作品タイトル不明
77.死んだの?
ウッドデッキに集まっている仲間に、俺に何が起こっているのかを説明する。
森に流れた闇の魔力らしい物が、俺の魔力が暴走したために起こった事。
その事から、俺の中に闇の魔力があるかもしれない事。
また、内側に入った事で核が5個ある事が分かった事。
さすがにこの話をした時は、かなり騒然とした。
改めて、ありえない事なのだと理解した。
そして、森に影響が出る前に俺の魔力が溢れているのを止めたい事など。
「今はこれぐらいかな?」
何か他にもあったような気がするが、何だったかな。
「主」
コアの言葉に視線を向けると、なぜか睨まれた。
しかもコアの喉がグルルルとなっている。
これは、怒っているという事だよな?
でも、なんで?
「ヒールの事は言わないつもりか?」
ヒール?
あっ、忘れてた。
自分だけの問題だったから、あまり重要視してなかった。
「えっと。怪我をしてヒールを使ったんだが、傷は治るが新たに傷が出来る状態になっているんだ。原因は不明。闇の魔力と何か関係があるかもしれない」
話し終えて皆を見ると、かなり深刻な表情になっているのが分かる。
俺の手に負えないと協力を仰いだが、本当にこれでよかったんだろうか?
「悪いな。面倒を掛けて……」
もう少し、色々試してから相談してもよかったかもしれないな。
ただ、魔力や核について俺は何も知らないから出来る事は限られるけど。
「謝る必要など無い。主に頼られるのは嬉しい事だ」
親玉さんの言葉に、他の仲間たちが賛同してくれる。
それを見て、笑みが浮かぶ。
いい仲間に出会えてよかった。
「ありがとう」
色々解決したら、しっかりお礼をしないとな。
ワインと、それに合う食事でいいかな?
「主、質問があるのだが」
「なんだ?」
シュリの言葉に視線を向ける。
「5個の核は、全て動いていたのか?」
シュリに言葉に頷く。
「あぁ、5個すべての核から魔力が溢れたのを見た」
そう言えば……。
「核から溢れた魔力がぶつかった時に、ばちばちっと音を出して火花が散っていたな。それとばんと言う音がして大きく火花がはじけたような……あと、ヒビが入る時のようなビシビシッという音も聞いた気がする。……バリバリという音もしてたか?」
あれ?
俺はなんで、何も確かめずにあそこから出てきたんだろう?
いつもだったら、少しは確かめようとするよな?
……いや、しないか?
いや、するはずだ。
そうだ。
いつもなら、少しでも手がかりがあるか確かめるはずだ。
最後の音の正体なんて、確かめようともしなかった。
……恐怖を感じたから?
逃げかえるほどの恐怖だったか?
「主? どうしたの?」
水色の声に視線を向けると、心配そうに俺を見つめているのが分かる。
これ以上心配を掛けてどうする、しっかりしろ。
「大丈夫だ」
と言ったが、確実にいつもと考え方が違ったよな。
ほんの些細な事なんだが、気になる。
あっ、もしかして。
「訊きたいんだが、闇の魔力のせいで、考え方が変わる事はあるのか?」
考えられるのは、これしかない。
「あるよ。闇の魔力は負の要因に影響を及ぼすから。恐怖心を煽ったり、怒りを増幅したり、攻撃性が増したり。あと諦めを早めたりするな」
負の要因に影響か。
水色の言葉に思い当たる事がある。
内側で感じていた、異常な恐怖感。
これまでの事に対しての、異様な苛立ち。
他にも気付いていないだけで、あるかもしれないな。
気を付けないと。
「主、核の止め方だが」
飛びトカゲの言葉に、パッと視線を向ける。
止める方法があるなら、すぐに実践したい。
「核に停止の魔法を掛ける事で、止める事が出来るはずだ。ただ、一瞬止めるぐらいなら何も問題はなかったが、ずっと止めるとどういう影響が出るのかが分からない」
「飛びトカゲは止めた事があるのか?」
「ちょっと、興味本位で」
マジで?
へぇ、そんな事をしそうにないのに。
と言うか、
「魔力の空間で魔法が使えるのか? 俺はあの中で魔力を感じる事が出来なかったんだが」
魔力が溢れかえっている場所で魔力を感じないとか、不思議だよな。
「感じられなかった?」
飛びトカゲが首を傾げる。
まさか、これも普通じゃないのか?
