軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

自然公園(ようやく)

「結構来たんじゃない?」

「ああ、この辺はまだ俺は一度も来たことない。雪代はどう?」

「私も初めて。未知の領域だよ」

天音との会話の後、北へと向かった俺たちは、これまでに地図に書き込んできた領域外までやってきた。

といっても、景色には大差ないのだが。どこもかしこも滅びているしガレキだから。

だが、その中で一つ差がある部分が見えてきていた。

「なんかすっごい輝いてんね、あそこ」

雪代がどこのことを言っているのかはすぐにわかる。

俺たちの向いている方、すなわち自然公園の方に、大きな深い青紫色に輝く木があるからだ。

「あれ……自然公園か?」

「うん、多分そうだよ。でもあんな大きな木が一本だけどーん!とはないよね普通」

「まあ、そうだよな。普通は一本だけじゃなくたくさんの木があるだろうし。何か妙なことになってるのかもしれないな」

「行ってみなきゃわからないってことだね、好奇心わいてきた」

「慌てない慌てない。まずは腹ごしらえしておこう。場合によっちゃ公園内でのんびりピクニックなんてできないかもしれないし」

ということで、俺たちは持参したサンドイッチをガレキに腰掛け食べることにした。

腹ごしらえをしてから一時間ほど歩いた時、俺たちは『彩草自然公園』と刻まれた石の板が地面に横たわっているのを見つけた。

「これは……到着したのか?」

「園名標があるならそうだね、折れちゃってるけど」

「へえ、公園とかにあるこれってそういう名前だったのか、詳しいな」

「ふふん、意外に知ってるんだよねー」

「自分で意外と言っちゃうのか。実際意外だけど。それにしても……」

俺と雪代は目の前に広がる光景を眺め、現実に引き戻された。

それは、イメージしていた芝生が広がり、ベンチで休むことができ、木々が植えられ、花が咲き、小さな湖があるのどかな公園とはまったく違う光景。

地面が無秩序に上下し無数の段差と坂で構成された地になっていて、その結果芝生も木々も花も地面から引き剥がされ、それらは濃い青紫色の穴――地面に生じた地割れの奥に落ち消え失せ、一部の木のみがつっかえるように地割れに引っかかっている。

そして地面は芝生の代わりに、繊維質の魔石に薄く覆われ、全体が薄青く発光している。とてものんびり癒やされる、なんてことはありえない場所になっていた。

「……なにこれ?」

雪代が予想外の光景に目を奪われたまま問うが、俺が解答を持っているはずもない。

こんな場所を見るのは初めてのことなのだから。

これまで見てきたのは、もちろん滅んではいたけれど、普通に大災害で建物が崩れた町という感じだった。

しかしここは違う。

見たことのない世界になっている。

「これ、足を踏み入れていいところなのか?」

「うーん……かなりやばそうだけど……でも、これって公園全体が魔石っぽい色になってるよね」

「それに奥には遠くからでも見えた謎の木みたいな青紫の塊があるし」

「ここなら魔石がたくさんあるのは絶対だよ。つまり、頑張れば大金持ちならぬ大MP持ちになれる!」

たしかにその通りだ。

ここを開拓できれば相当美味しい。

雰囲気はやばい臭いがしてるけど、冷静に現実を見つめれば脅威は穴に落ちることだけだ。あとは段差でコケるくらい。

そう考えると現実的には足元に注意してれば問題はない範囲。

「よし、行こう。コケないように気をつければ十分なんとかなるはずだ」

俺たちは自然公園(変異)を進み始めた。

地面が隆起したり陥没したりと簡単に言いはしたが、それは10cmとかそんな生やさしいものばかりではなく、中には1mや2m盛り上がっているようなところも少なくない。

そうなるともはや段差というより壁。先も見えないし、進めないし、そんな壁の間を俺たちは進み始めたのだが、想定外の残念なことが進み始めてすぐにあった。

「わ! 足元すっごいシャリシャリ!」

公園の地面が青い繊維質に覆われている、それを見た俺と雪代は当然それが細い魔石の成分じゃないかと期待した。

おそらく確かに魔石の成分なのだが、それは足で踏むと一瞬で跡形もなく崩れ去ってしまう。それどころか指で摘んでもサラサラと砂になって風に流され空気に溶けるように消えていくほど脆弱で、集めるのが不可能だったのだ。

たしかに踏むと雪を踏み固める時のようにシャリ、ギュムという触感で愉快だけれど、収集できないのなら、持って帰ってMPにすることもできないので実用性はない。

「MP稼ぎたかったら、魔石を普通に見つけるしかないか。残念だな」

「そうだねー。……でも、もう見つかっちゃったかも」

雪代が指差したのは、底の見えないブルーホールのキワに張り付いている魔石の結晶。メロンくらいの大きさがあり、なかなかいいサイズだ。

「うわ、いきなりおいしいな」

「早速取ってこ!」

穴に転がり落ちないように気をつけながら魔石の結晶の根元を削って地面から切り離し回収。雪代も手で催促したので渡すと、おお……と腕の中で揺らしている。

「いい重みだねー。いきなり稼げちゃった」

「始まって即こんな美味しいもの手に入れたんじゃ、多少危なそうでも帰るわけには行かなくなったな」

「当然! 頑張って億万長者になろうね私達」

まだ少し及び腰だった俺たちの探索意欲は、ここで完全に定まり、公園の奥地へと足は迷わずに向かい始めた。

しばらく段差を乗り越え、あるいは飛び降りながら公園を探索して、段々この異質な雰囲気にも慣れてきたのだが、しかし探索を進めた俺たちは慣れないものを目にすることになる。

バシャアアア、と大きな音が耳を打った。

そこにあったのは、見たことのない間欠泉。

地面から青紫色の奔流が吹き上がり、飛沫が周囲に降り注いでいたのだ。

「魔石って液体になるの?」

「液体というか魔石というか……当たり前のように集めてるけど実は全然知らないよな俺たちって。……でもあの水?飛沫は俺の魔道師の杖で出せる魔力に似てるように感じる。ほら、地面が」

俺は間欠泉の飛沫が降り注ぐ地面を指差した。

そこでは飛沫が雹のような塊となり降り注いでいて、尖ったものが地面を穿ち細かい穴が無数にえぐれていた。

「こっわー。九重さんの魔法の杖の矢みたいなのが空から落ちてくるってことでしょ? やばすぎるって。……けど、そこに魔石あるよね」

間欠泉のすぐ側の盛り上がった地面の影に大きな魔石がある。

魔力の間欠泉があるなら、それほど魔力豊富ってことだから、そこに大きな魔石があるのも納得だが、もちろん簡単には取れないだろう。

「うーん。欲しいけど、無理かなあ。体が穴だらけになっちゃうよねあんなところに近付いたら」

「ああ………………いや、なんとかできるかもしれない」

「え? 何かいい手があるの?」

「ちょうどいいものを持ってたんだ」

俺は中級魔道師の杖を前に突き出した。

「魔獣もいないのに杖? どういうこと?」

雪代が首を傾げたまま杖を見つめる……その十秒後、ぱちんと手を打った。

「わかったかも!」

「そういうこと。盾の魔法、発動」

桃色のシールドが杖の先端に出現する。

そして杖を上向きに掲げれば俺たちをすっぽり覆うように魔力のシールドが広がる。

「魔獣はいないけど雨は降ってる。じゃあ、傘を差さなきゃだよな」