軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

88.桜? マジ?

「花の蕾?」

エコの様子を見に来たんだが、昨日までなかった花の蕾が付いている。

それにも驚くが、見える範囲だけでも4種類の花の蕾がある。

ピンク、白、黄色、青。

それぞれ蕾の形も大きさも違う。

花には詳しくないから、どんな花が咲くのかは不明だが。

いや、この世界の花を知らないから、前の世界の花に詳しくても意味はないな。

ちがう、今は花の名前なんてどうでもいいんだ。

今重要なのは、名前より1本の木になぜ違う花が付くのか、それが問題だろう。

いや、昨日までなかったのにいきなり蕾が出た事の方が問題か?

……どうやら思っている以上に大混乱のようだ。

落ち着こう。

「花だな」

あっ、駄目だ。

全然落ち着けてない。

「花だな」

ん?

隣を見ると、親玉さんが俺と同じように花の蕾を見ていた。

丁度いい、訊こう。

「種類が異なる花がつくのは、エコにとって普通の事なのか?」

花がたった1日でここまで成長するのも不思議だが。

「エコはユグドラシルだ。ユグドラシルは花をつける木ではない」

エコは花をつけない木だったのか。

そうか。

……だったら俺が見ているあれはなんなんだ?

目をこする。

まぁ、無くなるわけないよな。

馬鹿な行動をしてしまった。

エコの木に、一番多く見られるのはピンクの蕾だ。

前の世界で毎年見た蕾に似ている。

春に満開になって花見で有名な花。

まぁ、桜なんだけど。

あれだけは、何の花か蕾でわかる。

毎年「あと少しで開花となりそうです」と、アップで蕾を見せてくれるからな。

花の名前に疎い俺でも知っている、馴染みのある花だ。

「桜なのかな? マジで?」

ただ、今は春ではない。

もう少ししたら、冬に入る時期だ。

なのに桜。

いや、エコに花が付くのがそもそもおかしいのだから、咲く時期の違いなんて些細な事なのかもしれない。

「この世界で桜が見られたらちょっと嬉しいかも」

毎年、家族で花見をしたからな。

仕事の先輩や後輩とも仕事終わりに夜桜を楽しんだものだ。

ちょっとぐらい違っても桜に似ていたら、皆と花見でもしようかな。

時期的につらいかな?

魔法があるから大丈夫かな。

他の花の蕾に視線を向ける。

白い大きな蕾。

黄色の小さい蕾。

青い白より大きい蕾。

あれ?

あの青い蕾、どこかで見たような気がする。

大きな青い蕾、何処で見たんだっけ?

「主、エコに問題は無いのか?」

親玉さんの心配そうな声に、ここに来た時にすぐに調べた魔力の流れをもう一度確認する。

2回目も異常はなし。

「魔力の流れに問題は無いから、大丈夫だろう」

花の蕾だけが異常で、それ以外はいつもと変わらないんだよな。

だから出来る事も無い。

他に何か昨日と違う事は……池にはいつも通り不思議な生き物が元気に泳いでいるな。

あっ、俺が見ている事に気付いたのか前足を振ってくれてる子がいる。

振り返しておこう。

あっ、他の子たちにも気付かれてしまった……ごめん、終了。

「そうだ」

光の話では、俺の闇の魔力が森に流れていると言っていた。

森に何か問題が起きていないか、確かめないと。

「親玉さん、森の中の見回りはいつしているんだ?」

「朝方に、シュリの子供たちと我の子供たち、そして精霊とトレント達が協力して行っている」

皆で協力してくれていたんだ。

知らなかった。

「主。森に流れている魔力に、似ているが異なる魔力が混じっていたが、あれは何だ?」

やはり気付いたか。

「俺から溢れている魔力に、俺が持っている闇の魔力が混じっているんだ。森に問題は起きていないか?」

闇の魔力が変わってから受ける感じは、光の魔力とほとんど同じ。

だから、それほど森に問題を起こすとは思わないんだが。

それでも元は闇の魔力だからな。

「闇の魔力?」

「そう」

「……森に問題は起きていないから安心していい」

よかった。

親玉さんがそう言うなら、大丈夫だな。

「あれが、闇の魔力。あれが? そうか、あれが」

親玉さんの小さな声に視線を向けると、混乱した様子で首を何度も傾げていた。

「さすが主だな」

その言葉で落ち着くのはどうなんだ?

