作品タイトル不明
105.壊した? なら修復だ
「おはよう、主」
えっ?
皆に朝の挨拶をしながらリビングに入ると、思いがけない者から朝の挨拶をされた。
「……おはよう」
なんで、オアジュ魔神がいるんだ?
しかも、なぜ朝ごはんを食べているんだ?
あれ?
彼がこの世界を襲ったのは昨日の事だったよな?
それが解決して、何となく疲れたから解散になって、彼は魔界に帰った……はずだ。
俺の記憶違いか?
いや、「バイバイ」と手を振った記憶がある。
「何をしているんだ?」
「……ようすを、その、見にだな……」
ようすを見に?
つまり魔界からまた来たのか。
「あぁ、オアジュ魔神が作ったところの様子見か?」
作った者としては、気になるのかもな。
オアジュ魔神の魔神力が必要なくなったとしても、彼の力で作ったわけだしな。
「いや、それじゃなくて……」
違うのか?
……じゃあ、何が気になっているんだ?
もしかして、魔界に属する仲間が気になっているのか?
「ケルベロス達なら元気だぞ?」
さっき庭を見たら、龍達から特訓を受けていたからな。
テフォルテが傍にいるから、むちゃな事はしないだろう。
たぶん。
「違う! この世界に魔神力が流れて1日経ったから、何かあったら……あっ」
えっ、俺たちが心配で様子を見に来てくれたのか。
なんだ、いい奴じゃん。
ん?
顔が赤くなってるな。
そうとう恥ずかしいみたいだ。
「一つ目たちのご飯はどうだ? うまいだろう?」
揶揄いたいが、心配して来てくれたんだし止めておこう。
それにしても、性格変わってないか?
「あぁ、うまいな」
視線を逸らしながら、一つ目が作ったパンを口に入れた。
「おはよう。今日はいつもと違う席なんだな」
「「「「「おはよう」」」」」
オアジュ魔神がいるからなのか、いつもと違う席に座っている子供達が元気に挨拶を返してくれる。
「大丈夫なの」
ウサが、オアジュ魔神をちらりと見ると、不安そうに俺を見る。
「大丈夫だと思うぞ。俺たちが心配で来たみたいだ」
オアジュ魔神を見ると、一つ目からパンを大量に貰っている。
かなり美味しかったらしい。
「ちょっと魔神力の影響でキレやすいみたいだけどさ」
「そっか。分かった」
ウサの返事に頭を撫でると、嬉しそうに笑みを見せた。
昨日のオアジュ魔神を見ているから、もっと怖がるかと思ったけどそうでもないな。
「主、ご飯食べよう!」
ん?
あっ、子供達は俺を待ってたんだ。
オアジュ魔神が既に食べているから、食べ始めていると思っていた。
「ごめん。さて食べようか。いただきます」
「「「「「いただきます」」」」」
果実水を飲み、子供達の様子を見る。
いつもの食事風景だ。
庭に視線を向けると、ケルベロス達がコアに向かって魔法で攻撃をしたところだった。
ちょっと心配したが、さすがコア。
見事に返り討ちにした。
いやあれは、大丈夫なのか?
テフォルテは……大爆笑?
まぁ、大丈夫なんだろう。
食事が終わり、子供達は森の中に遊びに行くらしい。
今日はフェンリルのシオンを中心に、フェンリルの子供達が護衛として一緒に行くようだ。
「よろしくな」
「「「「「はい」」」」」」
「森には危険な魔物が多くいるんだろう? 護衛付とはいえ、心配じゃないか?」
準備をしている子供達を心配そうに見るオアジュ魔神に、驚いてしまう。
実は、オアジュ魔神の偽物か?
性格が変わりすぎだろう。
「いや、子供達は大丈夫なんだ。シオンたちは、子供達がやり過ぎないように止めるためだから」
「はっ?……そうか」
一瞬、意味が分からないという表情をしたオアジュ魔神が、子供達を見て頷いた。
「主! 大変だ!」
「うわっ」
ビックリした~。
いきなり上から親玉さんが……。
「あっ、悪い。驚かせるつもりは……」
「いや、大丈夫だ。えっと、何が大変なんだ?」
親玉さんがちょっと困った表情をして、傍にいるオアジュ魔神をちらりと見る。
「昨日、新しい世界が出来た反動で強力な魔力が世界中に流れたようだ。そのせいで『各国の結界が破損した』と、子蜘蛛達から報告が来た」
各国の結界?
あぁ、獣人の国で見たあの結界か。
あれが破損?
でも、あの弱い結界だったらすぐに修復は出来るよな。
あれ?
それだったら「大変だ」と報告するわけないな。
「あのさ、その破損した結界はすぐに修復されたんだよな?」
「我が子の報告では、修復はまだされていないようだ」
まだ、していない?
何かの準備が必要だからか?
でも、あれぐらいなら……待てよ。
俺の観点から判断していいのか?
俺は、かなり力が強いらしい。
その俺から見て弱い結界だと判断したんだけど……あの結界は彼らから見ても弱いのか?
「結界が破損した事で、森から出てくる魔物の対処に各国が追われているようだ」
それなのに、結界を修復しない?
もしかして、すぐには修復できないのか?
「すまない」
えっ?
謝罪に隣を見ると、情けない表情のオアジュ魔神。
なんで謝っているんだ?
……そうか「新しい世界が出来た反動」だったな。
「気にしなくていい。この世界を完成してくれた事は感謝しているんだから」
昨日のあの強気な性格はどこへ行ったんだ?
あれが魔神力による影響なのか?
だったら、怖ろしいな魔神力!
いや今は、魔神力より結界だ。
どうしようかな?
「……俺が修復すればいいんじゃないか?」
うん、いい考えだと思う。
「親玉さん」
「どうした?」
「破損した結界は何個あるんだ?」
さっき、親玉さんは各国と言ったからな。
獣人の国以外にも被害が出ているんだろう。
「人の国と、獣人の国、エルフの国だ」
3つか。
ここから魔力を送って修復するより、結界に触れた方がやりやすいよな。
「よし、まずは行った事がある獣人国に行こう!」
「何をしに行くんだ?」
「えっ? 結界の修復をしに行こうかと……」
質問したオアジュ魔神が、呆然と俺を見る。
何か不思議な事でも言ったかな?
「ここで話している時間は勿体ないな。その間に魔物に襲われたら可哀想だし、ちょっと行って来るな」
「我が一緒に行こう。乗れ」
「親玉さん、ありがとう。オアジュ魔神、ゆっくりして行けよ」
親玉さんの上に乗ると、ふわりと体が浮き次の瞬間には景色が走り抜ける。
コアも思ったが、走る速度が異常だ。
そうだ。
獣人の国に行ったらダダビスに会えないかな?
準備する部屋の事があるから、教師として来てくれる者の性別を知りたいんだが。
まぁ、そう調子よく会えるわけはないか。
「ふふっ」
「主、どうしたのだ?」
親玉さんが首を傾げるのが見える。
「いや、新しい世界が出来たり、魔神力の事でごたごたしたのに、変わらないからさ」
朝は皆とご飯を食べて、問題が起きたらそれに対処して。
変わらないのが一番だけどさ。
「まぁ、こんな感じが一番いいか」