軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

90.あれ? 優しい

ベタン

「えっ?」

勢いよく降りてきた「とと」もしくは「かか」が、空中で何かにぶつかった。

スピードが出ていたので、衝撃はかなりのものだったのだろう。

見えない何かの上で悶えている。

「「「かか?」」」

その姿に、ケルベロスたちが呆気にとられた表情で見つめている。

可愛い。

ではなくて、上空で悶えているのはケルベロスたちにとって「かか」らしい。

「かか」なのだからお母さんだよな。

見た目で判断したら駄目なのはわかるが、お母さんか……お母さんなのか。

卵の中で初めて見たケルベロスたちもそれは恐ろしい表情だったが、「かか」は3割増し、いや5割増しな感じだ。

「なんだ? ここに何があるんだ?」

上空の何かを前足で叩く「かか」。

凶暴な表情が眉間に皺が寄る事で、もっと恐ろしい表情になっている。

夜に会ったら、発狂するレベルだ。

その強面を持つ「かか」が、前足でトントン。

いや、ドンドンと見えない何かと格闘している。

……前足で一生懸命何かを叩く行動はちょっと可愛く見える。

ただ、表情が……見た目とのギャップが凄すぎて声を掛ける勇気がわかない。

「何があるんだ?」

「さぁ?」

フィオ神とアイオン神が、「かか」が登場した衝撃から復活したようだ。

2人とも間抜けづ……驚いた表情で上空を見つめていたからな。

それにしても、あそこに何があるんだろう?

あんな上空に見えない壁?

そんな物を作った覚えはないよな。

神達が何かしたのかと思ったが、違うようだ。

なんだか気持ち悪いな。

「かか」を見る。

結構な力を込めて叩いているようだが、壊れないようだ。

まるで結界みたいだな。

「あれ? 結界?」

何だろう、今何か……あっ!

「かか」がこちらに姿を見せる前。

上空に歪みが出来て、危険な感じがしたから家の周辺に3重の結界を張ったんだった。

結界を張った後に魔界からだと知って……あの時の結界はどうなったんだっけ?

成功したのか、失敗したのかも確認しなかったが、

「成功してたって事なんだろうな」

上空で何かに阻まれて、地上に降りてこられない「かか」を見る。

なぜか結界の魔力を感じられないが、そこにあるんだろう。

「『かか』ちょっと止まってくれ」

「あ゛っ? 誰だお前」

うわぁ。

俺が「かか」と呼ぶのは駄目だったか。

まぁ、それは当然か。

自己紹介もまだだもんな。

「えっと、俺は……」

なんて言えばいいんだ?

ケルベロスの卵を育てた?

これは違うな……拾った?

拾ったのか?

「ケルベロスたちの卵を……見つけた者だ!」

そうだ。

見つけたが正解だ。

「見つけた?」

「そう。神の見習いが隠していたんだが、見つけたんだ」

「神……」

うわっ、不思議そうな表情が一瞬で凶悪になった。

しかしそれも、当然と言えば当然か。

自分の子供を神の見習い達に盗まれたんだから。

あれ?

「神の見習い達が卵を盗んだ事を知っていたのか?」

その激しい嫌悪感はそのせいだよな?

いや、元々いがみ合っているような雰囲気だったから、条件反射のように嫌っている可能性もあるか。

どっちだろう?

「我が子を置いていた場所で、神力と光の魔力を感じた。だから予想は出来たが、神達に訊いても知らぬと言われた。我に似た魔力を探しても見つからなかったから、殺されたのかと思った。でも、どうしても諦められず、ずっと探していた。そうか、盗んだのは見習いどもか」

ずっと探していたのか、すごいな。

ん?

神達に訊いた?

「アイオン神。魔界から問い合わせがあったみたいだけど?」

アイオン神を見ると、気まずげに俺を見て首を横に振った。

フィオ神も首を横に振ったので、2柱は知らなかったらしい。

ちゃんとこの時に対応していれば、被害を少なく出来たのにな。

神達の話を聞いていると、横の繋がりが薄いんだよな。

「はぁ。とりあえず、神の問題は後でいいとして、今は結界が先だな」

結界を解除して、とりあえずケルベロスたちと「かか」をちゃんと対面させてあげたい。

今の会話で「かか」も冷静になっているし、俺の話をちゃんと聞いてくれるだろう。

「悪いんだが、結界を解除したいので、今居る場所から少し離れてもらいたい」

「はっ、結界? ここに結界があるのか?」

なぜか「かか」が戸惑った声を出して、前足を空中で移動させた。

結界を触っているようだけど、何だろう?

