軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第131話 乱戦

「なんだその顔は。お前が話の続きをしろと言ったのだろう」

え、いや! そんなこと言いましたっけ!?

突然のことに混乱する私を置いて、マリウッツさんは尚も言葉を続ける。

「まあいい、仕切り直すぞ。俺はサチが好きだ。何事にも常に前向きに全力で、俺の世界を明るく照らしてくれる。そんなサチに心から惹かれている。サチの返事を聞くまでは死ねないし、なにがなんでも生き延びてみせる」

マリウッツさんはそう言うと、私に返事をする間も与えずに軽やかに門塔から飛び降りてしまった。

「えっ!? ちょっと!?」

一緒に戦うって言ったの聞いてた!?

慌てて覗き込むも、マリウッツさんは刀身に電光を纏ってグリフォンの群れに向かっていってしまった。

「ああっ、もうっ!」

急いで後を追うために階段の方を振り向こうとして、足が空を切った。

ん? 体が浮いている?

「ワハハ! マリウッツの野郎、先走りやがって。仕方がねえ、あんな覚悟を見せられちゃあ俺たちも黙っちゃいられねえ。腹括れ! 一緒に戦うぞ」

「えっ、えっ、ぎゃあああああっ!」

「ピピッ!?」

どうやら私はオーウェンさんによって小脇に抱えられてしまったようで、状況が理解できずに戸惑っているうちにオーウェンさんは大きな身体に見合わぬ軽やかな動きで門塔から飛び降りた。

ピィちゃんが慌てて後を追ってきてくれる。

高い! 怖い!! 助けて!!!

「おいおい……ったく、俺は階段を使うぞ」

頭上からドルドさんの呆れた声が聞こえてきた気がするけど、眼前に迫る地面を前に私はもう絶叫することしかできない。

ズゥゥゥンと地響きを鳴らし、オーウェンさんは地面に降り立った。

着地した地面がビシビシとひび割れている。口から心臓が飛び出るかと思った。どんな強靭な足腰をしているわけ!?

ドッドッドッドッと心臓が大抗議している。

「さて、サチよ。あまりマリウッツに近づくと奴の技の邪魔になるだろう。流石にあの数だ。討ち漏らしたグリフォンが城門を襲う可能性も高い。俺たちはここで門を守りながらアイツの手が回らない個体を狙うぞ」

「は、はい!」

「ピィィッ!」

ピィちゃんも気合い十分で、シュッシュと拳を打ち出している。

バチバチと閃光を弾けさせながらマリウッツさんが駆ける軌跡がグリフォンを翻弄している。オーウェンさんの言う通り、流石の数なので数頭のグリフォンが私たちに気づいてけたたましく鳴きながら襲いかかってきた。

「俺が凌いでいる間にサクッと解体しちまえ!」

「ええっ!? そんな簡単に……頑張ります!」

オーウェンさんは私と同じぐらいの大きさの大剣を片手に構え、飛びかかってきたグリフォンの鋭い爪を受け止めた。

「今だ!」

「か、【解体】っ!」

私はオーウェンさんの合図で前脚を振り上げたグリフォンの懐に飛び込み、【解体】を発動した。グリフォンなんて初めて触れる魔物だから、まずはしっかりと解体して解体結果を記録しなくては。

「えいっ!」

グリフォンの胸元の光に向かってナイフを突き立てる。そのままナイフと光の筋道に導かれるように手を動かし、翼、前脚、後ろ足、爪と解体していく。

シュッとナイフを振り抜き、急いで後ろに下がる。素材に解体されたグリフォンがバラバラと地面に崩れ落ちた。

『解体結果の記録により、以降、同種個体の【解体再現】が可能となります』

「よしっ!」

私が解体している間、ピィちゃんが周囲に結界を張ってくれていたおかげで落ち着いて解体することができた。これで【解体再現】を【付与】して戦うことができる。

とはいえ、グリフォンは空を飛ぶ。身体が大きい割に動きも俊敏で、翼で風を巻き上げるので小型ナイフを投擲してもその身体を捉えることは難しい。

「おらよっと!」

オーウェンさんは射程圏内に入ったグリフォンの首を着実に切り落としていく。アルフレッドさんの大斧もすごいけど、片手で易々と大剣を振り回すオーウェンさんはバケモノでは?

