軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

82.ケルベロスの卵

「主! 大変だ。卵が!」

今度は何だ?

呼びに来たコアと一緒に、慌ててリビングに戻る。

「えっ? 何?」

リビングに入ると、ケルベロスの卵が点滅していた。

呆然と点滅する光を見ていると、黒や赤、白に青と色々な色に点滅している。

なんだか賑やかだな。

「主、魔石が残り2つ。いや、最後の1つだ」

えっ?

少し前に新しい魔石に換えたばかりだぞ?

急いでケルベロスの卵の傍にある魔石を確認する。

「ケルベロスの卵から音がしたと思ったら、魔石から溢れる闇の魔力量が増えたのだ」

飛びトカゲの言う通り、魔石からすごい勢いで闇の魔力が出ていっている。

最後のこれも、すぐに空っぽになりそうだ。

「やばいな」

どうしていきなりこんな事に?

「もしかして、生まれるのか?」

卵を注意深く見るが、ヒビが入っている様子は無い。

違うのか?

「……今、のんびり考えている暇はないな」

闇の魔力を勢いよく溢れさせている魔石を見る。

おそらく、あと数分で空になってしまうだろう。

そう言えば、闇の魔力の供給が止まったらどうなるんだろう?

ケルベロスに何か問題が起こったり……最悪死んだり……。

止めるのは危険だな。

だが、闇の魔力を再現している時間は無い。

ここで闇の魔力を再現しながら、卵に直接渡してみるか?

「闇の魔力が暴走してしまったら……」

被害が大きすぎるだろうな。

何か別の方法を見つけないと。

安全に闇の魔力を渡す方法……結界を何重にも張れば……いや、ここは部屋の中だ結界を張っても被害が出るかもしれない。

ケルベロスの卵を外に出すか?

点滅を続けている卵を見る。

何が起こっているのか分からないのに、下手な事はしないほうがいいか。

他には……。

「俺の中の闇の魔力を……」

そうか、再現する必要はないんだ。

既に俺の中に闇の魔力があるのだから、これをケルベロスの卵に渡せばいい。

あ~でも、俺の中の闇の魔力はかなり少ない。

どうにか、闇の魔力を増やせないかな?

「魔力を作るのは核だよな」

核に、闇の魔力だけを作らせる事が出来ればいいんじゃないか?

でも、そんな事が出来るのか?

「主、そろそろ限界みたいだ」

飛びトカゲの声に魔石に視線を向ける。

魔石から溢れている闇の魔力に、勢いがなくなってきているのが分かった。

時間がない。

成功させるしかないな。

「核に……」

昨日、内側に入った後の広場の惨状を思い出す。

……別の方法を探そう。

ケルベロスの卵を見る。

色とりどりに点滅しているためか、中の様子は一切分からない。

生きてるよな?

そっと卵に手を当てると、じんわり伝わる温かさ。

それにホッとする。

「生きてる」

今、出来る事は……。

「核……直接……直接?」

あっ、そうだ。

昨日、核が外に出るか試したんだった。

1つだけ色が違ったけど、5個すべての核を外に出すことが出来た。

核を外に出して、闇の魔力を作るようにしてケルベロスの卵の傍に置けば。

……そんなに上手くいくかな?

いやいや、やるしかないんだ。

「核、手の中へ」

手の中には鮮やかな青色をした核。

簡単にできるのが良い事なのか、悪い事なのか。

……後者のような気がするんだが……今は気にしない事にしよう。

「核から溢れている力は……俺が持っている元々の魔力だな」

これが、光の魔力なんだろう。

この溢れている魔力を止めて、代わりに闇の魔力を作らせる。

両手で核を握り込む。

「闇の魔力を作れ」……「闇の魔力を作れ」

両手の中の核を見る。

「変化がないな」

俺の核じゃないからか?

……いや、これは俺の核だ。

誰かの物だったのかもしれないが、今は俺の中にあるのだから俺の核だ。

だから俺の思いに応えろ。

両手の中の核をギュッと握り、目を閉じる。

「闇の魔力だ!」

目を開け、両手の中の核を見る。

……駄目か。

変化を起こせなかった事に、項垂れる。

上手くいったら一番いい方法なのに。

困ったな。

他の方法が、全然思いつかない。

仕方ない、結界を何重にも張って闇の魔力を再現するしか――。

「主! 核から!」

飛びトカゲの声に、視線をあげる。

「あれ?」

手の中にある核から力が溢れ、ケルベロスの卵に吸い込まれていっている。

成功したのか?

不思議に思いながら核から溢れている魔力を調べる。

感じるのは、優しい暖かな闇の魔力。

「上手くいったらしい……」

ケルベロスの卵を見る。

傍にあったはずの魔石が無くなっている。

ぎりぎり間に合ったのかな?

小さく息を吐き出すと、手に持っていた核をケルベロスの卵の傍に……。

手から核を離して大丈夫なのか?

でも、ずっと持っているのもどれだけ時間が掛かるか分からないし。

少し不安を感じたが、そっとケルベロスの卵の傍に核を置く。

少しの間、核の様子を見るが問題なく闇の魔力をケルベロスの卵に送り続けている。

手から離したら、どうなるか不安だったが杞憂だったな。

「これで、安心だ」

それにしても、ケルベロスに何が起こっているんだ?

点滅の間に中が見えないかと、顔を卵に近付けるが何も見えない。

「主……」

視線を向けた先には飛びトカゲとコアの複雑そうな表情。

それに首を傾げる。

「どうした?」

「どうしたって、あれは核だよな」

コアが前足で指すのは、ケルベロスの卵の傍に置いた俺の核。

「あぁ、そうだ。昨日見せた核の1つだけど……」

それがどうしたんだ?

「核をこんなに自由に扱えるのは主ぐらいだろうな」

自由?

「そうだろうな。核を自由に取り出しているし、手から離すし、闇の魔力を作り出すし」

「まぁ、主だからな」

コアと飛びトカゲの会話を聞いていた周りの仲間たちが、納得するように頷くので苦笑してしまう。

「主」

そっと窺うような声に視線を向けると、ウサが心配そうな表情で俺を見ていた。

「どうした?」

「もう、大丈夫なの?」

ウサの視線がケルベロスの卵に向く。

「どうかな。出来る事はしたと思うけど……」

「無事に生まれて欲しいな」

「そうだな」

「生まれたら、一緒に遊ぶんだ」

ケルベロスと?

まぁ、話した時の印象からは、問題ないか。

「楽しみだな」

「うん。皆と仲良くしたいんだ」

皆って事は3匹……の頭とか。

一つの体に3つの頭。

1匹なのか3匹なのかどっちなんだろうな。

それに、3匹の意見がバラバラになったらどうするんだろう?

……早く、生まれないかな。

「すごく楽しみだ」