軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

飛ぶ魔石を捕獲せよ!

俺と楓は空飛ぶ魔石の様子を観察する。

久我が戯れてくれているので、じっくりと習性を見ることができて助かる。

空を飛べる上に、その場でのホバリングもできる。そして一目散に逃げるのではなく、久我をおちょくるように届かない距離を維持してひらりひらりと舞っている。

「意思があるんでしょうか?」

「まさかだけど、動物と同じようなものになってるのかもしれないな。動物の中にも、自分が絶対に逃げ切れる自信があるものは必要以上に離れないからな。ほら、近づくと飛び去るんじゃなく走ってちょっとだけ離れる鳥見たことあるだろ?」

「あ、いますね。道路をちょこちょこっとかわいく走る子。たしかになかなか飛びません、ちょっと距離取るだけです」

「これだけ離れればとろくさい人間になんて捕まらないっていう自信がある距離を維持する動物はいるんだ。多分あの飛ぶ魔石もそのタイプ」

「なるほど確かにそんな動きですね。もう手が届きそうなほどまで近づけるけど、どうやっても捕まりそうな可能性は見えません」

つまり、そこを逆手に取れば良いわけだ。

捕まらない自信がある距離までは近づけるんだから、そこから予想外のことをしてやればいい。

しかし大事なのはミスらないことだ。

一度手の内がばれたら、相手が安全だと判断する距離も更新される。そうなれば捕まえるのは不可能になる。

「一発で決めなきゃいけないんですね」

「そういうこと。だが逆に一発はチャンスがあるともいえる」

「わあ……ポジティブですね、九重さん。私もその考え方見習いたいです。それで、その一回のチャンスに何をしましょうか。私のマホウじゃ、リーチは伸びませんし。九重さんがよく使ってる杖で魔力の矢をうちますか?」

あれなら遠距離攻撃ができるのはいい。

だがしかし、点で攻撃する矢で飛び回る相手を捉えるのは難しいだろう。

「そう、点だと難しい。だが面でなら、大幅に捕らえやすくなる」

「面ですか?」

ちょうどいいものがあるんだ。

この前使ったやつの残りが。

「久我! 素手じゃ無理だ!」

「くぅ……こいつ俺のことおちょくってやがる!」

苛立ちを隠さない顔で、久我が振り返った。

「石相手にムキにならなくてもいいだろ。あとは任せろ」

「素手じゃ無理だって言うけど、何かあるのか?」

「忘れたか? この前のこと。捕まえるのにぴったりのものがあるじゃないか」

「…………そいつがあったか!」

俺が魔法の鞄から取り出したのは、ネットランチャー。

そうこの間、無法者との戦いで使った、網を射出する道具だ。

これなら射程距離もスピードもあり、しかも広範囲に広がるから、命中もさせられる。

まさに捕獲のために作られたような道具……いや、まさにじゃなくて捕獲のために作られた道具そのものか。

刺激しないようゆっくりと久我の側まで歩いていくが、しかしそんな配慮も必要なかったかもしれない。久我と同じく俺のことも歯牙にもかけず飛ぶ魔石は、逃げることもなくひらひらホバリングしている。

甘く見てるな? だがその油断が運の尽きだ。

「くらえ!」

俺はネットランチャーを発射した。

ボンという音とともに勢いよく網が射出される。

それまでゆっくりホバリングしていた飛魔石は急に速度を増して離れようとしたが、時すでに遅し。

勢いよく射出される網の速度は早く、さらに広がる網は広範囲を覆いつくし、飛魔石の羽を絡め取り地面へと墜落させた。

「よっしゃあ! 見たか石野郎!」

「石野郎って……だがうまくいったな」

飛魔石は網に絡まりながら羽をバタつかせている。

が、地面についたまま十数秒立つと、透明で柔らかかった羽根が白く固くなっていき、パキンと砕けちり、同時に魔石も動かなくなった。

「死んじゃった……んでしょうか……?」

「魔石に生き死にがあるのかわからないが……この感じからすると、羽根が地面につきっぱなしになると、普通の魔石になるみたいだ」

羽根は砕けたが、魔石は砕けていない。

深い青紫色の、純度の高い魔石のままだ。

「こいつすげえキレイじゃねえの。しかもでけえ。相当な稼ぎになるんじゃねえの!? なぁ!」

久我が歓喜の声を上げている通り、これ一つで1000MPはくだらないだろう。相当高品質だ。ということは……。

「皆、あっちを見て」

俺は螺旋を描く道路の上の方を指さした。

その先には、道路の上をゆったり飛んでいる飛魔石が何体もいる。

「うお、すっげえいる!」

「この場所ではありふれた存在なのでしょうか?」

「みたいだな、珍しがってるのは俺達ばかり。だけどそれは俺達にとっては好都合。二人もこれ持っといてくれ。稼ぎタイムだ」

俺達はネットランチャーを手に、坂道を登っていく。

一体目が特別だったというわけではなく、二体目以降も同じような動きをしていた。

ある程度までは無防備に俺達を近づけ、さらに手を伸ばしたりするとさっと飛んでいく。

なので、まさに入れ食い状態。

突然の網発射作戦で、魔石を乱獲することが出来た。

今回の道路の終点に行くまでに、合計10体の飛魔石を得ることに成功したのである。

「うっひょー! もうこの段階で大勝利だな」

「ずいぶんはしゃいでるけど久我、高いところが怖いのはどうなったんだ」

「へっへっへ、怖さより金の力が勝ったね。もうこの先の道路が途切れてるところでも余裕でいけるぜ今の俺は」

俺達は今回の道路も一番端までやってきた。

さっきと同じく再び道路が途切れ、飛び石のように浮かんでいる先にまた別の道路がある。

さらに高いところまで来た、頂上もそう遠くはない。

「魔石もだいぶ稼げたし、頂上も見えてきた。この無重力国道、この調子で一気に攻略してしまおう」

俺達は、さらに先へと跳び出していく。