作品タイトル不明
61.未完成なのか?
防御魔法?
何だ、すっごい石頭なのかと思っていた。
それにしても力か……。
「ギフトのせいか?」
「いや、それだけでここまで強くなることは無い。本当は、新しい力を生み出すことも無いはずなんだが……」
俺の言葉に、首を傾げるアイオン神。
飛びトカゲも、首を傾げている。
「主は、全てが規格外だな」
飛びトカゲの言葉に、大きなため息を吐いてしまう。
「嬉しくない」
それにしても、どこまで強くなるんだ?
この世界に与えている影響を考えると、かなり危険だな。
アイオン神に、この力が発散できる場所を提供してもらうか。
そう言えば、彼女には貸しがあったな。
この世界に住む者たちの為に使おうと思っていたけど、世界の存続の為に使おうかな。
「アイオン神、1年もたたずに力が急激に増える事は異常だ。何か予想できる事は無いのか?」
飛びトカゲがアイオン神を見ると、彼女も何か考えている様子。
思い当たる事でもあるのだろうか?
「ちょっと待ってくれ。何かがあったような気がするんだ。かなり昔の事みたいで……」
記憶の整理でキーワード分けをするが、そうとう慎重にしないと思い出すのに時間が掛かりそうだな。
それに、寿命が長くなるとキーワードだけで分けるのは、限界がありそうだ。
それよりなんだか嫌な感じがするな。
何だろう?
「あっ。世界だ」
アイオン神が、何か思い出したのかパッと俺を見る。
どうやら今回の事には答えがあるらしい。
「この世界が問題かもしれない」
……ずっと、この世界は問題を抱えているが?
飛びトカゲもアイオン神の答えに呆れた感じだ。
それを見たアイオン神が、小さく首を横に振った。
「ちょっと待て。この問題が、大問題なんだ」
……それは、そうだろうな。
「この世界が、完成していない時に起こる現象のようなんだ」
……なんだろう。
今、とてつもなく不穏な言葉を聞いた気がする。
飛びトカゲを見ると、戸惑っている様子が窺えた。
周りで静観していたふわふわやコアたちもちょっと落ち着きが無い。
という事は、聞き間違いじゃないのか。
「この世界は未完成なのか?」
そう言えば、ロープがこの世界に問題があると気にしていた。
調べてもらっているが、この事かもしれないな。
……深呼吸して落ち着こう。
「今は、分からない。だが、守り神の力が急激に増えて亡くなった事例を思い出した」
ん?
亡くなったって言った?
「その原因となったのが、その亡くなった神たちの力が足りずに世界が完成していなかったからなんだ」
亡くなったで間違いないのか……。
前はギフトによる力の暴走で、今回は世界が完成してないことによる力の暴走。
俺って死ぬ運命なのか?
「調べてみないと分からないが、この世界ももしかしたら……と言うか、見習いが世界を完成させられるわけが無いよな? 上位神でも、訓練を積んでようやく成功させることが出来るのに……。どんなに優秀でも、見習いは見習いだ」
「「……」」
アイオン神の言葉に、少し騒がしかったリビングが静寂に包まれる。
言われてみれば、その通りだな。
神でも失敗するみたいなんだから、見習いが世界を完成させられるわけがない。
ただ、今更の疑問だよな。
それにこの世界を調べて問題ないと判断してたよな?
飛びトカゲが小さく舌打ちした。
すごい、龍って舌打ち出来るんだ。
あ~、それにしてもやっぱり面倒くさい事になったな。
さっきの嫌な感じは、正解だったな。
当たっても嬉しくないが……。
「気付かなかったのか?」
怒りを纏った飛びトカゲの声が耳に届く。
ここまで怒りを見せるのは初めてだな。
目つきが怖い! 気配が恐ろしい!
