軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

86.言い方!

「ぐおっ」

腹に衝撃を感じて目を覚ます。

なんだ?

視線を下に向けると、お腹の上に何かが乗っている。

「なんだ?」

あれは、後ろ足か?

「そういえば、一緒に寝たんだった」

ベッドの足元を見ると、ケルベロスたちの3つの顔。

どの子も気持ちよさそうに寝ている。

「眠いなぁ」

昨日は、皆いい感じに酔いそして暴れ、一つ目たちに怒られて……いつも通りの盛り上がりだった。

コアたちもそうだが、蜘蛛たちもアリたちも一つ目たちに怒られるのは趣味なのだろうか?

毎回、毎回怒られているが原因は、

「あぁ、食べ物の争奪戦か」

一つ目たちが作る量を増やしてくれているんだが、それ以上に食べるからな。

「おはようございます」

「おはよう」

一つ目のリーダーは、起きてしばらくすると必ず来るよな。

すごく、仕事に忠実だよな。

もしかして、扉の前に待機……いや、ないない。

「一つ目たちは、ちゃんと休んでいるか?」

「もちろんです」

なんで嬉しそうなんだ?

まぁ、休んでいるみたいだし考え過ぎかな。

「心配してくれました!」

ん?

今、何か聞こえたような……。

着替えを止めて、一つ目を見る。

いつもと変わらない。

聞き間違いか。

「ケルベロスたちの名前は考えたのですか?」

「まだ、今日中に考えるつもりだ」

さすがに酔っている状態で名前を付けるのは駄目だろうと、今日考える事にしたんだよな。

そういえば、名前の話になった時に光がすごい顔をしていたな。

なんというか、心配と同情を混ぜたような。

あれは何だったんだろう?

「いい名前が思いつくといいですね」

「そうだな」

ベッドの上で寝ているケルベロスたちを見る。

まだ熟睡中だな。

それもそうか。

生まれたばかりなのに、夜中まで遊んでいたからな。

「起きたら教えてくれるか?」

頭上を見て、梁の上にいる孫アリたちに声を掛ける。

今日は孫アリたちか。

俺の部屋の梁の上は人気らしく、争奪戦らしい。

人気と言われると嬉しいが、争奪戦の内容を聞いて止めようか迷ってしまった。

親玉さんとシュリが、「問題ないです」と力強く言ったので止めなかったが、脚の1本や2本が簡単に吹っ飛ぶ争奪戦は本当に問題ないと言えるのだろうか?

農業隊にヒールの得意な子がいるらしく、すぐに元に戻るそうだが。

複雑だ。

「「「「「分かりました」」」」」

部屋を出て1階に降りる。

飲んだ次の日なのに、庭から声が聞こえる。

あれは、子供たちの声だな。

昨日は遅くまで起きていたのに、もう起きているのか。

元気だな。

リビングに入って庭に視線を向けると、走り回っている子供たちの姿が見えた。

少し寒くなってきたから、体調に気を付けないとな。

「主、おはよう」

ウサの元気な声に、笑顔で返すとウサの笑みが深くなる。

あれ?

「ウサ、ちょっとこっちに」

傍に寄ったウサと視線が合う。

……背が伸びたなぁ。

あっ、それじゃなくて。

じっとウサの瞳を見る。

「色が少し変わったのか?」

茶色だったはずの色が、緑? 黄色?

なぜか、茶色に他の色が混ざっているような……。

「はい。ある力を鍛えていたら色が変わりだして」

ん?

ある力を鍛えていたら?

「なんの力を鍛えたんだ?」

「ヒールです! 主みたいに、どんな怪我でも治したくて。頑張ってヒール力を高めました」

ウサを見ると、少し変わった色をした瞳がキラキラと俺を見つめている。

しかも、尻尾がぐるぐると回転中だ。

「そうか。すごいな」

ヒール力を高めた?

ウサの中で一番得意な魔法がヒールになったという事か?

あれ?

