作品タイトル不明
102.だまし打ち?
「ロープ、俺はどうやって核を乗っ取ったんだ?」
知りたくないけど、知らないのも怖い。
複雑だ。
「核を調べて分かったんだけど、主が来た時は核の中の神力はあとわずかで、半年ぐらいで消滅の危機にあったみたい」
半年で消滅?
かなりギリギリな時期に俺が来たんだな。
もし俺が力を生み出していなかったら……死んでたのか?
俺だけじゃなく仲間も皆?
マジで、力を誕生させて良かったぁ。
「あっ、そうそう。この世界の魔法を生み出す魔力なんだけど、世界の核から地上にある核に力が送りこまれて、その力が地上の核の中で魔力に変換されるみたいだね。普通はたえず世界の核から、地上にある核に力が送り込まれるんだけど、主がこの世界に来た時はその力がかなり弱まっていて、この世界全体の魔法が消えかかっていたみたいだね。使えたとしてもかなり弱かったみたいだよ」
世界の核から送られる力によって、魔法の強さが変わるのか。
ところで、乗っ取った話はどこへいったんだ?
「この世界はその方法なんだな。核の影響力が大きいから、最近では別の方法で魔法を生み出すんだが」
アイオン神の言葉にフィオ神が頷いている。
確かに核の影響がデカすぎるよな。
この世界のように核に問題が起きたら、魔法が弱くなるみたいだし。
別の方法があるなら、知りたいな。
「別の方法とは?」
「核は世界の維持に努めてもらって、魔法のための魔力は別の物に生み出させる方法だな。最近では、魔力を生み出す物を複数用意するのが主流らしい」
アイオン神が言った方法の方が、核の負担が少ないな。
ただ、途中で魔力を生み出す方法の変更って可能なんだろうか?
あれ?
核からの力は、弱まっていたんだよな?
俺の魔力量は……。
「ロープ。今のロープの話から考えると、俺の魔力量は少なくないと変じゃないか?」
核からは、少量の力しか届いていないのにあの魔力量?
しかも、どんどん増えていったらしい。
「それは主が、この世界の外から来た者だからだよ。この世界に属していないから、この世界のルールに従う必要はなかったんだ」
なるほどね。
でも、ならどうやって光の魔力をあんなに生み出したんだ?
「主の光の魔力を生み出しているのは、主の中にある核だよ。この世界だったら、普通は世界の核から受け取った力を勇者のギフトが数十倍にして魔王を倒す力を得るんだけど、主の核は勝手に光の魔力を生みだしちゃったみたい。しかも本来の働きも持っていたから、生み出した光の魔力を数千倍に増やしちゃったんだ。多分、複数のギフトが主に贈られたから、起きた問題かな? その辺りは想像の域を出ないね」
また勇者のギフトか。
しかも、核が勝手に光の魔力を生み出した?
それも、数千倍に増やしたって。
結果論だけで言えば、それがよかったんだよな。
そう、結果論だけで考えたら……。
釈然としないけどな!
「待て。翔はこの世界に属していないなら、翔が生み出した光の魔力はこの世界では排除対象だと思うのだが」
「確かに、この世界の物が生み出した力が関わっていない光の魔力は排除される。でも勇者のギフトが関わった光の魔力は、万能性に変化するみたい。勇者のギフトにそこまで詳しくないから、ここまでしか分からないけど」
ロープの説明にアイオン神が頷く。
万能性の光の魔力かぁ。
「魔王を倒すために光の魔力を無理やり増やすと、微かに変質してしまうんだ。そうなると、その世界の物が生み出した力を元に光の魔力を生み出しても、排除されてしまう。だから後付けで勇者のギフトに『光の魔力を万能性にする』という機能を付けたと聞いた事がある」
「あれ? フィオ神は勇者のギフトに詳しくないと言っていなかったか?」
アイオン神が首を傾げると、フィオ神が少し呆れた表情を見せた。
「勇者ギフトの被害者が近くにいるんだから、普通は調べるだろう? ……調べなかったのか?」
アイオン神が慌てて首を横に振る。
「調べた! 私だって調べたが、その、記憶装置からなかなか欲しい情報が……」
見つけられなかったんだな。
アイオン神の記憶装置は、詰め込むだけで整理されていないみたいだから、欲しい情報がすぐに出る事は無いだろうな。
後で絶対に、記憶装置の整理をさせよう。
彼女の部下に、監視でもお願いしようかな。
「万能性を持つ主の魔力は、何の妨害もなくこの世界に少しずつ浸透したはず。あと、世界の核と大地を繋ぐユグドラシルを味方に付けたのも、よかったんだと思う」
ユグドラシルってエコの事だよな。
もしくは枯れた方?
