軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第130話 死亡フラグは許さない

南の城門に到着すると、すでに門は閉じられていて、門番と伝令役のギルド職員の皆さんが門塔から外の様子を窺っていた。

私たちも急いで門塔に登り、外の様子を確認させてもらう。

グリフォンは続々と草原に降り立っていて、門から見える位置を彷徨っている。

その数は優に二十を超えている。その上、それ以上の数が上空に控えている。

「多いな」

オーウェンさんの声も重々しい。

王都の街は結界で守られているとはいえ、万が一この数のグリフォンが街中に入り込んでしまったら――そんな恐ろしい想像をしてしまい、ぶるりと身体が震える。

しばし呆然としていると、夢中でグリウォンを観察していた伝令役の一人が双眼鏡を手に、遠くを確認しようとしたのかグッと身を乗り出した。

「おいっ! 危ない!」

「え、あっ、うわああっ!」

ぐらりと体勢を崩して、伝令役の人の身体が門塔の外へと傾いていく。

咄嗟にオーウェンさんが手を伸ばしたその時、グリフォンがけたたましい鳴き声を上げて伝令役の人目掛けて勢いよく突っ込んできた。

バチィン!!

「ギャィィィンッ」

思わず目を閉じたけれど、突っ込んできたグリフォンは王都を守る結界に弾かれた。

「チッ、【斬波】!」

グリフォンの身体が痺れたようにバチバチッと帯電している隙に、マリウッツさんが目にも止まらぬ速さで剣を抜いて斬撃波を放った。

「ギャァァァァァァッ!!」

マリウッツさんが放った斬撃は見事グリフォンの首を刎ね飛ばし、グリフォンは鋭い叫び声をあげて落ちていった。

「よっ、と……さすがだな」

オーウェンさんがなんとか伝令役の人の足を掴んでいたので、慌てて私とドルドさんも引き上げを手伝う。

下を覗くと、獲物が落ちてくるのを待つかのようにグリフォンが鋭い嘴を開いてこちらを見上げていた。城門の外に落ちていたらと思うとゾッとする。

首を落とされ息絶えた仲間を前に、グリフォンが喉を反らしてあちこちで慟哭している。何十頭ものグリフォンの叫び声は、ビリビリと肌や鼓膜を揺らす。仲間を殺されて怒りを滲ませているのか。

「まずいな。こちらを敵と認識したらしい。一斉に突っ込んでこられちゃあ、王都を守る結界もいつまで保つか……」

「すっ、すみません……! 自分の不注意で……!」

伝令役の人が真っ青な顔で震えながら頭を下げた。

オーウェンさんはポンッ、とその肩を叩いて声をかけた。

「誰のせいでもねえよ。どうせ奴らは討伐しなくちゃならねえ。さて、どうするか……間に合えばいいんだが」

オーウェンさんが決断を下すより早く、マリウッツさんが門塔に足をかけた。

「悠長にしていられない。上空にいるグリフォンが降りてくる前に、まずは地上の個体を一掃する」

「マリウッツさん!」

今にも一人で飛び出しそうなマリウッツさんを思わず呼び止めてしまった。

このまま一人で行かせると、もう二度と会えないような、そんな嫌な予感がしたから。

マリウッツさんは静かにこちらを振り返った。風に濃紺の髪が靡き、アメジスト色の瞳が真っ直ぐにこちらを見据える。

「……俺が無事に戻ったら、さきほどの話の続きを聞いてくれ。安心しろ。サチがいるこの街は俺が死んでも守る。結界に守られているとはいえ、この場は危険だ。サチはドルドとギルドへ戻って解体準備をして待っていろ」

マリウッツさんは諭すようにそう言った。

私は安全なところに退避して待っていろって…………何なの、それ。

「……嫌です!! 死亡フラグ立てにいかないでください!! 死んでもだなんて言わないでください!! マリウッツさんの死と引き換えに生き延びても、嬉しくありません。それなら私も戦います。私を置いて死ぬなんて許しません。自分の身は――」

私はキッとマリウッツさんを睨みつけたまま、シャラ、とオリハルコンのナイフを抜いて構えた。

「自分で守りますから!」

私の剣幕を前に、マリウッツさんは圧倒された様子で目を見開いている。

ちょっと言い過ぎた気もするけど、マリウッツさん一人で行かせるぐらいなら私も戦うんだから!

そう意気込んではみたものの、駄目だと一喝されるのではなかろうか。内心ちょっとビビりながらも、迎撃の構えでマリウッツさんの言葉を待つ。

「……ふはっ。くっ、くく」

「……え? 笑いすぎでは?」

返ってきたのは、覚悟していたお叱りの言葉ではなく、今まで聞いたこともないような笑い声だった。

マリウッツさんは何がおかしいのか、肩を震わせて笑っている。

オーウェンさんとドルドさんもこんな状況だけどポカンと口を開けている。

え、そんなに笑うところ?

こっちは怒ってるし、真剣なんですけど。

ムスッと唇を尖らせていると、ひとしきり笑い終えたマリウッツさんが目尻の涙を拭いながらこちらに向き合った。どこか吹っ切れたようなスッキリとした表情をしている。

「俺は、お前のそういうところが好きだ」

「えっ」