軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

96.あれにお願いするの?

一瞬、体がふわりと浮いた気がした。

「うわっ」

慌てて机に手を置き体を支え、ギュッと目を閉じ次の揺れに備える。

しばらくそのまま待つが、揺れは感じない。

息を吐き出しながら目を開ける。

「あれ?」

目の前には、水の入ったコップ。

いつの間にか、新しい物と取り換えられていたらしく水が並々と入っている。

コップの周りを見る。

水がこぼれた形跡は一切ない。

「あんなに揺れたのに?」

そう、体が浮くと思うほどの揺れだった。

それなのに水がこぼれていない。

机の他の物にも視線を向ける。

何1つこぼれる事も無ければ、机から落ちた物も無い。

おかしい。

「揺れたよな?」

首を傾げながら周りを見る。

コアや飛びトカゲたちも周りを見ながら不思議そうな顔をしている。

「主。いま、地震と言うものが起きた気がしたんだが……違うのか?」

「ごめん、俺も地震だと思ったんだけど、どうも違うみたいだ」

シュリを見ると、どこか不安そうにしている。

そっと頭に手を伸ばして、撫でる。

「魔力の波動だ」

「えっ?」

後ろから声がしたので振り返ると、いつの間にかフィオ神が真後ろに来ていた。

その表情を見て、少し緊張する。

彼は、ここに来てから見た事が無いほどに真剣な表情をして周りを見ている。

「今の揺れは大地ではなく、世界が揺れたのだ。その揺れに、この世界を包む魔力が反応したのだ」

……ん?

大地ではなく世界が揺れた?

星が揺れたという事か?

星が揺れたら、地面も揺れると思うが……。

「分からん」

そういう物なのだと理解しておこう。

そうか、世界が揺れ……それって、いい事じゃないよな。

「なぜ、世界が揺れたんだ?」

原因はオアジュ魔神なんだろうけど、いったい何をしたんだ?

「それが、何をしたのか分からないのだ」

フィオ神がオアジュ魔神に視線を向ける。

つられてオアジュ魔神を見ると、ニヤニヤとした笑みでアリアス神を見ている。

もの凄く、嫌な感じだ。

「今のは何だ?」

アリアス神が、オアジュ魔神を睨みつける。

それに応えず、ただニヤリと笑うオアジュ魔神。

見ているとイラっとする。

こう、後ろから頭をどつきたくなるような。

……どうも、最近攻撃的な思考をするな。

これって、闇の魔力の影響かな?

闇の魔力の認識を新たにしたが、もしかしたら心の奥では前の負のイメージが残っているのかもしれないな。

「笑ってないで答えろ」

今は俺の性格など、どうでもいいな。

オアジュ魔神が、この世界に何をしたのか話してもらわないと。

たしか「造成」と言ったよな。

造成は「作りあげる」と言う意味だったはずだ。

作りあげる?

この世界に、何か作ったのか?

「造成と言う前に、何を話していたかな?」

そうだ、「この世界が半分しかない」と「神はまともに世界も作れない」と小馬鹿にしていたんだ。

「……もしかして」

この世界を「完成」させたのか?

