軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

路地裏の錬金術師−1

魔導士の資格を取った次の日。

アレックスは宿屋から拠点となる家へ移る為に、荷物を全て持って移動する。

ピュセーマと共に家の前に立つ。

一人で店を経営して王都で活動することを考えると、楽しみである事と共に、緊張と不安が込み上げてくる。

アレックスの緊張を感じ取ったのか、ピュセーマが軽く突いて体を寄せてきた。

一人ではない事を思い出して、ピュセーマを撫でながら感謝の言葉をかける。

家の中に入ると自室を決める。

一階は店にしようと思っているので、二階部分の一室を自分の部屋として使うことに決めた。

部屋に魔法鞄の中からベッドや掛け布団を取り出す。

寝る事はできるようになった。

次はピュセーマの巣を設置しようと三階に上がる。

まずは穴を塞いでいる板を取り外して、ピュセーマを部屋の中に誘導する。

ピュセーマに巣の場所が何処がいいか尋ねると、部屋の中を動き回り始めた。

少しして居心地のいい場所を見つけたようだ。

場所が決まったところで一度離れて貰って、魔法鞄からピュセーマの巣を取り出す。巣はアレックスとピュセーマが共同で作った魔道具でピュセーマのお気に入りだ。

ピュセーマは巣に収まると、胸毛を膨らましてグーグーと鳴き始めた。

胸毛を膨らませる時は眠くなる時なので、上機嫌な上に眠たくなったと理解した。アレックスはピュセーマを少し撫でて、優しく声をかけてから部屋を出る。

「おやすみ、ピュセーマ」

「グーグー」

二階に降りてきたアレックスは、ピュセーマは慣れない宿屋で疲れている様子なので、今日は家の事と、周辺の住民へ挨拶だけしておく事に決めた。

まず家の中で何処でどう錬金術をするか間取りを見て考える事にした。

火を使うなら厨房が便利そうだが、厨房で錬金術の作業をすると料理ができなくなってしまう。

炉などの設備も追加することを考えると、厨房としては広いが錬金術をするには手狭だと感じ始めた。

一階に降りたアレックスは厨房と元食堂を行き来して、食堂だった部分が広すぎると思い始めた。

厨房の壁を壊して、厨房の部屋自体を広げる案が良さそうだ。

部屋を拡張するとなると建材が大量にいる。

一度間取りだけ考えて作業に必要な木材や釘などがどの程度必要か考えてみる。

必要な木材を計算していると一人でやるには大変な事に気づき、お金に余裕があるので大工を雇っても良いかもしれないと考え始めた。

間取りを考えていると喉が渇いた事に気づく。

水を飲もうとして家にあった井戸の事を思い出したが、水質をまだ調べていないので今日は飲む事ができそうにない。

ジョシュと井戸の事を話した時に、王都には上下水道が通っていて、水を汲める場所が各地にあると言っていたことを思い出す。

水が汲める場所なら近所の人がいるかもしれないし、挨拶がてら近所を散策してみる事にした。

家を出ると、水汲み場を探して歩き回り始める。

初めての散策なので水汲み場を探すのに時間が掛かるかと思ったが、幸いな事に水汲み場は比較的近く、しかも人が集まっていたのですぐに分かった。

アレックスは集まっている人に声をかけて、引っ越して来たと伝えた後に簡単に自己紹介をした。

アレックスの挨拶が終わると、年配の女性が声をかけてきた。

「こんな場所に引っ越して来たって事は戦闘系のギルド員かい?」

「いえ? ギルド員ではありますが、戦闘系ではないです」

「違うのかい? それは珍しいね」

「この地区はギルド員が多いんですか?」

年配の女性は丁寧にこの場所について教えてくれた。

元々は普通の地区だったが、再開発地区に指定されると土地や建物が買い取られていき、一時的に人は減っていったが、どうしても場所を移動できない人が出たことで、再開発が止まってしまった。

再開発が止まってしまうと空き家の持ち主が困ってしまった。

いつ出て行かないといけないか分からない土地に住みたがる人は少なく、代わりに家賃を安くしていくと、地方から出てきた戦闘系のギルド員たちが一時的な借家として住むようになっていく。

再開発が一向に進まないのでギルド員たちは人伝に家を売買する事で、この地区に定住するようになったのだと年配の女性が言う。

さらに年配の女性は小話まで教えてくれる。

土地や建物の売買は禁止されていないが、再開発地区に指定されている為あまり褒められたことではない。

なのでギルド員たちはこの地区を路地裏と隠語で呼ぶのだと教えてくれた。

「路地裏ですか」

「昔は普通の地区だったけど、今じゃ本当の意味で路地裏さ。他の地区と比べて活気がないし、随分と道幅が狭いからね」

「確かに少し狭いかも?」

アレックスは王都に来てからピュセーマに乗って移動するか、宿で勉強をするかの二択だった為、道が狭いと言われて道を確認してやっと、道が狭いとアレックスは理解できた。

ギルド員でないのなら、何のためにこんな場所に引っ越して来たのかと尋ねられる。

錬金術師の資格を取ったので、決められた活動期間を過ごすために店をこの地区に作ったと説明すると、大きな武器を持ったギルド員であろう男性が声をかけて来た。

男性が錬金術師が何故このような場所で店を出すのかと、不思議と不審が混じったかのような顔で質問してくる。

錬金術師は普通もっと大通りに店を構えるようなので当然の質問だろう。

アレックスは王都での活動期間が終わったら故郷に帰る予定である事や、国の仕事を受けて可能な限り活動期間を減らす予定だと男性に伝えた。

男性は説明に納得してくれたようで、疑って悪かったと謝られた後に、機会があれば店に顔を出すと言ってくれた。

アレックスは気にしないと伝える。

店の住所を聞かれたので、教えたかったが住所が分からない事に気づく。

分かってもらえるか心配だったが、元宿屋だった建物だと説明した。

元宿屋は有名な建物だったのか、水汲み場に居る人たちはアレックスの説明で理解したようで、皆口々にあそこかと納得した様子で声に出している。

店の話をしていると改築したい事を思い出して、建材と大工を雇う伝手がないかと尋ねてみた。

すると年配の女性が、うちは大工だと言う。

運が良いと思って、年配の女性に依頼の仕方を尋ねてみた。

「ギルドで依頼しても良いけれど、うちに直接依頼すれば多少値引きするよ」

「一度相談させて欲しいです。店の場所を聞いても良いですか?」

「それならきちんと挨拶をしておかないとね。ロブ工務店のスーザンだよ。棟梁は旦那で、私は表にあまり出ないが細工なんかの裏方をしてるよ」

それからスーザンは水汲み場から近くにある家を指差して、あそこが工房兼自宅だと教えてくれた。

見える範囲に工房があるのに驚く。

だが考えてみれば水を汲みにくるのだから近いのは当然かと納得する。

スーザンの旦那が今日は仕事で不在なので、予定を決めればスーザンと共に尋ねて来てくれると言う。アレックスは予定は特に無いのでいつでも良いとスーザンに伝えた。

スーザンは少し考えてから、急だが明日でも構わないかと尋ねて来た。

現状だと錬金術をする事ができないので明日で問題ないと答えた。

アレックスの返答を聞いたスーザンが笑顔で了承した後に、明日の朝に向かうと言った。

スーザンと依頼の話を終えた後は、水汲み場にいる人たちから近い市場や、錬金術の素材が買えそうな場所まで教わっていく。