軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

79.闇の魔力はこういう力

慌てて光の傍による。

「大丈夫か? すごい顔色だぞ? 調子が悪いのか?」

俺の質問に、何度も首を横に振る光。

調子が悪いわけじゃないのか?

それにしてはひどい顔色だ。

「とりあえず、座ろう。それとも、横になった方がいいか?」

光の様子を見ながら、椅子とベッドを見比べる。

しんどいようなら、横になった方がいいよな?

ベッドの方へ行こうとすると、ギュッと腕を掴まれる。

視線を向けると、椅子の方を指していた。

心配だが、光の意思は固そうだ。

「座って。一つ目、悪いけどお茶を頼む」

俺たちの様子を窺っていた一つ目にお願いすると、すぐに光の前にお茶が出る。

「ありがとう」

光を見ると、俯いて何か思いつめているのが分かった。

何があったんだ?

もしかして、闇の魔力が何か影響しているのか?

負の影響はないように見えたが、そうじゃなかったという事か?

「闇の魔力のせいか?」

俺の言葉に悲壮な表情になる光。

えっ?

なんで?

「光?」

どうしよう。

こういう時は、どう声を掛けてらいいんだ?

俺は心の機微などには疎いんだよ!

えっと……とりあえず原因を訊かないと。

「光、なんでもいいから話してくれ」

……もう少し言い方ってものがあるだろうが、馬鹿か俺は。

情けなさにため息を吐きそうになるが、今は駄目だ。

しばらく待っていると、光が手に持っていた物に何かを書きだした。

それは、一つ目たちが光のために用意した黒板だ。

繰り返し使えると、光も喜んでいた。

「えっと」

書き終えたのか、黒板が俺の前に差し出される。

「闇の魔力は俺のせい?」

ん?

どういう意味だろう?

「俺」は光の事だよな、つまり「闇の魔力が光のせい?」と書いたのか。

……意味が分からない。

闇の魔力は魔石の中にあるが……。

「闇の魔力が魔石の中にあるのは光のせい?」と言いたいのか?

……はっ?

「光。光のせいではないから、気にするな」

意味は分からないが、「光のせい」という事は否定しないと駄目な気がする。

俺の言葉に、首を横に振って黒板に向かう光。

差し出された黒板には、

「主の魔力に闇の魔力が混ざったのは、俺に必要だからと闇の魔力を予定より多く作ったから」

……いやいや、なんでこんな考えになったんだ?

「光。俺の魔力に闇の魔力が混ざったのは、初めて闇の魔力を再現した時だ」

俺の言葉に首を横に振る光。

嘘だと思われたようだ。

「本当だ。初めての時に闇の魔力を感じたから」

あの時、ほんのわずかに違和感を覚えた。

あまりに一瞬の事だったから気のせいで片付けたが、きっとあれは闇の魔力が俺の中に生まれた時だ。

まぁ、証拠は無いし、実証は出来ないけど。

今から、あの時が闇の魔力が俺の中に生まれた瞬間だと決めた。

俺をじっと見つめる光が、戸惑った様子を見せる。

そして黒板に書いた文字を布で拭き出す。

「本当だからな」

再度力強く言い切ると、光の表情に少し安堵が浮かぶ。

良かった。

綺麗になった黒板に、光が何かを書いて見せてくれる。

「いつ気付いたの?」

えっと……。

「気付いたのは光がここに来る少し前なんだ。初めて闇の魔力を再現した時は、闇の魔力がちょっと暴走してしまって、俺の中に感じた違和感を覚える魔力を気にする余裕がなかった。その後色々あってすっかり忘れていたし」

光を見ると、驚いた表情をしている。

まぁ、気付いたのがちょっと前と言われたら驚くよな。

「俺の中にある闇の魔力をちゃんと把握しようと思って、探して見つける事は出来たんだが驚いたよ。再現の時に感じた、あの違和感を覚える魔力と同じ物を感じたから」

光の様子を窺う。

少しおかしな部分があるんだが……よしっ、大丈夫みたいだな。

それにしても、光は本当に闇の魔力を持っているんだよな?

