作品タイトル不明
74.魔力暴走と傷
「自分の魔力に包まれているからかな?」
この空間にいると、なんだか安心する。
魔力の暴走や、核が探せるかという不安はある。
でも、それ以上に安心感がある。
自分の魔力には、リラックス効果でもあるんだろうか?
まぁ、落ち着いて考えられるのはいい事だ。
不安な気持ちで考えると、余計な事を考えてしまうからな。
「さてそれよりも、どうやって核を探すかだな」
たぶん、魔力と核は別物だよな。
という事は、魔力の中にある異物を探したら、それが核だと思う。
……とりあえず、やってみるか。
えっと……魔力の中に違和感がある場所を探して……。
「あれ? えっ?」
魔力が感じられないんだけど、どうして?
いや、もう一度。
……駄目だ。
掴めそうで、掴めない。
こんな大量の魔力の中にいるのに?
いやもしかしたら、魔力の中にいるから感じられないのかも。
「マジか……」
しょうがない、他の方法で探すしかないよな。
……全く、何も思い浮かばない。
それに、さっきからずっと視界に入っている変化のない世界って、やる気を削ぐなぁ。
「気分を変えて、他の方向から考えてみるか」
ずっと同じことを考えていても、いいアイデアは思い浮かばないからな。
「何がいいかな……核……」
そう言えば、核の大きさはどれくらいなんだろう?
形は決まっていないと言っていた。
それぞれ、核を保有する者の力によって変わると。
俺の力は、かなり強い。
そうなると、核も大きくなるのかな?
まぁでも、大きくても、小さくてもこの視界では確認できないだろうな。
「あれ? 視界?」
魔力の色を自由自在に出来るんだったら、魔力を透明にしたらいいんじゃないか?
そうすれば、一目で核の場所を確認できるはずだ。
「なんだ、簡単じゃないか」
難しく考え過ぎたな。
「魔力の色を透明に……おぉ~」
成功した。
見事に魔力は透明になって、周りを見通せるようになった。
それはいい。
それはいいんだが……何だこの広さ。
「広すぎるだろ。それに……」
魔力を透明にしたからなのか、真っ白だ。
しかも遮るものが一切ないため、寒々しい印象を受ける。
「ここにずっといたら、気が狂いそう」
それにしても、何もない。
うん、本当に何にもない。
「核は?」
成功して喜んだのに、すぐに落とされるとは。
まさか、
「本当に核が無いとか言わないよな?」
頼むから、止めてくれよ。
「核は、あると思うんだけどな……」
でも、見回してもそれらしき物はない。
見えないのか?
ひょっとして、魔力を透明にした時に核も透明になったとか?
でも核と魔力は別物だよな?
俺は核を、魔力を溜めこんでいる器みたいな物だと思っているんだが……。
とりあえず、思いついた事を試していくか。
「核だけ青色に変化」
あっ!
本当に透明になっていたのか。
核は魔力なのか?
魔力の塊?
……まぁ、いいか。
今重要なのは、核が見つかったという事だ。
「それはそうと、核って1人1個じゃないんだな」
視線の先には、空中に浮かぶ青く光る5個の核。
まさか1人で5個とは。
もう少し詳しく、核について聞いておけばよかったな。
「さて、核に触れば魔力の状態が分かると」
空中に浮かぶ5個の核に近寄り、そのうちの1個に手を伸ばす。
「どの核も一緒だよな? 微妙に色は違うんだが……」
どの核に触ればいいかという話は無かった。
つまりどれでもいいって事だよな。
ちょっと不安があるとしたら、ロープもコアも核が5個もあると言っていなかった事だよな。
こんな重要な情報を言わないかな?
