作品タイトル不明
103.もう、それでいいよ
フィオ神とアイオン神はどうやら納得したらしい。
俺としてはちょっと納得できないんだが……。
「変質はしたかもしれないけど、それだけじゃないと思うよ。それだったら神力の痕跡は残っている筈だけど、完全に無いんだから。調査の結果だけを見て結論を出すとしたら……『過去の全てを捨てて、生まれ変わった』かな?」
さすがにそれは、ロープの考え過ぎだと思う。
「生まれ変わった……なるほど」
えっ!
フィオ神を見ると、頷くのが見えた。
まさか、フィオ神も今のロープの意見に賛成なのか?
「神力が、長い間ずっと足りていない状態の核だったから、ありえるかもしれないな。潤沢にある翔の力を完全に取り込んだ方が、いつ貰えるのか分からない神力に頼るより確実に星は継続できる。だからいらない物を排除し、神力を二度と取り込まないために痕跡すら消した。生まれ変わったというのは正しいかもしれない」
確かに飢え続けるぐらいなら、異なる力でも飢えが凌げる方を選ぶよな。
……そういう事でいいのか?
核とはそういう物なのか?
「難しいね。クウヒ、分かった?」
ん?
この声はウサか?
「俺もちょっと分からなかった。でも、この世界が主の物だという事は分かったかな」
「うん。それは私も分かったよ」
クウヒとウサの会話に、周りにいた孫アリ達や孫蜘蛛達が頷いている。
さすがにちょっと分かりづらかったみたいだ。
俺もいっぱいいっぱいだからな。
どういえば、分かりやすいかな?
「簡単に説明するとな」
飛びトカゲが説明してくれるのか。
どういうんだろう?
「主の力は気持ちいいだろう?」
ん?
「うん。主の力って、お風呂に入った時みたいにふわ~ってなるよね」
「うん」
ウサの言葉に頷くクウヒを見ながら、少し驚く。
俺の力ってそんな風に感じてくれていたんだ。
癒しの力があるからかな?
「この世界を動かす核も、ウサとクウヒみたいにふわ~となっていたんだ」
まぁ、守りと癒しの力に包まれていたらしいから、そうなるのかな。
「ふわ~ってなっている間に、主の力がゆっくり核に入って――」
ん?
何だろう、すごく嫌な予感がするんだが。
「ふわ~となって判断力が低下した核の中から、主の力が元々あった力を追い出したんだ」
あっ、やっぱり。
というか、その説明だと俺の力がそうとうあくどい事になるんだけど。
それにちょっと違うと思う!
「なるほど」
「そういう事なんだ」
げっ、クウヒとウサが納得してしまった。
いや、周りにいる孫アリ達や孫蜘蛛たちもか!
「そうそう」
何が、そうそうだ。
でも、子供たちにも理解出来るように説明すると、飛びトカゲが言った感じになるのかな?
「でも、核は元々の力を追い出して怒らなかったの?」
ウサは不思議そうに飛びトカゲを見る。
まぁ、そこは疑問に思うよな。
「核も元の力より主の力の方が好きになっていたから、怒らなかったんだよ」
好きか。
重要にはなっていたみたいだな。
「主の力に包まれて、皆が幸せになりましたって事だよ」
水色が楽しそうに話すと、クウヒとウサが「幸せ」と言いながら笑った。
乗っ取った話が幸せの話に変わったな。
まぁ、いいか。
嬉しそうだし。
「好きか、嫌いか、か。確かに核は、神力より翔の力の方が好きだろうな」
アイオン神が苦笑する。
コアやふわふわも納得した表情をしている。
……まぁ、もうそれでいいか。
「なんだか疲れたな」
色々な事がここ数日にギュッと詰まって、押し寄せてきたからなぁ。
問題もこれで解決したよな?