「それは魔力が澄んでいるからだろう」
「あぁ、そのせいか」
毛糸玉の言葉に、飛びトカゲが納得したように頷く。
原因は、分かっているのか。
良かった。
「主の魔力は純度が高い。つまり澄んでいるんだ。理由は知らないが、綺麗すぎる魔力は、魔力が満ちている場所では感じられなくなるそうだ」
理由は分からないのは、ちょっと残念だな。
まぁでも、俺だけの事じゃないならそれでいいや。
「ただ、気になるのは核が5個もある事だな」
飛びトカゲの言葉に、周りにいる仲間たちが頷く。
あ~、やっぱりそれが問題になるか。
「主の話を聞く限り、どれも本物の核だろう。そして全てから魔力が溢れている。火花は、魔力同士が反発しているのかもしれない」
「反発か。確かに溢れた魔力がぶつかった時に火花が散っていた気がする」
「ん~、ただそれだとおかしいんだ」
おかしな事ばかりだけど……。
「核から溢れる魔力は自分に最も合う魔力のはず。この考えから行くと、核が増えても同じ魔力が溢れるはずで、反発するはずがないんだ」
自分に最も合う魔力が溢れているから、あの空間は落ち着けたのか。
「そう言えば、核はそれぞれ微妙に色が違ったな」
「色が?」
「あぁ、5個すべて少しずつ色が違った」
俺の言葉に飛びトカゲが唸る。
「色が違うという事は、異なる魔力が溢れている可能性が大きい気がする。そうだ主、火花が散った時に違和感や異変を感じたか?」
飛びトカゲの言葉に首を横に振る。
あの時は、恐怖にいつもの俺ではなかったが、火花が散った時に何か異変を感じる事は無かった。
「まったく」
「そうか。という事は、魔力同士がぶつかって火花が散るような状態でも、主には特に影響が無いという事だな」
そうなるのか?
「もしかしたら、ずっとその状態なのかもしれないな」
あぁ、それはあるな。
今回は核に触れようと内側に入ったから見て知ったけど、ずっと反発しあっていたかもしれないな。
「ん~……5個の異なる核……生まれた時に最も合う核が生まれる。その時に5個の核が生まれた? ……さすがに、う~ん」
あ~、すごく悩ませているよな。
何だか、申し訳ない気持ちになってきた。
「悪い、主。やはりどう考えても我にも分からん」
しばらくすると、飛びトカゲが神妙な表情で謝ってくるので慌てて首を横に振る。
「謝る必要はないから! 悩ませて悪かった」
皆が無理なら、やっぱりアイオン神か。
また、ロープに連絡を取ってもらわないとな。
「それにしても、なんで核が5個もあるんだろうな」
コアの言葉に、勇者召喚に巻き込まれた4人を思い出す。
「勇者召喚の被害者が、俺を含めて5人だったんだ」
「勇者召喚? あぁ、前に話してくれた主がこの世界に来る切っ掛けか」
コアの言葉に頷く。
「そう。その被害者の数が5人だったんだよ。他の4人は途中で消えたから、元に戻ったと思っていたんだが」
「つまり、彼らの核が主の中にあると?」
コアの言葉に、肩を竦める。
「それは俺には分からない。たまたま数が一緒になっただけかもしれないしな」
もしそうなら、すごい偶然だけどな。
「他人の核を、内側に入れても大丈夫なのか?」
俺の言葉に飛びトカゲもコアも、周りにいる仲間たちも首を傾げる。
分からないか。
「核を出して見比べたら、分かりやすいのにな」
傍にいた親蜘蛛さんの言葉に、視線を向ける。
「核を内側から出せるのか?」
「主、無理だ。心臓を出すようなものだぞ」
あぁ、それは無理だな。
言った親蜘蛛さんが、「ごめん」と言うのを笑って首を横に振る。
「でも、後から追加された他人の核なら出せたりしてな」
コアの言葉に確かにと頷く。
先ほど見た核の1個を思い出して、掌に乗るイメージを作る。
「核、手の中へ」
まぁ、出来るわけが……。
「出来た」
これって、やっぱり他人の核って事なのか?
えっ、本当にあの時の4人死んだの?