作品タイトル不明
91.えっ、見えた?
神と魔界のケルベロスが、仲良く神をディスるのを見ていても何も解決しないよな。
「仲良くなったところ悪いが、そろそろ結界を解除してもいいか?」
「……別に仲が良くなったわけでは……」
「かか」が、複雑そうな表情でアイオン神たちを見る。
アイオン神たちも、似たような表情で「かか」を見ている。
同じ表情をするぐらいには、仲良しだと思うけどな。
まぁ、それは今は関係なくて、結界の解除が最優先だな。
そのためには、結界の魔力を感知できないと駄目なんだが……。
なんで急に魔力を感じられなくなったんだろう?
闇の魔力と混ざったから?
ありえるな。
でも、それがどうして感じられなくなったんだ?
「あ~、面倒くさいな」
光の魔力も闇の魔力も俺の魔力なんだから、ここはサービスして見えるようになれってんだ。
まぁ、ぐちぐち考えても仕方ない。
何か方法を見つけないと。
「よしっ! ……はっ?」
気合を入れて上空を見ると、上空に何かが見える。
視線で追うと、巨大な膜のような物が家と周辺を覆っているのが見えた。
「まさか結界? 見えるようになったのか?」
えっと、マジで?
なんで?
まさか、さっき俺が望んだから?
そんな事で見えるようになったのか?
「……見えなくなれ、とか?」
視界からスーッと消えていく膜。
あ~。
「………………結界見っけ!」
これは深く考えたら駄目だ。
今は、とりあえず結界を解除して親子の対面を果たそう。
そうそう、今はそれが重要だ。
他の事は、全て後回しだ。
「えっと見えるようにして、結界の解除」
上空に現れた膜が、新たに現れた魔力に包み込まれ消えていくのを見つめる。
時間にして10秒ほどだ。
「見えるのってすごいな。成功も失敗も一目で判断できる」
「うわっ」
あっ、しまった。
解除するとも言わずに、実行してしまった。
「かか」を見ると、少し体勢を崩していた。
「悪い。大丈夫か?」
「あぁ、急に足場が無くなったから驚いただけだ」
よかった。
「かか」を見ていると、ゆっくり地上に降りてくる。
そして、ケルベロスたちと体を寄せあった。
「ようやくだな」
フィオ神がどこか安堵した声で言うと、アイオン神も頷く。
「そうだな。本当に彼女には悪い事をしてしまった」
アイオン神が小さくため息を吐く。
ようやく1つ、完全に解決だな。
それにしても、子供の前では「かか」も顔が緩むんだな。
なんだかほっこりするな。
「主!」
「えっ?」
不意にアルトから声が掛かる。
感動の再会はもういいのだろうか?
まだ2分ぐらいなんだけど。
「主?」
「あぁ、悪い。どうした?」
「悪いな。この子達の魔力はどうなっているんだ?」
魔力?
ケルベロス達を見る。
まだ見える状態になっているので、ケルベロス達を守るように光の魔力と闇の魔力が体を覆っているのが見える。
「あっ、そうだった」
すっかり忘れてたけど、俺のせいでケルベロス達の中に光の魔力も存在しているんだった。
これってやばいのかな?
「主?」
「かか」が不思議そうに首を傾げる。
怖いけど、ちゃんと説明はしないとな。
「悪い『かか』。ケルベロス達の中には、闇の魔力以外に光の魔力もあるんだよ」
もしかして、それのせいで魔界に帰れないって事になったら、どうしようかな。
ここにはもちろん居てくれていい。
でも帰りたいってなったら、光の魔力を排除することになるのか?
たぶん、それは出来ると思う。
ただ、ケルベロス達に負担がありそうなんだよな。
だから、俺としてはしたくないんだけど……。
「光の魔力?」
「かか」がケルベロス達にぐっと顔を近づける。
その様子を窺うと、目の奥を覗き込んでいるように見える。
「主は不思議な存在だな」
「えっ?」
「我が子の中にある闇の魔力も異質だが、光の魔力までが異質で寛容だ」
「かか」の言葉に首を傾げる。
つまり、光の魔力が……どうなっているんだ?
いや、闇の魔力も異質って言ったな。
それに寛容?
「我が子は闇に属するものだ。なのに光の魔力が攻撃をしていない。しかもまるで守るように覆っている」
あっ、そういう事か。
「ありがとう」
「えっ?」
「かか」が俺を見てニヤッと笑う。
たぶん、普通に笑ってくれたんだろうけど、何かを企む笑顔に見える。
まぁ、どんどん見慣れてきているが。
「どういたしまして」
「主!」
あれ?
珍しい、カルトだ。
「どうした?」
「魔界に帰らないと駄目? ここにいちゃ駄目?」
「えっ? 好きなだけここに居て良いぞ」
「「「「えっ?」」」」
なんだそんな事か、別に居たいだけいればいい。
と言うか、どうして皆が驚いた表情をしているんだ?
「待て、翔」
あっ、もしかして神的にはアウトか?
でも、ここに居たいらしいし例外を作ってくれないかな。
「羨まし、じゃなくて。魔界の者をここに置くのはちょっと」
おい、今なにか漏れたぞ。
呆れた表情でアイオン神を見ると、視線を逸らされた。
フィオ神もあきれ顔だ。
「本当にいいの?」
「本当に良いのか?」
カルトとアルトが、嬉しそうな表情で訊いてくる。
それに笑って頷く。
「あぁ、好きなだけいたらいいよ」
光の魔力が彼らを攻撃しないなら問題はない。
アイオン神を見ると、少し不貞腐れている。
全く。
「アイオン神も好きな時に来たらいい」
今と大して変わらないと思うが。
「俺もいいか?」
フィオ神も?
別に、確認を取る必要もないと思うが。
「一つ目や仲間達に迷惑を掛けないなら。ご自由に」
「ありがとう」
フィオ神のお礼に、肩を竦める。
なんだか、変な時間だな。
「主!」
呼ばれたので見ると、4体の一つ目たちがいた。
「どうした?」
「宴です!」
はっ?
宴?
「親子がようやく出会えたんです。宴の準備をします!」
「えっ?」
返事をする前に言いたい事は言い終わったのか、颯爽と去る一つ目達。
とりあえず。
「『かか』も一緒にどうだ?」
親しくなるのに、いい機会だな。