最近、それで片付けられる事があったよな。

まぁ、どうしてそうなったのか本当は何が起きているのか説明出来ないからな。

仕方ないか。

難しい事は苦手だ。

「戻ろうか」

そろそろケルベロスたちの食事も終わっただろう。

「卵の中にいた時より、ケルベロスたちの魔力が柔らかくなったのも主の魔力のせいか?」

えっ?

ケルベロスたちの魔力?

「俺のせいと言うより、ケルベロスたちの中で闇の魔力の認識が変わったんだと思う」

「認識?」

「そう、認識。俺の中にある闇の魔力の事だけど、俺は周りの皆の情報から闇の魔力は危険な力だと思い込んでいた。だから、俺の中にあった闇の魔力はそれに応えて危険な力に変化した。だが、光の中の闇の魔力を見て、認識を変えたんだ。闇の魔力も皆を守る力になれると。すぐに闇の魔力は俺の思いに応えてくれて、闇の魔力は変化した。絶対とは言えないが、闇の魔力は持っている者の思いで変化する力なんだと思う」

「思い……神が闇の魔力を危険な力だと思い込ませたのか?」

そういう事なんだろうな。

「ただ、今の神がそれを覚えているかは不明だけどな」

俺の言葉に、首を傾げる親玉さん。

「アイオン神が前に言っていたんだ。遥か昔から存続する神は1人もいないと。徐々に心を病んでいって、誰も残らなかったらしい」

長く生きる事が、そんなにいい事でないのは神を見ていれば分かるよな。

ただ、俺はそっち側に行ってしまっているんだよな。

今、考えても仕方ないけど。

「神とはもっと偉大な存在だと思っていた」

それは俺も思っていた。

いや、元々は無神論者だから神について考えた事は無かったか。

あれ?

どうだったかな?

……まぁいいか。

今は、神も人と変わらないんだと思っている。

違うな。

神が人を作ったんだから、人が神に似たのか?

あれ?

世界の実の中に、人の情報があるんだっけ?

という事は、人を作ったのは世界の実?

いやいや、世界の実を作ったのは神なんだから、やっぱり神が人を作ったんだよな。

「ややこしい」

「主?」

「なんでもないよ」

あれ?

広場がすごく騒がしいな。

「何かあったのか?」

広場に近付くと、龍達だけでなくシュリやカレンまでいる。

コアやアイの家族も皆総出で何をしているんだ?

「ケルベロスだ」

親玉さんの視線を追うと、広場の真ん中でチャイと戦っているケルベロスたちがいた。

チャイの魔法は火や水。

ケルベロスは、黒い光?

「ケルベロスが押しているのか?」

「いや、チャイのあれは本気ではないな」

そうなの?

俺には本気に見えるけど?

あれで、違うの?

「チャイはコアに鍛え上げられて、かなり強いからな」

「へぇ」

コアに。

そういえばコアはかなり強いんだったな。

あっ、火柱だ。

ケルベロスも黒の火柱?

「「「「「あっ!」」」」」

あちゃ~。

ケルベロスの作った黒の火柱が、畑に少し被害を出してしまったみたいだな。

収穫が終わっているが、農業隊はそんな事で許してくれないもんな。

凄いな。

あれだけ盛り上がっていたのに、一瞬で静かになった。

「アルト、カルト、キルト、逃げるぞ」

「えっ? なんで?」

あぁ、ケルベロスたちはまだ農業隊の事を知らないからな。

あっ、農業隊が鍬を持って走って来たな。

と言うか、すごいスピードだ。

ケルベロスたちも、走ってくる農業隊の異常さに気付いたみたいだけど、あれは逃げられないな。

バリン。

あぁ、ケルベロスが張った結界が一瞬で粉々になった。

「あの、結界が粉々に……」

隣にいる親玉さんを見る。

あの結界って何のことだ?

ケルベロスが張った結界の事か?

もしかして、特別な結界だったんだろうか?

「お座り!」

農業隊の圧を含んだ声に、チャイとケルベロスがすぐにその場に座る。

背が伸びた、見事なお座りだ。

ん?

あれ?

広場を見渡す。

いつの間にか、チャイとケルベロスたちと俺と農業隊しかいない。

皆、逃げ足が速すぎないか?