「サチ! 余所見は厳禁だぞ!」

「ひゃっ! ドルドさん!」

オーウェンさんの勢いに呑まれているうちに、グリフォンが迫ってきていたようで、遅れて門塔から降りてきたドルドさんが大きな出刃包丁で迎撃してくれた。

「ふんっ!」

「【解体再現】!」

ドルドさんが前脚を切り落としてくれたので、その隙にスパパパァンとグリフォンを解体した。

「ったくよう。生きた魔物を相手にするのは何年振りだあ? 特別手当は弾んでもらうぜ?」

ドルドさんは不敵な笑みを浮かべながら出刃包丁についた血を振り払った。

「ほら、サチ。こいつを使え」

「わっ、ありがとうございます!」

ドルドさんが差し出してくれたのは、左右三本ずつ小型ナイフが刺さったベルトだった。いつの間にこんなものを用意していたのか。

ありがたく受け取り装着する。このナイフを投擲できたらいいんだけど、警戒心を強めたグリフォンに当てられる気がしない。

着実に一体ずつ、向かってきたグリフォンをオーウェンさんとドルドさんが迎え撃ち、その隙に私が解体する。それしか手はなさそうだ。

「ピュアァァッ!!」

このままじゃキリがないと焦りが見え始めた頃、結界で私たちを守ってくれていたピィちゃんが叫んだ。

驚く私たちの前に、幾つもの淡い水色の球体が現れた。ピィちゃんの結界だ。

でも、どうしてこんなサイズの結界を?

不思議に思いつつも何か考えがあるのだろうとピィちゃんを信じて見守る。

ピィちゃんは気合いを入れるように声を上げながら、サッカーボールぐらいのサイズの結界を薄く、極限まで薄く伸ばし――放った。

スパパパパッと結界の刃がグリフォンの足元目掛けて降り注ぐ。

「ギャァァァァァァッ!!」

「ピィちゃんすごい……!」

ピィちゃんの攻撃は致命傷にならずとも、グリフォンの動きを鈍らせるには十分だった。

「【解体再現】を――【付与】!」

今のうちに! と思って両手に小型ナイフを構えて二本同時に【付与】を施した。

そして身体の捻りを利用して、続けて二本のナイフを投げつけた。

ピィちゃんの結界の刃で足を負傷して動きが鈍くなっていたグリフォンに、私が投げたナイフが突き刺さる。【解体再現】が発動して瞬きする間に素材に解体されていく。

「さすがだな」

「こりゃあすげえ!」

私とピィちゃんのコンビネーションに、オーウェンさんとドルドさんも称賛の声を上げてくれる。

よし、この勢いでどんどんグリフォンを解体してやる!

「ピィちゃん、お願い!」

「ピュアッ!」

ピィちゃんの結界の刃でグリフォンの足止めをし、私が【解体再現】を【付与】してグリフォンを仕留めていく。投げたナイフはピィちゃんが結界を張りながら回収してくれるので、受け取ってどんどん投げていく。

少し離れたところでは、マリウッツさんも順調かつ確実にグリフォンを倒している姿が目に入る。

私も頑張らなきゃ……!

マリウッツさんの勇姿に励まされながら気合いを入れるも、グリフォンの中にはすでにピィちゃんの結界の刃を見切って回避してくる個体も現れ始めた。

こちらの様子を窺い、無闇矢鱈と突進してくることもしない。私たちが消耗するのを待っているような、そんな気さえしてくる。

上空にはまだまだグリフォンが控えているし、膠着状態が続くのは望ましくないように思える。でも、私のナイフは誰かの補助があって初めてグリフォンに届く。

せめて、補助なしでもナイフで狙いを定めることができれば――

そう思った時、実に久しぶりな声が頭の中に響いた。

『レベルアップに必要な経験値を獲得しました。能力レベル9にアップします』