軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

超自然的自然公園

中級魔道師の杖で魔力の盾を作り出して上に掲げ、頭上からの攻撃を防ぐ傘のようにして俺は間欠泉の側へゆっくり歩んでいった。

間欠泉から吹き上がった魔力が礫となって降り注ぐ――。

「よし、防ぎ切れてるな」

が、降り注ぐ魔力の礫は目論見通り杖で作った盾に弾かれて俺まで届くことはなかった。

これなら危険な雨が降っている場所でも通っていける。

「すごっ、本当に傘みたい。あ、じゃあ私も入れてよ! それで九重さんが差してるうちに私が魔石を採れば……」

魔力の杖の傘に雪代も入れて大きな結晶の側まで行き、俺がシールドを展開して防いでいる下で雪代が魔石の結晶を削って地面から引き剥がしていく。

危険な雨の下で3分ほど作業を続け、ついに巨大魔石を雪代は手にした。

「とれた!」

「よしじゃあ長居は無用、晴れてるとこまで行こう、この杖使うと結構消耗するんだ」

俺たちは間欠泉から離れた安全な所まで魔力の傘を差して移動し、そこで魔法の杖を解除した。そして雪代は、大きな魔石をごとりと地面に置いた。

「おおお……大きい」

「今まで見た中で一番かもしれない。危険を冒した価値はあった」

「九重さんがいい傘持ってて助かったよ、ここまで見越してあの杖買ってたの?」

「ん……? まあね、そんなところ」

もちろん、そんな予想してたわけがない。

ただの臨機応変である。

だがこれはなかなかいい臨機応変だった。

魔力の間欠泉はこれ一つでなく、他にもいくつもあり、高確率で大きな魔石がそばにあったからだ。

危険なだけの間欠泉が、むしろ美味しいスポットになり、俺と雪代は巨大な魔石を回収しバックパックにしまっていった。

「相当集まったんじゃないこれ? 6000MPはありそう」

これまでに雪代も俺も、魔石を見ればある程度どれくらいのMPになるか体感わかるようになってきていた。

まだここに来て1時間ほどなのに6000MPほどの魔石を集められたのは驚異的だ。

「さすがにうますぎるな、癒やしの公園じゃなかったけど、逆にこれでよかった」

「たしかにたしかに! このMPで自分の部屋にアロマとか買って癒やされればいいしね」

「いやアロマはもったいなくない? 良い匂いのために貴重なMP使うなんて」

「はぁ~~? これだから九重さんは」

意見は決裂したが、ともかくMPが美味しいことは間違いない。

もっと間欠泉とそれに伴う大魔石を集めていきたいね。

そのために俺たちは公園をさらに奥へと進んで行く。

進むにつれ、地面の隆起は激しくなり、間欠泉から漏れる青紫色は濃くなってきている。これは、公園の奥ほど魔力がなぜか集中しているってことを意味してるのかな。

思い出してみれば、公園の外から見えていた巨大な魔石の大樹らしきものは自然公園のもっと奥の方にあった。ということは、奥ほど強い力が渦巻いていて、稼ぎたいという俺たちの目的にあっている。

つまり、俺たちは奥に行くべきということだ。

ただ一直線に行っても美味しい場所を見過ごしてしまうかもしれないし、俺たちは行けるところをちゃんと探索しつつ奥へと向かって行った。

そうして歩を進めると、周囲の光景が徐々に変わっていく。

「見て九重さん、竜巻!」

雪代が指差したところでは、地面から竜巻が巻き上がっていた。

地面を削り取りながら回転する竜巻は、弱まることも強まることもなく、ゆっくりと円を描くように同じルートをぐるぐると回り続けている。

まるでずっと前からそこを公転し続けていたかのように。

「どう見ても普通の天気での竜巻じゃないな。近付かない方がよさそうだ」

「同じ所ぐるぐるまわってるなら、遠い時に横切れば通れるね」

「ああ……でも地面が抉れてるから躓かないようには気をつけないとな」

コケてる間に竜巻が来たら一貫の終わりだから、慎重に行かなければ。

しかし慎重すぎると竜巻がまた戻ってくるので、スピードも重視で。

隆起と陥没、竜巻による地面の抉り、それらをうまくいなしながら、竜巻地帯を俺たちは走り抜ける。

走りながら雪代が口を開く。

「なんか自然公園じゃなくてアスレチック公園に来た気分だね! 九重さん!」

「ああ、たしかに! 小学生の頃はそういうの行ったことあったな」

「網とか吊り橋とかあるんだよねー」

「まあ、あの時は命もお金もかかってなかったけどな」

「つまり今の方がやる気出るってことだよね」

「汚れた大人になっちまった。……ってちょっと待て」

竜巻地帯を抜けた俺たちは足も言葉も止めざるを得なかった。

それは竜巻以上に見たことのない光景……いや、竜巻も生で見たのは始めてだけど、動画やテレビでは見たことがあった。

だが今見たのはどこでも見たことのない現象。

俺たちの前方20mくらいのところから数十mにわたって、空中に岩や木が浮かんでいた。

まるで重力がないかのように、色々なものが宙を舞い、公園の他の所では地殻変動にのみ混まれ消えた花やらベンチやらまでが浮かんでいる。

花が空を飛んでてかわいらしい……と思っている場合ではない。

「もしかして大異変って私達が思ってるより変なことだったのかな?」

「世界がただ崩壊するだけじゃなくて、世界の法則まで変わってるからな、思ってた3倍変なことかもしれない」

「やっぱり変かあ。そうじゃないかと私も思ってたんだよね。ところであそこ行くのってやっぱり危ないと思う? 九重さん?」

「まあ……宇宙飛行士の人は無重力の環境でも無事に帰ってくるから直接危ないってことはないと思うけど」

「けど」

「浮いてる間にあの岩とかにぶつかる気がする」

「それはそう」

「ついでに、一度無重力になったらどうやって戻ればいいんだろうか問題もある」

「こう、平泳ぎとかでいけない?」

「水の抵抗があるわけじゃないからな。他のものにぶつかった反動で運よく出られればいいけど、そうじゃないと延々空中を漂い続けることになりかねない」

「じゃあ結局、間接的には危ないってことなのね」

「まあ、入らない方がいいだろうな、無重力体験してみたいけど」「うーん、残念。でもしかたないか。一生地に足つかなくなったら困るし」

自然公園の中には無重力エリアまであった。

もうここ超自然的公園に改名した方がいいんじゃないか。

面白い光景が見られるのはいいが、しかし無重力領域の中に入れないということは、ここもまた迂回しなきゃいけないということで、さらに公園内を通るルートが制限され遠回りになるということになる。

地面の隆起に無重力にと、俺たちは本来広々としているはずの公園を、限られたコースを蛇行しながら進むしかなかった。

時間もかかるし神経も使うし、思った以上に大変だ。

だが魔石はその分多く集まっている。

重力異常や竜巻も、やはり現象の源は魔力らしく、それらの近辺では大小多くの魔石が見つかり俺たちは二人で10000MPを集めていた。

たった一日でこれは過去最高記録。魔獣を狩った日より多い。

これはさすがにテンション上がってしまうな。もう今から帰ったら何を通販するか、次から次へと商品が脳内に浮かんできて困るほどだ。

危険はあるが面白い光景と魔石との二つを得ることができたなら自然公園に来てよかったな、と俺は脳内で今日一日の総括を始めていた。

その時。

「こっのおおおお! 出しなさあいよおおおお! あああやばいやばい終わる!?!?」

聞き覚えのある悲鳴が聞こえてきて、俺と雪代は目を見合わせた。