ウサはかなりの攻撃力を持っていたよな。

特訓で見かけたが、子アリを吹っ飛ばしていた。

「主が怪我をしたら、私がヒールを掛けますね」

「……ありがとう」

まぁ、いいか。

ヒールが得意なら、皆の怪我も治してくれるだろうし。

「皆が怪我をした時も、よろしくな」

俺がいたら俺がするが、いない時が多いからな。

「もちろん、皆は私の実験台なので!」

……怪我が治るなら……いいのか?

いやいや、よくないだろう。

「実験台と言うのは止めような」

俺の言葉に、きょとんした表情のウサ。

でもすぐに頷いてくれた。

「モルモットですね」

「それはもっと駄目!」

いや、どっちもどっちか?

「主、大丈夫? 用意できたけど……」

クウヒの心配そうな声に苦笑して、朝食を食べるためにいつもの席に座る。

「ウサ、とりあえず普通に治療してあげてください」

俺の言葉に頷くウサ。

実験台とかモルモットとか、ただの言葉の綾だ。

きっと。

用意されていた朝食をゆっくり食べる。

今日の予定は、特になし!

いや、違うな。

アイオン神に、ケルベロスが生まれた事を報告しないとな。

魔界にいる、「とと」と「かか」に連絡を取ってもらわないと。

あとはロープに、世界の状態の確認と核の周辺の呪い浄化方法を相談しようかな。

地震を待っているだけじゃなく、出来る事があるかもしれないからな。

あれ?

いつもよりやる気があるな、俺。

ケルベロスが生まれて、問題が1つ解決したからか?

「「「ごちそうさまでした」」」

そう言えば、光がいないな。

あっ!

闇の魔力を詰めた魔石が置いてあった棚を見る。

昨日使いきったのだからあるわけがないのだが。

「光の分を用意し忘れたな」

体調が悪くなっていたりしてないかな?

「光がどこにいるか知ってるか?」

俺の焦った様子に不思議そうなクウヒ。

「えっと、森に出てくるって。すぐに戻って来ると思うよ」

「そうか。ありがとう」

森か。

出かけているという事は、まだ問題は起きていないんだろうな。

今の間に、闇の魔力を再現しておこう。

予備の分も含めて10個ぐらいあればいいだろう。

「主、帰って来たよ」

「えっ?」

ウサが指す方を見ると、ウッドデッキに光の姿が見えた。

「ありがとう」

すぐに光の下へ向かう。

「光、おはよう」

光の魔力を探るが、不安定にはなっていないな。

あれ?

ここ数日より安定しているのか?

「おはよう」

光が持っていた黒板に文字を書いて見せてくれる。

それに頷いて光の様子を窺う。

いつもより、顔色が良いし機嫌がいいのか?

「ごめんな。闇の魔力を使い切っているのを忘れてたから、用意し忘れちゃって。今から再現してくるから」

光が俺の袖を掴むと、首を横に振る。

首を横に?

「用意しなくていいのか?」

頷く光に少し戸惑う。

闇の魔力を必要としなくなったんだろうか?

「えっと……ん?」

光が黒板に文字を書くと見せてくれた。

「風に闇の魔力を感じるから、自然と取り込めるようになった」

あぁ、なるほど。

……風に?

「やっちゃったわけか」

つまり、俺の溢れる力に闇の魔力が加わったという事だ。

周りにいる仲間たちの様子を確認する。

特に、体調が悪くなったという様子は無い。

「そういえば、ケルベロスに闇の魔力を渡すために核を使用したが、あの核はどうなったんだっけ?」

生まれた喜びですっかり存在を忘れていたな。

ベビーベッドは既に解体されて部屋に無いし。

一つ目たちだったら、知ってるかな?

「あっ、ちょうどいいところに」

一つ目が首を傾げて俺を見上げる。

「悪いな。ベビーベッドの上にあった核を知らないか?」

「あれは回収しようとしたら、消えたの。それからは、見てないの」

消えた?

「そうなんだ、ありがとう」

使い切って消滅したのか?

盗まれる事は、一つ目に限ってないだろうし。

もしかして、俺の中に勝手に戻ったとか?

鮮やかな青色をした核を思い出し、

「核、手の中へ」

手の中に感じる感触。

戻っていたのか。