星は完成して、核は俺と光の力で動くし……。
「あっ、そうだ」
まだ残っていたな。
星に強い者が集まり過ぎて、受け止められなくなっていたんだった。
あれはどうなったんだろう。
「ロープ」
「何?」
良かった。
まだ近くにいてくれた。
「強い者が集まり過ぎて問題が起きていただろう? あれはどうなった?」
それが解決しないと、いくらこの星が完成しても無駄になってしまうからな。
「えっと、確認するね」
確認って、すぐに分かるものなのか?
「主! 受け止める世界が広がったから、今回は回避できたみたい。ただ、これからも強くなるだろうから、いつか許容量を超えるかもしれないけど」
強くなる前提なんだな。
まぁ、そうかもしれないが。
強い者が集まり過ぎて、世界が受け止められる許容量を超えたせいで世界が壊れるんだったよな。
今回は世界が広がったからよかったけど、次が来たらどうするか……ゆっくり考える時間が出来ただけで良しとするか。
「ロープ、確認なのだが」
「うん、いいよ」
「オアジュ魔神が作った世界に、我々は行けるのか?」
ん?
どういう事だ?
飛びトカゲの質問の意味が分からない。
大地があれば行けるんじゃないのか?
「ん~、オアジュ魔神が作ったから魔界に属する世界のはずなんだけど、出来た傍から主の力や光の魔力がばんばん流れているし、それに飛びトカゲ達も闇の魔力や魔神力に触れているから、今は向こうの力の強さに耐えられないかもしれないけど、暫く待てば行けるようになると思うよ」
魔界に属する世界?
あっ、魔神力で作った世界だからか。
神力で作った世界では光の魔力を持つ者しか存在出来ないように、魔神力で作った世界は闇の魔力を持つ者しか存在出来ない、だったな。
ただ、この世界ではそれは通用しない。
俺の力と魔神力、光と闇の魔力、すべての力でこの世界は包まれているからな。
ロープの話し方から、今は魔神力の影響が強く出ているようだがそれもいずれ混ざり合って弱くなるって事だよな。
そうなったら、ここと同様にコアや飛びトカゲ達、アイオン神達も行けるだろう。
「そっか。世界が広がったんだよな」
向こうの世界はどうしたらいいんだろう?
放置しておいていいのかな?
「主、向こうの世界を見てきていいか?」
ん?
テフォルテが見てきてくれるのか?
というか、なんで尻尾がそんなに揺れているんだ?
「何か楽しい事でもあるのか?」
「出来たばかりの世界を見る機会なんてないからな。そういえば、大地はあるのか?」
どうだろう?
「あるよ。ここと同じぐらいの広さの大地が」
ここと同じぐらい……ここって森や国を含めた広さだよな。
それならかなり広大な土地が出来たという事か。
「主、行ってきていいか?」
テフォルテを見ると、抑えきれない興奮なのか前足が地面を叩いている。
「いいよ。どんな大地なのか見てきてくれるか?」
「分かった」
「我が子よ、行くぞ!」
あっ、ケルベロス達と一緒に行くんだ。
子供だけど……親が一緒なら大丈夫か。
「気を付けて」
あっ、行っちゃった。
あれ、そういえば。
視線をテフォルテがいた場所へ向ける。
……まぁ、いるよな。
「あっ」
見ているのがばれたのか、オアジュ魔神が俺を見た。
「「…………」」
何を話せばいいんだろう。
「主の魔力は不思議だな。さっきのように激昂していたら、当分落ち着く事は無いのに……。今は不思議なほど冷静だ」
「魔神力は、怒りやすい性格にするのか?」
光のあの怒り。
少し、違和感を覚えたんだよな。
「あぁ、魔神力の力で怒りが倍増されるらしい。瞬間的に一気に怒りが爆発するのも魔神力が影響しているとも誰かが言っていたな。あまり興味が無かったから聞き流していたが……いいな、ここ。落ち着く」
怒りが倍増されるのか。
それなら光があんな風に怒った理由が説明できるか。
チラリとオアジュ魔神を見る。
随分と穏やかな表情をしている。
俺の力か。