「あのさ、光に訊きたい事があるんだけど、いいかな?」

俺の言葉に頷く光。

「光は、『光と闇の魔力』のどちらも持っているだろう?」

真剣な表情で俺の言葉を訊く光。

やっぱり光は優しくて、実直だ。

闇の魔力が持つという負の影響を、まったく受けた様子が見られない。

闇の魔力って、本当に負の影響を及ぼすのか?

「光の中で、闇の魔力をどう制御しているんだ?」

俺の言葉に首を傾げる光。

あれ?

意味が伝わらなかったのか?

「闇の魔力は、負の感情に影響すると言われているだろう? だが光からはそんな負の感情を一切感じない。だから何かしているのかと思って」

光が俺の言葉に頷くと、黒板に向かう。

「えっと、2つの魔力を別々に考えていない?」

光の書いた言葉に、今度は俺が首を傾げる。

別々に考えていないって、

「それは、光の中では『光の魔力』と『闇の魔力』を別の力だと思っていないという事か?」

頷く光に、少し驚いてしまう。

俺の中では、この2つの力は受ける印象がかなり異なる。

どう考えても同じだとは思えない。

「どうして別の力だと思わなかったんだ? 2つの力は全く違っただろう?」

光が不思議そうに首を傾げると黒板に文字を綴る。

「よく似た力だから、区別がつかない?」

あれ?

俺が受ける『闇の魔力』の印象と、光が受ける『闇の魔力』の印象が全く違う。

どうしてこんな事になるんだ?

「光の中で『闇の魔力』にマイナスイメージは無いのか?」

俺の言葉に頷く光。

黒板に文字を書くと、見せてくれた。

「力は仲間を助けるために使う。主がずっとそうしてきたから、俺もそうすると決めた。どんな力でも仲間を助けるためだけに使うと。それに、『闇の魔力』が俺の中にあると、少し前まで気付かなかった。知ったところで、使い方を変える必要はない。これまで通りでいいと、一つ目たちも言っていた」

あれ?

本人が『闇の魔力』の使い方を決めたら、『闇の魔力』もそれに従うって事か?

だったらなんで、俺の中にある『闇の魔力』はこんなに負の感情を俺に向けるんだ?

光を見る。

光は『闇の魔力』がどんなものなのか知る前に、使い方を決めた。

俺は、使う前に『闇の魔力』がどんなものなのか、仲間に訊いた。

仲間たちは、知識から『闇の魔力』がどんなものなのか教えてくれた。

俺の中で『闇の魔力』はこういう力だと……思い込んだ。

俺が闇の魔力は、負に影響する力だと決めつけたんだ。

「……まじ?」

いや、さすがにこの考えは間違っているか。

でも、光の話を聞く限り……。

光を見る。

「光、俺に光の持っている魔力を流してもらえないか?」

光の魔力を感じたら、何か分かるかもしれない。

手を光の前に差し出すと、少し戸惑った光だがギュッと握って少し魔力を流してくれた。

ゆっくり手から流れてくる魔力。

ぽかぽかしてとても気持ちのいい魔力だ。

……闇の魔力は?

「光? 今流してくれた魔力はどっちの魔力だ?」

光が黒板に書いている文字を追う。

「両方の魔力を流した……本当に?」

俺の言葉に頷く光。

「ごめん。もう一度流してほしい」

光から流れてくる魔力をじっと深く感じ取る。

あっ、確かに2種類の魔力だ。

でも……ほとんど違いが分からない。

「ほんとうに区別してないんだな。どちらの力も暖かい」

俺の言葉に嬉しそうに笑う光。

今日一番のいい笑顔に、こちらまで嬉しくなる。

「光のお陰で、問題が1つ解決しそうだ。本当にありがとう」

闇の魔力を、負の感情に影響を及ぼす魔力にするのは使う者の認識だ。

俺が闇の魔力の認識を変えれば、森に流れたとしても問題になる事は無い。

たぶん。