「本当に結界があるのか? 何も感じないが」

「かか」の言葉に頷く。

そうなんだよな。

本当にそこに結界があるのか、俺も分からない。

いつもの結界なら、普段は見えないし感じないが探したら結界の魔力を感知出来たのに。

今日に限って分からない。

「光の魔力で作った結界に触れたら、痛みが走るはずだが……」

「かか」が、前足の裏を見て首を捻っている。

魔界の者にとって光の魔力は、触れるだけで攻撃されるのか。

そういえば、龍たちは闇の魔力が毒になると言っていたな。

「そうだ」

今日から俺の魔力は、光も闇も持っているんだった。

世界に闇の魔力があふれ出したという事は、そういう事だよな。

結界が「かか」に攻撃しないのは、闇の魔力が混ざっているから?

感知できないのは、無意識に光の魔力だけで作った結界を探しているからとか?

正解なのかは分からないが、闇の魔力と光の魔力が混ざった魔力を探してみるか。

……駄目だ。

俺の周りは、2つの魔力が混ざったもので溢れかえっている。

なんでだろう。

光の魔力だけの時は、こんな風に感じた事は無かったのに。

2つの魔力が混ざったせいで、何かがおかしくなったのか?

「大丈夫か?」

「えっ?」

上空からの声に視線を向けると、じっと俺を見つめる「かか」が真上にいた。

さっきまで少し離れた場所にいたのに、移動してきたのか。

「ずっと何か考え込んでいるが、大丈夫か?」

「だ、だいじょうぶ」

思いがけない近さと心配そうな表情に、動揺してしまった。

「かか」って、もしかして優しいんだろうか?

「えっと……とりあえず結界を解除するから」

「それなんだが、問題ないのか?」

俺が首を傾げると、「かか」にため息を吐かれた。

あれ?

なんでため息?

「ここは、神の守る世界だろう? その世界に、魔界の者を引き入れて問題にならないのか? 勝手に来た我が言う事でもないが……」

神の守る世界?

「ここはロープと言う魔幸石が守る世界で神は関係ない。主導権もロープが持っている」

「はっ?」

見慣れてきたら、可愛く見える……事は流石に無いが、怖くはなくなるものだな。

それに「かか」はかなり優しい性格だと思う。

「だが、そこにあれがいる」

「かか」が嫌そうに見たのは、アイオン神とフィオ神。

「かか」の優しさは、神には欠片も向かないようだけど、それはしょうがない。

たぶんお互い様だ。

「気にする必要は無い。アイオン神は愚痴を言いによく来る……友人?」

「ちょっと、翔。なんで間が空くの? なんで疑問形?」

俺の言葉に不服を言うアイオン神。

でも、俺達の関係って何だろう。

考えた事は無かったからな。

「私と翔は、友人だ」

「かか」に言い切るアイオン神。

その態度に、隣にいたフィオ神が呆れた視線を向けている。

「あっちは?」

「フィオ神とは今日が初対面だから、ただの顔見知りだな」

「かか」がなんとも言えない表情で俺を見る。

なんで?

首を傾げて「かか」を見る。

「お前も神だろう?」

「断じて違う!」

速攻でした拒否に「かか」の目が少し見開く。

「違うのか? だが神力を……神力?」

俺の中にある力が原因か。

「神力に似ているけど、違うんだ。新しい力だ」

「……新しい力」

「そう」

「何者だ?」

「かか」の怪訝な表情に肩を竦める。

「それは、俺が知りたい。ちなみに俺も、卵を盗んだ見習い達の被害者なんだ」

「何をされた?」

「勇者召喚に巻き込まれた」

「なに? 神はまだあんな子供だましな事をしているのか?」

「かか」がアイオン神とフィオ神を見ると、2柱が頷く。

「馬鹿なのか?」

「馬鹿なんだよ」

「馬鹿なんだろうな」

「かか」の言葉に、疲れたように応えるアイオン神とフィオ神。

たぶん、すごい光景なんだろうな。

内容があれだけど。