作品タイトル不明
69.新しい浄化は消す?
見た目から全然違うじゃないか!
今までの呪いに掛かった魔物は、魔物に黒い影が纏わりついていた感じだった。
目の前の呪われた魔物は、魔物の姿がほとんど見えないほど黒い影に覆われている。
分かるのは、光る眼ぐらいだ。
その目も、濁っているけど。
確かに普通の呪いとは違うな。
「とりあえず、俺の浄化を掛けてみるよ」
魔物に向かって手を翳す。
「浄化」
ふっと魔物から黒い影が消える。
だが、親玉さんの言う通り、しばらくすると黒い影に魔物が覆われだした。
「あれ?」
何だろう?
黒い影で覆われる瞬間、何か見えたな。
「浄化」
もう一度、魔物に浄化を掛ける。
黒い影に覆われる瞬間を待ち、目を凝らす。
見間違いという事もあるが……。
「あっ!」
「どうした、主」
親玉さんが、呪われた魔物を警戒しながら俺に視線を向けた。
「今……」
一瞬だったが、間違いない。
呪いは、魔物の心臓のあたりから湧いて出た。
すごい勢いで黒い影が体を覆うから、一瞬しか見る事が出来ないが間違いない。
この呪いは、魔物の中から湧いている。
「呪いは、この魔物の中から出てくるみたいだ」
呪われた物を飲み込んだのか?
でも、俺の浄化だったらそれもすべて浄化できる。
他に、魔物から呪いが出る原因は……魔物そのものが呪い、とか?
ありえるのか?
「来るぞ!」
親玉さんの声に、視線を向けると子蜘蛛に向かって牙をむく呪われた魔物が見えた。
子蜘蛛はすぐに反撃をしてその場を離れる。
呪われた魔物は、子蜘蛛の攻撃で黒い影の一部と前足が吹き飛ぶ。
そう言えば、なぜ浄化なんてしているんだ?
親玉さんだったら、倒してしまった方が早いだろうに。
前足を失った呪われた魔物を見る。
あれ?
黒い影の下に……前足?
「もしかして、再生するのか?」
「そうなのだ。首を刎ねても、体を切り刻んでもすぐに元に戻る」
親玉さんの言葉に、息を飲む。
そんな化け物みたいな魔物をどうやって倒せば。
あぁ、だから浄化を試していたのか。
「火で焼いても、呪いが消してしまう」
マジで?
あれは、本当に呪いなのか?
「ガァァァ」
呪われた魔物の視線が俺に向く。
狙われたみたいだな。
やばい、足がすくむ。
切っても焼いても駄目。
残された方法は……閉じ込める?
でも、それは解決とは言わないな。
閉じ込めても、呪いが溢れてきそうだし。
「主、下がって。危険だ」
親玉さんが、呪われた魔物の視線から俺を見えなくする。
「何か方法が……」
どうする?
どんな攻撃も、効かない魔物を相手に。
そう言えば、子蜘蛛が前足を切った時は全く怯んでいなかったが、浄化の時は動きを止めていたな。
浄化の方が切ったりするより効いている、と考えていいのか?
「浄化をもっと強くする?」
いや、その方法は既に毛糸玉とふわふわが試したと言っていた。
試すだけ無駄だな。
「呪いに浄化……」
今の浄化は、外から呪いに対応しているんだよな。
あの魔物が纏っている呪いは、魔物の中からだった。
浄化のイメージを少し変更してみようか。
「ガァァァ」
「主!」
しまった。
考えに集中し過ぎた。
目の前に迫る呪われた魔物をとっさに右に避ける。
次の瞬間、親玉さんの攻撃で呪われた魔物が青い炎に包まれる。
「ガガッ」
青い炎の中で暴れ回る呪われた魔物。
やはり浄化の時のように、動きが止まらない。
「大丈夫か?」
後ろからコアの声が聞こえたが、さすがに振り返る余裕はない。
「大丈夫だ」
そうだ!
浄化をして呪いが消えた瞬間に攻撃をしたら、効くんじゃないか?
「親玉さん。呪いが解けた瞬間に攻撃するのは?」
「試した。確かに効いたが、呪いに覆われると再生してしまう」
なんて厄介な魔物なんだ!
