軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

75.思ったより重要だ

腕から流れる血を見る。

何が起こっているのか、理解出来ない。

傷は治った。

なのに、新たに傷が出来た。

「……」

どうしたらいいんだ?

「主! 主!」

えっ?

この声はコアか?

周りを見るが、また黒く焦げた結界に広場は覆われているため、コアの姿を確認できない。

「結界、解除」

ふわっと結界が消えていく。

「主! 大丈夫か?」

結界が消えた瞬間に、コアが傍に駆けてくる。

その姿を見たら、ホッとした。

「主、その腕は……」

コアが俺の腕を見て首を傾げている。

きっと、なぜ治さないのか不思議なのだろう。

「ちょっとな……お願いしていいか?」

コアに向かって血を流す腕を差し出す。

コアは戸惑った表情を見せたが、すぐにヒールを掛けてくれた。

俺が掛けた時と違い、傷が治った後に新たに傷が出来る事は無かった。

その事実を見て、息を吐き出す。

無意識に息を止めていたようだ。

「主? 大丈夫か?」

不安そうに顔を覗き込んでくるコア。

もしかしたら、何かを感じたのかもしれない。

でも、それは何だろう?

傷が治った腕をさする。

「コア、何があったか教えてくれ?」

知らなければ。

「そうだな。最初はとても静かだったのだ。だから安心していたのだが、急に主の魔力が膨れ上がったと思ったら、暴走を始めて結界内で暴れだした。だが、主の周りに浮いていた魔石が、結界内で暴れる魔力を吸収していたので、問題はなかった」

魔石を使った方法はうまくいったのか、良かった。

「だが魔石が、おそらく魔力を限界まで吸収したために力を失ったのだろうな。地面に落下した直後から、再び魔力が結界内で暴れだしたんだ。しばらくすると、結界内で何かが爆ぜる音がしそれから少しして結界が真っ黒になって中の様子が見られなくなった。それからは何があったのかは、分からない。ただ……」

コアが俺を見て、少し困ったような表情を見せた。

「見えなかったが、魔力の波動は感じた。その波動はいつもの主の魔力とは違った」

いつもの魔力と違う?

「いつもと違って、禍々しい恐怖を感じるような魔力だった」

コアの言葉に息を飲む。

それに思い当たる魔力がある。

ケルベロスや光に必要だと、再現した闇の魔力だ。

だが、あれは俺から切り離して再現しているから、俺の中にあるのはおかしい。

いや、俺の中の魔力を変化させているのだ。

影響が出てもおかしくないのかもしれない。

「主、あれは闇の魔力か?」

コアの言葉に、頷く。

「たぶん」

深呼吸をして、自分の胸に手を置き魔力に意識を向ける。

すぐに膨大な魔力を感じる事が出来た。

「何か、分かったか?」

コアの言葉に首を横に振る。

感じた魔力はいつもと変わらなかった。

だが、内側に入り込んだ時の核から放出された、あの魔力。

違和感を覚えたのは、闇の魔力に反応したのかもしれない。

「主、大丈夫か?」

コアが不安そうに俺を見る。

その視線に力なく笑う。

大丈夫と言えるといいんだが、ちょっと混乱している。

それになんだか、すごく疲れているような……。

「あっ」

俺の中の魔力が変われば、森に影響を及ぼしてしまうのでは?

しかも、今回は前の神力に似た力と違って、闇の魔力だ。

どんな影響を及ぼしてしまうのか、想像が出来ない。

「やばいな」

やはり早急に自分の魔力を掌握しないと。

だが、先ほどの核の状況を見る限り、すぐには無理そうだ。

なら、他の方法で影響を出さないようにするにはどうしたらいい?

「影響を及ぼす魔力が、森に流れないように……」

あっ俺の魔力が、溢れないようにしたらいいのか。

そうしたら、俺の力がどんなに変化しても影響は及ぼさない。

あっでも、俺の魔力が森に流れる事で森の環境がよくなったと聞いたような気がする。

止めたら駄目かな?