……5個あるのは俺だけだったりして……。
「まさかな」
慌てて首を横に振って、近くにある核に手を伸ばす。
ばちばちばちっ。
「っつ」
とっさに手を引っ込めるが、指先が痺れている。
見ると赤くなっているのが分かる。
……攻撃されるなんて聞いてないんだけど。
「触るって言ってたよな? 他の方法だったか?」
ロープとの会話で……「内側に意識をもっていって、直に触れればわかるよ」と言った。
うん。
確かにロープは「直に触れれば」と言った。
核を見る。
そっと手を伸ばす。
ばちばちばちっ。
「いてっ。これは流石に無理だろう」
ばちばちばちっ。
「えっ? 何もしてないのに!」
核に視線を向けると、5個それぞれがゆっくりと光り出す。
何が起こるのは分からないため、少し核から離れる。
「なんだか嫌な予感がする」
ばちばちっ。
ばちばちっ。
ばちばちっ。
目の前で5個の核から何かが溢れる。
たぶん魔力だろう。
核から溢れた魔力はそのまま、広がっていき他の核から出た魔力とぶつかって火花を散らす。
たぶん、これはおかしい。
こんな事が起こるなら、ロープもコアもちゃんと言ってくれたはずだ。
つまり、この現象は想定外。
「もしかしたら、5個の核があるのもおかしかったりして」
5個か。
何だろう、何かが気になる。
5、5……5人?
あっ、俺がこの世界に落ちた原因の勇者召喚。
確か俺を含めて5人だ。
まぁ、俺は巻き込まれたんだけど。
「1個は俺のだとして、4個は彼らの核なのか?」
いやいや、核が彼らの中から飛び出したら駄目だろう。
これは命に関わる大切な物なのに。
「亡くなったとか?」
あの時の彼らは、元の世界に無事に帰ったと思っていたんだけど、違うのか?
ばちばちっ。
ばちばちっ。
ばちばちっ……ばんっ!
「うわっ」
今までの小さな火花ではなく、いきなり目の前で大きく火花がはじけた。
とっさに後ろに下がったので、無事だったが正直怖い。
「戻ろう」
これは、何かがおかしい。
ピシピシッ。
「なんの音だ?」
音が聞こえた方を見ると、1個の核が白く点滅していた。
「絶対に、何かやばいよな」
爆発でもするのかと、核から離れて様子を窺う。
点滅がどんどん細かくなり、ふっと終わった。
「あれ? 終わったのか?」
しばらく点滅をしていた核を見るが、何かが起こる様子は無い。
もう大丈夫かな?
核に近付こうとすると、パッと一瞬だけ目も眩むほど光った。
バリバリバリッ。
「……出よう」
意識を外に向ける。
ふっと、体が浮く感じがすると焦げ臭いにおいがした。
「えっ?」
慌てて目を開けると、ヒビの入った黒い何かに広場が覆われていた。
あまりの光景に、呆然と立ちすくむ。
「何があったんだ?」
まさか、魔力の暴走が魔石に施した魔法では処理できなかったのか?
無意識に足が動くと、こつんと何かに当たった。
見ると魔石が5個、転がっている。
手に取ると、溢れ出しそうな魔力を感じられた。
「5個とも魔力が満タンなのか。で、この黒く焦げているのってまさか結界?」
結界は不安があったので5つ重ねて掛けておいた。
今、感じられる結界の数は4枚。
1枚の結界は、破られたようだ。
「重ね掛けしておいてよかった」
それにしても、焦げ臭い。
まさか、結界が焼けるとは。
「はぁ、俺の魔力が暴走した結果なんだよな」
俺の魔力は、こんなに暴力的だっただろうか?
それに核から溢れていたあの魔力、あれもどこか違和感を覚えた。
感じられないから、それが何か分からないが。
「そう言えば、魔力を感じられないのはあの中だったからだよな?」
胸の上に手を置いて魔力を探す。
良かった。
しっかり感じられる。
「あれ?」
腕を見ると、10㎝ほどの傷が出来ている事に気付く。
魔力の暴走で傷ついたのだろうか?
「ヒール」
まぁ、これぐらいなら問題ない。
「いたっ」
治した腕に一瞬痛みが走った。
見ると、10㎝ほどの傷が腕にある。
「えっ?」
失敗したのか?
「……この傷」
傷をよく見ると、先ほどと傷のつき方が違う事に気付く。
それに、血が流れている。
さっきの傷は既に血が止まっていた。
まるで目の前の傷は今できたような……。
「……ヒール」
目の前の傷がすっと消える。
が、すぐに新しい傷が腕に痛みと共に刻まれる。
「……なんだこれ」