。

「そうか。困ったな」

エスマルイート王が、苦渋の表情を見せる。

「エスマルイート王、少しよろしいでしょうか?」

彼女は第1騎士団のミリラ副団長か。

何か解決策でもあるのか?

「なんだ、言ってみろ」

「教師ではないのですが、この話に興味を持っている者達がいます。『自分なら教師としても問題ない』と自信もあるようです」

興味を持つ者がいるんだ。

「誰だ?」

「森の調査員の1人リーピと、魔術師のノミスです。2人とも、週末などに子供たちに勉強を教えています」

リーピは知らないが、ノミス魔術師とは仕事を一緒にした事があったな。

かなり真面目な性格だった覚えがある。

俺とは合わなかったが。

「ほぅ。その者達の普段の素行は? 誰かと接触したなどの確認は? 家族、その周辺の金遣いはどうだ?」

まぁ、チェックされるよな。

教師たちの態度によっては、エントール国が森の神や王に疑われかねない。

それに、森の神を自分たち側に引き込もうとしている者達がいるらしいからな。

その話を聞いた時は震えあがったな。

森の神は優しかったが、それでも何度かその恐ろしいまでの巨大な力を感じた。

そんな方を引き込もうなんて、無謀すぎる。

「こちらが調査書類です。問題は無いかと思います」

「そうか」

ミリラ副団長から、束になった書類がエスマルイート王に渡される。

パラパラと書類をめくる音がする。

「問題はなさそうだな。ミリラ副団長」

「はい」

「信用していないわけでは無いが、再度調べさせてもらう」

「はい。当然です」

頭を下げるミリラ副団長にエスマルイート王が頷き、書類をマルフォラ団長に渡す。

2人の詳しい調査はマルフォラ団長か。

この人、容赦ないからな。

「ダダビス団長」

げっ。

「はい」

「くくっ」

やばい顔に感情が出てしまった。

「教師が決まったら、君には彼らと共に行ってほしい」

ほしい?

命令ではなく?

それと君?

第3騎士団としてではなく、俺として?

「森の奥には何があるか分からない。なので、教師の護衛には希望者を募ろうと思う。ダダビス団長には、彼らの纏め役となって欲しい。希望の部下も付ける」

断ってもいい話だよな。

命令ではないし。

でも、森の奥か……正直気になる。

凄く気になる!

「キミール副団長とカフィレット補佐をつけて頂けるなら」

後で文句を言われるんだろうな。

まあ、決まった事として話せばいいか。

バレたら、バレた時だ。

「分かった。感謝する」

ん~、簡単に決まってしまった。

何だろう、自分で決めたはずなのにちょっと後悔。

だって、フェンリルのあの圧……もう少し考えてから答えたらよかったかも。

「教師は後2人ぐらい欲しいところだな、引き続き――」

ぶわり。

「えっ……」

強大な魔力が一瞬走り抜けた気がした。

全員の動きが止まり周りを警戒している。

何が起こったのか。

「なんだ、今のは?」

マルフォラ団長が、剣に手を掛けながら立ち上がり窓から外を見る。

「外を見てきます」

彼の部下が2人、慌てて部屋から飛び出していく。

「凄い魔力だったな。今まで感じた事がない強さとデカさだ」

エスマルイート王が、立ち上がると窓へと近づく。

「危険です」

護衛の1人が声をあげるが、それを手で制し窓のそばに立ち森へと視線を向けるエスマルイート王。

「あの強さの力だ。森の王か森の神が関係しているのは間違いない。だったら、逃げ場なんて無いだろう? どこに逃げても無駄なら自分の目で確かめた方がいい」

隣の窓に移動して外を眺める。

森へも視線を向けるが、特に変化は無い。

だが、何かいつもと違う物を感じる。

「結界が、半分ぐらい壊れているな」

エスマルイート王の言葉に、部屋の中にいた全員に緊張が走る。

国を守る結界は、かなり強力な物を掛けている。

それがあの一瞬の力で壊れたのだ。

「恐ろしいな」

隣に立つマルフォラ団長の言葉に頷く。

本当に一瞬だった。

強さとデカさしか掴むことが出来ないほどの。

それなのに、国にいる力のある魔術師達が掛けた結界を壊してしまったのだから。

「話し合いは今日はここまで、何が起こるか分からん。全団員で警戒を――」

「失礼いたします。地下に投獄されていた魔導師ヌースルと元宰相ヴィスルイ。一緒に確保した24名の姿が消えました。外から何者かが押し入った形跡があり、騎士数名が負傷しております」

えっ?

奴らが逃亡?

だが、あそこには強力な結界が。

あっ、もしかしてさっきの力?

なら、あの力は奴らの仲間が?

「第1騎士団は逃亡した者たちを追え。第2騎士団は投獄されている全員の確認。第3騎士団、第4騎士団は結界が修繕されるまで警戒を強化」

「「「はっ」」」

エスマルイート王の言葉に、返事を返すとすぐに部屋を出る。

何がどうなっているんだ?

あんな力を持つ者がヴィスルイ側にいたって事か?

いや、もしいたならもっと早く事を起こしているはずだ。

「「団長」」

キミールとカフィレットが、こちらに駆けてくる姿が見えた。

それに少しほっと息を吐く。

「さっき何かすごい力が!」

キミールを手で制し、頷く。

「その力のせいで、国に掛けてある結界が壊れた。第3と第4は壊れた結界が治るまで警戒を強化して不測の事態に備える。全員で事に当たってくれ」

「「分かりました」」

あれ?

あの場に第4騎士団の関係者はいなかったよな。

……あの王が、ミスったのか?

もしかして動揺していたのか?

ふふっ第4には、俺から伝えるか。

あと、伝えておく事は……あっ。

「団員に、ヴィスルイが何者かの手によって脱獄したと伝えてくれ」

「えっ!」

キミールが驚きの声をあげる。

それもそうだろうな。

ヴィスルイが投獄されていた場所は、エントール国で一番強固な檻の中だったはずなのだから。

嫌な感じだ。