「コア。俺の魔力は、森にとってどんな役目があるんだ?」

「主の魔力は、森を循環させるのに必要となっている」

森の循環?

「循環が止まると、どうなるんだ?」

「そうだな、すぐに影響を受けるのは川だな。川には魔力を森に行き渡らせる役目がある。運ぶ魔力が無いなら川は必要ない。徐々に森から川が消えるだろう」

俺がこの世界に来た時は、森に川なんてほとんどなかったよな。

「森から魔力がどんどん減っていくと、自我を無くし暴れる魔物が急増するし、木々の中の魔力が減ると、次の世代が生まれなくなる。それがずっと続くと森全体が枯れていく。まぁ、ここまで来るにはかなりの年月がかかるが」

「魔力の循環って、大切なんだな」

「そうだな。我々で言うところの血のような物だ。供給されなければ、いずれ死んでいく」

なるほど、これは止められないな。

ん?

俺が来る前はどうだったんだ?

魔眼に侵略される前は、その循環を誰が行っていた?

今は、いないのか?

「俺が来る前は、誰がその循環を行っていたんだ?」

「ユグドラシルだ」

ユグドラシル?

コアの言葉に、池の傍に立っている木の魔物を思い出す。

確かあの木がそんな名前で呼ばれていたな。

俺の中ではエコなんだけど。

そう言えば、前にシュリが「森の芯の部分を司る存在だ」と言っていたな。

あれは魔力の循環の事を言ってたのか?

「エコ……ユグドラシルがいるなら、俺の魔力が循環しなくても大丈夫じゃないか?」

俺が来る前に戻るだけだ。

「いや、まだ駄目だ」

「えっ? まだ駄目ってどう言う……」

「ユグドラシルは大きくなったと言っても、まだまだ子供だ」

子供?

かなり巨木に成長しているが、まだ大きくなるって事か。

そう言えば、エコの元になった木の魔物。

あれは、今のエコよりかなり大きかったな。

「魔力の循環には、膨大な魔力が必要となる。今のユグドラシルでは魔力が全く足りない。だから、主の魔力が無くなれば、世界が影響を受けるだろう」

「そうか」

どう考えても止めるのは無理そうだな。

どうしようか。

「だが、少しの間なら止めても大丈夫だぞ」

えっ?

「主は毎日、過剰なまでに魔力を垂れ流してきた」

まぁ、勝手に溢れているけど問題ないと言われたから、放置してたし。

過剰だったのも、今初めて知ったぐらいだ。

「必要以上に魔力が流れていたから、森が調整して余分な魔力を森全体で蓄えているんだ。少しの間なら、その蓄えた魔力で循環が行われるはずだ」

毎日余分に垂れ流したのが、役に立つとは。

「どれくらいの期間だったら、止めても大丈夫だ?」

数日だけでも止める事が出来たら、その間に何とか解決策を探せるんだが。

「おそらく、3ヶ月ぐらいだな」

ん?

3ヵ月?

「そんなに?」

「あぁ。それぐらいなら、森に溜めた魔力とユグドラシルの魔力で何とかなるだろう」

良かった、それなら余裕がある。

「そう言えば主。核には触れる事が出来たのか?」

あっ、核に付いても色々訊きたい事があったんだった。

「それが無理だった」

「まさか、核が無かったのか? それとも何かほかに……」

すごい焦りようだな。

「核は見つけた。コア、核を幾つ持っている?」

「はっ? 1個だろう」

「1人、1個か?」

俺の質問に眉間に皺を寄せるコア。

「当たり前じゃないか」

当たり前か……ふっ。

「コア、俺の中には5個の核があったよ」

「……?」

無言で首を傾げるコア。

しばらく無言で見つめ合う。

「5個?」

不安そうに訊くコアに頷く。

「5個……見間違いじゃないのか?」

あの何もない空間で見間違いはないだろう。

「核があった空間は真っ白だった。見間違う事は無いだろう」

「そうだったな。あの空間では見間違いようがないな」

あっ、コアの核のある空間も真っ白なのか。

それは一緒なんだな。

同じところがあってよかった。