軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

87.仮の名前だからな!

手の中の核を元に戻す。

無くしてなくて良かった。

バタバタ、バタバタ。

ん?

あれは、階段を下りる音か?

珍しいな、誰だろう?

バタン。

「主! 名前」

「主、名前は決まった?」

「……ふぁ」

おい、1匹はまだ寝てるんだが。

「おはよう」

「「おはよう」」

「……はよう」

挨拶より名前が気になるなんて……何だか、可愛いな。

「ごめん、今から考えるな」

どうしようかな。

ケルベロスか。

ベロちゃん、ベスちゃん、ベケちゃんとか?

くいっと引っ張られる感覚に視線を横に向けると、真剣な表情をした光が首を横に振っていた。

「えっ?」

光がなぜ首を振っているのか分からないんだが……。

あっ、もしかして心の声が口から出てた?

「声に出てた?」

しっかり頷く光に、顔が引きつる。

いや、あれはただちょっと思っただけで、本当につけるつもりは無いよ。

ほんの少しだけ、そう、ほんの少しだけ「いいんじゃないか?」と思ったけど、考え直したから。

「違うから。あれは、違うから」

すっごく疑われてる。

それに苦笑して、本気で名前を考える。

「名前を考えるのは難しいんだよな」

魔界っぽい名前って何だろう。

そもそも魔界っぽい名前なんてあるのか?

あっ、ルシファーとかサタンなら俺でも知っているな。

いや、そんな名前を付けるのは駄目だろう。

既にいるかもしれないし。

え~、ポチ、太郎、小太郎?

……光に白い目で見られる事間違いなしだ。

ダメダメ。

あ~、何がいいだろう……そうだ。

「キルト、アルト、カルト」

おっ、響きがいいんじゃないか?

ケルベロスたちを見ると、3匹の目がキラキラしている。

「気に入ったか?」

無言で頷く3匹。

光とそっと窺うと、ホッとした表情をしている。

どうやらセーフらしい。

良かった。

ポン。

「ん? どうした?」

ケルベロスの前足が、太ももに当てられている。

見ると3匹が首を傾げている。

あぁそうか、名前を決めただけじゃ駄目だよな。

それぞれに付けないと。

「えっと……」

3匹のケルベロスを見る。

そういえば、一番ぼーっとしている子だけ耳が根元から垂れてるな。

元気な子は、卵の中の時から真中のしっかりした子によく怒られていた。

それは、卵から出ても変わらないみたいだな。

真中の子は、間違いなく苦労性だな。

既に、他の2匹より眉間に皺が……これは、今は関係ないな。

「えっと、真中の子から、アルト、左の子がキルト、耳が垂れてる子がカルトだ」

それぞれに名前を付けると、3匹で顔を見合わせ始めた。

もしかして、違う名前がよかったのだろうか?

「俺がアルト?」

「俺がキルトだって」

「カルト! 俺、カルト!」

名前は嬉しいものなんだな。

いつもぼんやりしているカルトまでが興奮してる。

それにしても、3匹で名前を言い合う姿は、癒されるなぁ。

本当に可愛い。

「気に入ったか? と言っても仮の名前だからな」

待て、なんで驚いた顔を3匹でしているんだ?

「俺が付けた名前は仮だからな。ちゃんとした名前は『とと』と『かか』に付けて貰えよ」

なんか不服そうだけど、大丈夫か?

「分かった。仮だな」

ものすごく嫌そうだな。

でも、「とと」と「かか」を怒らせたくないから頼むぞ。

「キルト、アルト、カルト。特訓しよう!」

おい、さっそくか?

えっと、ガルムの子供たちか。

あっ、フェンリルの子供たちまでいる。

「「「特訓?」」」

ケルベロスたちの首を傾げる。

この3匹一緒に傾けるのが、なんというか笑っちゃうんだよな。

我慢するけど。

「ここにいる皆は強くなるために、特訓をしているんだよ。で、子供たちが一緒に強くなろうと誘っているわけだ。どうする? 参加するか? まぁ、その前にご飯だけどな」

俺の言葉に、じっと俺を見つめるケルベロスたち。

どうしたんだろう?

「いいのか? 我々は魔界のケルベロスだぞ?」

それは分かっているけど?

アルトの不安そうな声に首を傾げる。

もしかして闇の魔力が心配なんだろうか?

でも、ケルベロスの体から感じる闇の魔力はすごく優しいんだよな。

光の闇の魔力ほどではないが、温かさも感じる。

きっと大丈夫だと思う。

後は、本人たちの意識だけだろう。

「皆を傷つけたいか?」

アルトたちがそんな事をするとは思えないんだが。

「「「まさか!」」」

そうだろ?

「なら大丈夫だ。皆もケルベロスたちが闇の魔力を使う事を知っている。それでも一緒にと誘っているんだよ」

俺の言葉に誘いに来た子供たちが、何度も頷いている。

「分かった。よろしく」

「「よろしく」」

特訓で、みんなといい関係が築けたらいいな。

「あっ、そうだ。怪我にだけは気を付けてくれよ」

強めの結界を掛けるけど、最近はその結界をくぐり抜けるような攻撃を考え出したんだよな。

あれ、どうやっているんだろう。

たしか、魔力を一部歪ませるとか言っていたな。

「分かった。死なない程度に頑張る」

「待て。ちょっと俺たちの間に大きな溝があるようだ」

死なないって。

俺は怪我の話をしているんだよ。

死なないって、瀕死はOKって事か?

それとも、大げさに言っただけ?

「死なないってどれぐらい?」

「お腹に大きな穴が――」

「却下」

これは危険だ。

「切り傷や擦り傷は仕方ないけど、折るとか穴を開けるとかは駄目!」

結界を掛けても、なぜか擦り傷や切り傷を負うんだよな。

特訓だから問題ないと言われたけど、結界で防げてないのが問題だよな。

魔力で作る結界は、魔力を弄られたら弱いからな。

それに、衝撃で吹っ飛ぶのは結界では防げないし。

あれは、吹っ飛ばされた本人が耐えるしかないんだよな。

「「「……、……えっ?」」」

3匹ともが本気で分からないって顔している。

つまり魔界ではお腹に穴が開くのは普通の事なのか?

……恐ろしすぎる。

「特訓で、大けがを負わすのは駄目だよ」

「そうなのか」

アルトの困った表情に苦笑する。

ふわふわや飛びトカゲたちも最初の頃は困っていたよな。

力が強すぎて、加減が難しいと。

そういえば、最近は魔力の微調整が上手くなったな。

「アルトやキルト、カルトは闇の魔力を加減して攻撃するのは苦手か?」

あっ、昨日生まれたばかりで分かるわけないか。

「どうだろう?」

「得意だと思う!」

キルトは、自信家だな。

ただ、アルトは呆れかえっているけどな。

カルトは……考えてないな。

「まずは朝ごはんを食べて、それから庭で今の実力を見てみよう」

「「「うん」」」

素直だよな。

魔界のケルベロスは恐ろしいと聞いたから、どうなるかと思ったけど。

すごく素直だ。

「「「主」」」

「なんでもないよ。ゆっくり食べろよ」

「「「分かった」」」

さて、ケルベロスたちがご飯を食べている間に、いつもの見回りに行くか。

森に流れる魔力に、闇の魔力が混ざったみたいだからな。

エコの様子を確かめておかないと。