作品タイトル不明
第132話 能力レベル9
『固有スキル【 標的捕捉(ロックオン) 】を獲得しました』
『固有スキル【必中解体】を獲得しました。ただし、【 標的捕捉(ロックオン) 】をした上で、解体結果が記録されている個体に限りスキルの行使が可能となります』
「待って待って待って! 情報量が多い!」
念願の能力レベルアップ! しかもこのタイミングで!
固有スキルもなんか二つセットみたいなものを獲得したみたいだけど……えええ!? とりあえず使ってみるしかないよね?
逸る気持ちを落ち着けるために、私はふうっと息を吐いた。
集中……!
私はギュッと小型ナイフを手に握り締め、地上から飛び上がってこちらの様子を窺っていた個体に狙いを定めた。
「【 標的捕捉(ロックオン) 】」
スキル名を呟くと、ピピッとシューティングゲームでよく見るような照準を合わせるサークルが現れた。サークルは私が狙いを定めていたグリフォンを捉えている。
グリフォンの解体結果は記録しているし、【 標的捕捉(ロックオン) 】もした。
これでもう一つの新しいスキルの発動条件は揃っているはず。
「【必中解体】!」
私はスキル名を叫びながら思い切り小型ナイフを投げた。
滞空している上に、私の射程範囲外の位置にいたグリフォンには普通だったら到底届かないはず。でも、私が投げたナイフはまっすぐにグリフォンに向かっていき、チカチカ点滅していたサークルのど真ん中に突き刺さった。
「ギェェェェッ!?」
そのままナイフは目にも止まらぬ速さで動き、あっという間にグリフォンを解体してしまった。
「すご……」
これなら、狙いさえ定まればピィちゃんの結界の刃を逃れたグリフォンも仕留められる!
「またとんでもねえスキルを手に入れたようだな!」
「よし、あと少し踏ん張れよ!」
「はいっ!」
私とピィちゃんを守るように戦ってくれていたオーウェンさんとドルドさんに檄を飛ばされ、気持ちを奮い立たせる。
みんなで背を預け合いながら、懸命にグリフォンに対峙し続ける。
ナイフを振るい、投げてはまた切りつける。ただひたすらに、夢中で戦い続けた。
日が傾き、西陽が草原をオレンジ色に染め始めた。
息も切れ切れになり、腕がだるくなってきた頃、ようやく地上に降りたグリフォンの最後の一体が地面に沈んだ。
「大丈夫か」
「マリウッツさん! マリウッツさんこそ、お怪我はありませんか?」
「問題ない」
ふらつく足を踏み締めて、肩で息を整えていると、マリウッツさんが私たちの下へ戻ってきた。
流石のマリウッツさんも額に汗を滲ませていて、疲労の色が見える。いつもは傷ひとつ負わず着衣の乱れもなく帰ってくるけれど、流石に冒険者服も随分とボロボロになっている。
「さて、このまま引き返してくれりゃあいいんだが」
苦い笑みを浮かべるオーウェンさんの視線を追うように空を見上げる。
まだ上空には、倒した数と同数ほどのグリフォンがこちらの様子を窺っていた。
私もマリウッツさんも、オーウェンさんやドルドさんだって疲労困憊だ。
ピィちゃんもずっと結界を張ってくれているのでぐったりしている。
それに、もうすぐ日が暮れる。暗闇の中戦うのは危険が増す。
これ以上の戦闘は難しい。誰もがそう思っているはず。
お願いだから、もう降りてこないで……!
そうは思っていても、神様は非情なもので――
再び鋭い雄叫びがして、上空に控えていた群れが一斉に草原に降りてきた。
続々と地上に降り立ち、激しく威嚇してくるグリフォンたち。
「チィッ。流石に数が多過ぎる」
ピィちゃんが気合いで張ってくれている結界の中で、それぞれが武器を握り直すけれど、果たしてどこまでやれるのか……
心が挫けそうになった時、頭上からアルフレッドさんの声が聞こえた。
「皆さん! お待たせしました!」
「おう! やっと来たか!」
オーウェンさんの表情に安堵の色が浮かぶ。
門塔を見上げると、塔の上で大きく手を振るアルフレッドさんの手の中がキラリと光った。何かを握っている?
「下がってください!」
アルフレッドさんが大きく腕を振りかぶり、何かを放り投げた。
綺麗な弧を描きながらクルクル回転していたそれは、突然カッと眩い光を放った。
そして突如地面に巨大な魔法陣が浮かび上がり、青白い光を放ち始めた。
「えっ、これって……!」
見覚えがある淡い光を前に、思わず息を呑む。
私は、この光が何かを知っている。
巨大な魔法陣は光の柱となり、続いて大地を揺るがすほどの雄叫びが聞こえた。