「元のユグドラシルは、世界の核から送られる力が減った事や、森の侵略で瀕死状態。亡くなる直前に主から送られた膨大な魔力が無ければ、次の世代も生み出せなかったから、あの時トレントが主をユグドラシルの下へ連れて行ったのは奇跡だね。あと少し遅かったら、この世界からユグドラシルが消えるところだったみたい」
ユグドラシルはかなり重要な役目があるんだな。
あぁ、だから枯れた時のトレント達が、あんなに悲壮感に包まれたんだな。
エコが誕生した時は、驚き過ぎて固まったもんな。
「ここからが問題なんだよね」
問題?
「生まれたばかりのユグドラシルにとって、主は世界の核より重要な存在になってしまったんだ。なんせ、自分を生みだしたのは主の魔力なんだから」
「そうなるのか?」
「そう。だからユグドラシルは世界の核が送ってくる力を拒絶して、主の魔力を選んだ。核から送られてきた力が微々たるものだったのも原因かもしれないけどね」
そっちが原因だと思うが……。
「主の魔力は万能性があるから、ユグドラシルを通してゆっくり大地の隅々にまで浸透していって、その結果、世界から核の力を排除しちゃったみたい」
えっ、排除?
「しかも、主の魔力は大地を通り越して中心に向かってしまった」
中心という事は核に向かって魔力が浸透していったという事か。
「普通は、核から外に向かって力が流れているから、外から魔力が入り込むことは無いんだけど、核が弱っていたせいで主の魔力が核に届いてしまったみたい。もちろん、普通の魔力なら核に影響を与える事は無いし拒絶されて近付けない。ただ、核はかなり弱っていた。そんな時に、主の高純度の癒しと守りの力を持った魔力に触れてしまったから、傍にある事を許してしまった」
癒しと守りの力?
「主の魔力は攻撃性はほぼないけど、守る力と癒しの力がすごいんだ。しかも拒否反応が出にくい万能性」
攻撃性はほとんどないんだ。
まぁ、触れただけで攻撃される力なんて嫌だからな。
守る力と癒しの力か……いい魔力だな。
「弱った核にとっては、拒絶出来ない力だったんだろうね。フィオ神も言っていただろう? ここは居心地がいいって。それは主の癒しの力と守りの力がこの世界に満ちているからだよ」
「なるほど。確かに一度これを経験すると、また来たくなるな」
フィオ神が苦笑する。
「核は、主の魔力に包まれて癒されていたみたいだよ。その記憶が残ってた」
「へぇ。核には意思があるのか?」
「意思はないが、世界を継続させるための行動だったのだろう。もしかして、翔の力を核は自ら取り込んだんではないか? 神力の替わりになると」
あれ?
アイオン神の言う通りなら、乗っ取りじゃないよな?
「そう、最初は少しだけ主の新しい力を取り込んで、世界を継続させようと思ったみたい」
なんだ、核が自ら取り込んだんなら、乗っ取りじゃない。
「誤算は」
誤算?
「主の新しい力と魔力が、どちらも癒しと守りの力に優れていた事だね。癒されるために魔力で包まれていた核は、魔力の中にある微量な新しい力に気付かなかった。既に内に入れた力だから、入り込んでも気付かなかったみたい」
それって、乗っ取りじゃなくてだまし討ちみたいな感じなのでは?
「主の力は、ゆっくりゆっくりと核の中で増えていって、ここからがちょっと不思議なんだけど、混ざり合いだしたんだ」
「混ざり合い? 何がだ?」
「力だよ! 核の中には微かに残った神力と主の力があったんだ。それがある時を境に、2つの力が混ざりだした。で、最後には主の力だけが残った。ね、乗っ取っちゃったでしょ?」
ん~、そうなのか?
「世界を継続させるために、核が自ら変質したのかもしれないな」