いや、まさかな。

アイオン神の話では無理だったはず。

でも「魔神が神より優れている事を証明」すると言っていた。

神には出来ないが、魔神には未完成な世界を完成させられるという事を知らしめたいんじゃ。

「主! 大変!」

オアジュ魔神とアリアス神の不穏な空気に誰もがじっとしていた中、ロープの声が響いた。

「びっくりした」

かなり考え込んでいたのか、不意に響いた大音量に心臓がバクバクと脈打っているのが分かる。

「ふ~」

大きく息を吐き出すと、空中に視線を向ける。

別に空中を見ても、そこにロープの姿があるわけでは無いが。

「どうした?」

「世界の半分に、魔神の力を糧にした世界が出来てるんだ! 世界が完成してる!」

ロープの言葉に、考えていた事があっていたと知る。

ただ、「魔神の力を糧にした」という所が分からない。

「なんて事をしたんだ!」

アリアス神がオアジュ魔神に詰め寄るのが見えた。

「そんな」

フィオ神の声が震えているのが分かった。

見ると、顔色がかなり悪くなっている。

どうも、俺が思っている以上に最悪な事のようだ。

アイオン神を見ると、酔いは完全に抜けたのかオアジュ魔神を睨みつけている。

机の上の水を取り、一口飲む。

まだ少し冷たい水がスーッと体に染み渡る。

「よしっ。落ち着いた」

まずは、ロープに話を訊こう。

神達と魔神を見る。

とても険悪な神達と面白がっている魔神。

あそこには、一切関わりたくない。

よしっ、こっそり訊こう。

立ち上がり、神達から距離を取る。

親玉さんが俺の行動に首を傾げたので、人差し指を唇に当てて「しーっ」というジェスチャーをする。

分かってくれたのか、親玉さんの体で俺を隠してくれた。

隠れる必要はないが、神達の姿が見えなくなるとほっとしてしまう。

「ロープ。質問があるんだが、俺だけに聞こえるように答えてくれるか?」

口の中で小さく言葉にする。

『分かった。これでいい?』

「ありがとう。魔神の力を糧にと言ったけど、どういう事だ?」

『この世界は神力によって作られた。そのため核が正常に動くためには神力が必要だったんだ』

なるほど。

「それで?」

あれ?

神力が必要って……今は誰が供給しているんだ?

『あの魔神は、この世界で未完成だった半分を魔神力で作ってしまった。魔神力で作ったから、核には魔神力が必要になってしまったんだ』

供給については後でいいな。

つまりこの世界をこれから維持していくためには、魔神の力が必ず必要となったわけか。

こちら側に魔神力を使える者はいない。

使えるのは闇の魔力で、魔神力とは異なる。

……なるほど、かなり面倒くさい事になったな。

「この世界を維持するためには、魔神にお願いして力を貰わないと駄目という事か」

『そうなると思う』

マジか。

だから神達があれほど慌てているのか。

ん~、必要ならお願いぐらいは出来るが……オアジュ魔神のニヤついた笑みを思い出す。

なんか嫌だな。

「どうやった?」

アリアス神の怒鳴り声に親玉さんから少しだけ顔を出すと、アリアス神に襟元を掴まれているオアジュ魔神が見えた。

「何がだ?」

オアジュ魔神は、そんなアリアス神を見て楽しそうに笑っている。

かなり性格が悪いようだ。

あれにお願いするのか?

「神力が込められている核にどうやって魔神力を込めた。いや、そんな事より、魔神力では核が作れないはず」

アリアス神は困惑した表情を見せると、オアジュ魔神が心底楽しそうに笑った。

「それはいつの話だ? 現実を見たらどうだ? この世界は完成したんだから。俺の力で」

親玉さんの影から様子を見ているが、オアジュ魔神の性格は最悪だな。

テフォルテと話している時は感じなかったのに。

あっ、テフォルテはどうしているんだ?

あぁ、彼女もかなり驚いたようだな。

オアジュ魔神を凝視している。

さて、これからどうしようかな。

……とりあえず、気になる事を訊いておこう。

「ロープ。この世界の核にもずっと神力が必要だったんだよな?」

『うん。そうだよ』

「誰がこの世界の核に神力を与えていたんだ?」

俺は知らないし。

この世界は見習い達から見放されていたはず。

『主が神力に似た力を得てからは主から』

えっ、そうなのか?

『それまでは見習い達が神力を溜めた物を用意していたようだけど、主がこの世界に来た時には既に使い切っていたから、主が来なかったらこの世界消滅していたかもね』

「消滅」

『でも、見習いたちはぎりぎりこの世界を維持していたようだから、また新しく神力を持ってきたかもしれないけど』

「そうか。ありがとう」

とりあえず、神力は俺がいる限りは問題ないと。

神力に似た力を作ってよかった。

なんかしみじみ思ってしまった。

そうじゃないと、神にも頼る事になるからな。

ただ、魔神力はどうする事も出来ないよな。

いや。

神力に似た物も作れたんだ、魔神力だって作れるんじゃないか?

別にそっくりじゃなくても、似た物でいいんだし。

ただ、魔神力を見るか感じるかする必要がある。

……テフォルテにお願いして、性格の良い魔神を紹介してもらおうかな。