あっ、親玉さんの炎が消えた。
呪いが消したように見えたな。
やはり、あの呪いが厄介だな。
どうにかしないと。
この際、原因はどうでもいい。
魔物だという事も忘れよう。
目の前の、呪いを消す事だけをイメージする。
呪いがどこから来るのかも、考えるのは止めよう。
あの魔物が、呪いそのものなんだ。
浄化の光で、呪いを完全に消滅させるイメージを作る……再生させないように、何も残さない。
本当に完全に消滅させる。
出来た!
これが失敗したら、お手上げだな。
頼むから、成功してくれよ。
掌を呪われた魔物に向ける。
完全に消滅する瞬間を、もう一度イメージし、
「全て浄化」
言葉を言い切った瞬間、ごっそりと魔力が消えた感覚がした。
それに少し驚くが、すぐに戻るので気にせず呪われた魔物を見る。
「ガァガァガァ」
黒い影に全身を覆われた魔物が、光に包まれると動きを止めて苦しそうに鳴き叫んだ。
やはり、浄化は効果があるようだ。
このまま、上手くいってくれたらいいんだが。
光が黒い影をどんどん消していくと、魔物が姿を見せた。
黒い影が消えても光は消えず、光の中に白い光の粒が現れると魔物の中へと消えていく。
「成功なのか失敗なのか、どっちだ?」
あの白い光の粒は何なんだ?
自分で魔法を作っているが、あんなイメージは作ってないぞ。
「あっ、消えていく」
頭上から驚いた声が聞こえる。
確かに目の前の魔物の体がどんどん光になって消えていく。
でも、気は抜けない。
また再生をしてしまうかもしれない。
「うわっ」
目の前の光が、一段と白く光る。
腕で目をかばいながら、薄目で周りを確認する。
仲間たちに被害はない。
森にも、異常は見られない。
「消えた!」
コアの声に、呪われた魔物がいた場所を見るが、そこに魔物の姿は無かった。
消滅をイメージしたので、成功なんだろう。
「よかった」
あの、白い光の粒が何なのかは分からないが、呪われた魔物は消えた。
それにしても、1匹の魔物を浄化するには魔力の消費量が大きかった。
俺はすぐに回復するので問題ないが、他の者たちには大変かもしれない。
「ガァァァ」
魔物の声が遠くに聞こえる。
そう言えば、ここにいた魔物だけじゃなかったな。
とりあえず、仲間が怪我をする前にすべての魔物を浄化させよう。
「コア! 一番近い魔物はどこだ?」
俺が探るより、耳が良いコアたちに訊いた方が早い。
「こちらだ」
コアが走りだしたので後を追う。
しばらくすると、呪いに掛かった魔物の姿を確認できた。
「ガァァァ」
黒い影の間から、牙をむいて威嚇しているのがわかる。
手を翳し、
「全てを浄化!」
先ほどと同じように、呪われた魔物が光に包まれていく。
しばらくすると、眩い光と共に魔物が消える。
「よしっ、後はどこだ?」
「疲れた……でも、今ので終わりだよな」
俺の言葉に、コアがスリッと足にすり寄る。
「さすが主、我々が手を焼いていた魔物を一瞬で消すとは」
コアの頭を撫でる。
そう言ってもらえるのは嬉しいが、普通の浄化が効かなかった原因を突き止めてないんだよな。
力で無理やり、なかった事にした感じだ。
悪い方法ではないけど、原因がわかっていない以上は次を防げない。
魔物自体を消滅させてしまったから、調べる事も出来ないし。
何か、あの呪われていた魔物を知る事は出来ないかな。
そうだ、
「あの魔物は、この辺りに急に出現したのか?」
俺の言葉に、コアが首を傾げる。
どの辺りから来たのかわかれば、何か分かるかもしれない。
「我々は、子蜘蛛に呼ばれてここに来た。あの魔物がどこから来たのかは分からない」
子蜘蛛か。
頭上を見上げると、木々の間から沢山の子蜘蛛が見えた。
「……コア、どの子だ?」
「さぁ? 普通の子蜘蛛だった」
普通?
あぁ、糸を操れない子蜘蛛の事か。
ん?
糸を操る子蜘蛛の方が、少ないんだが……。