「全く。世界は完成するものだという、思い込みがあった。失敗は本当に数個なんだ。 数多(あまた) ある成功に対してたった数個。それに世界そのものが、未完成であるという事を隠してしまうから通常の調査では発覚しないし」
通常の調査では分からないのか。
そっか。
なら、仕方ないか。
かなりレアなケースみたいだし。
それに、起きた事は今更何を言っても仕方ない。
「アイオン神。この世界が完成していないとして、解決策は? 修復は出来るのか?」
話を静かに聞いていたコアが、心配そうな表情で訊く。
俺もそれは気になる。
「えっと……」
アイオン神が視線を泳がせる。
これは解決策を知らない?
もしくは知っているが、あまりいい方法ではない。
どちらだ?
「完成していない世界を修復するのは、ほぼ無理なようだ。成功例は無い」
成功したことが無いのか。
万事休すだな。
「すまん」
アイオン神が、頭を下げる。
彼女が悪いわけではないが……ちょっと気持ちが……。
「本当に無いのか?」
コアの尻尾が苛立つように振られる。
「世界を作るには、2つの力が必要なんだ。神は神力しか扱えない。だから世界の実がそれを補っている。修復するには、この2つ目の力が必要になるが、神はその力を作り出せない」
2つの力?
「魔力では無理なのか?」
水色が急に会話に入ってくる。
どうやら我慢が出来なくなったようだ。
今までは静かに、こちらを窺っていたのに。
「神力に相反する力が必要となる。そして、世界を作るにしても修復するにしても、バランスが大切なんだ。少しでもバランスを崩すと世界は崩壊する。その全てをフォローしてくれていたのが、世界の実だ。あれが無いと、バランスを保つ事は出来ないだろう」
神力と相反する力って、魔神力の事か?
神が使う力が神力で魔神が使う力が魔神力だったよな。
魔神力の再現は無理だな。
再現できるのは、この体で実際に感じた事がある力だけだ。
「おい、アイオン神」
飛びトカゲの、いつもより低い声が聞こえた。
「な、なんだ」
「魔界と早急に連絡を取れ」
飛びトカゲの一段と低くなった地を這うような声に、アイオン神がびくりと震える。
もしかして、あれが「脅威を感じた時の本能が起こす行動」なのかな?
本能が感じる脅威か。
飛びトカゲを見る。
う~ん、全く怖くない。
俺は、そうとうな力を持っているんだな。
「はっ?」
「『はっ?』では無い。魔神力が必要なのだったら、魔神に頭を下げて、貰ってこい」
うわ~、飛びトカゲがすごい事を言っている。
今まで、関係を持ちたくないから駄々をこねて先送りにしてきたのに、力を貰ってこいとか。
ほら、アイオン神の顔色が悪くなったぞ。
「出来ないのか? ここまで主に迷惑を掛けて?」
「いや、そうだな。魔神に協力を仰げば……。だが、協力をしてくれるだろうか?」
そんな事を、言われても……。
「今までの事を考えると、希望が薄いというか……」
関わらないようにしてきただけじゃないようだな。
何をしたんだか。
「とりあえず、何とか連絡を取る」
神側のように、関わる事を嫌がっていたら無理だろうな。
それに、話が出来たとしても力を貰えるかどうか。
無理なら見せてくれるだけでも。
魔神力を感じられれば、貰わなくても再現できる……はず。
だが、闇の魔力であの暴走。
ぎりぎり制御は出来たが、魔神力だと制御できないかもしれない。
やはり貰った方が安全か?
「戻るよ。すぐに動くから」
アイオン神が、慌てて帰っていくのを見送る。
この光景は何度目だろうか?
飛びトカゲたちの怒りはまだ収まらないのか、リビングの雰囲気が怖い。
一つ目が新しいお茶を入れてくれたので、一口飲む。
「美味しい」
落ち着く。
あれ?
修復が無理だった場合、この世界は最終的にどうなるんだ?
……訊き忘れた。
「主は落ち着いているな」
コアが不思議そうに俺を見つめる。
それに肩を竦める。
落ち着いてはいない。
気を抜けば、アイオン神に怒りをぶつけそうだった。
「いい加減にしてくれ」と。
でもこの怒りを、外に出したら危険だという事が何となくわかった。
どう、危険なのかは分からないが。
きっと力が強い事と関係があるんだろう。