軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

季節感ゼロの戦い

「見てください九重さん! あっちも光っているようですよ!」

「目いいですね、俺には言われなきゃ周りと差がわからなかったです」

日出と俺とで雪の中の探索を行っていると、日出が意外な才能を発揮していた。雪に埋もれた魔石が雪面を照らすわずかな紫色の光、それを見極めるのが抜群にうまいのだ。

意外な特技に助けられながら、俺と日出は雪に埋もれた魔石を掘り出し、瓦礫が雪に埋もれた白い雪原を北へ北へと進んでいった。

「なんか普段より稼げてる気すらしますね」

「九重さんもそう思いますか! 全くその通りです! ある程度まとまったものだけに集中できるのが逆にいいのかもしれませんねえ」

「うん、これなら寒い中外に出てきたかいがあります。しかしこんな寒くなって雪が降るなんてどういうことなんだか」

「これまでこの町でそんなことありませんでしたね……まさか! 大崩壊と関係あるんじゃあないでしょうか!?」

「うーん、タイミング的にはありそうですね」

「ヒートアイランドじゃないでしょうか? これまでは都市の熱源で暖められていたのがなくなったから、寒くなったんでしょう!」

日出が言った説は割とありえそうだ。

かつての廃熱がどれだけあったかを考えると、軽く5度くらいは変わりそう。しかもこの彩草市だけじゃなく、他の町も同様だし、雪も積もるよねという話である。

「なんだか複雑ですね、人類文明が壊滅して本来の地球に戻ったみたいな感じ…………日出さん」

「気付きましたか、九重さんも。これは……いるようですねえ。本来の地球にいなかった方が」

ずもももも、と雪の中からかき分ける音が聞こえて来た。

俺たちが身構えた瞬間、前方の雪からぴょんと軽快なジャンプとともに、魔獣が飛び出す。

「魔獣は雪でも活動するんだな! こいつは…………雪ウサギ?」

その魔獣は、真っ白な体の兎の姿をしていた。

本当に雪ウサギのようだが、違う点があって、白い兎につきものの赤い目が、赤ではなくて魔石の青紫色に光っているのだ。

「なんだか高貴な雰囲気があるんじゃじゃないでしょうか」

「兎の王様って感じ……危ない!」

ウサギ魔獣の目が光ったと思うと、頭の上に尖った氷の塊があらわれる。

「白いニンジンを出してきましたよ九重さん!」

「いやツララでしょウサギに引っ張られすぎです! とにかく盾の後ろに!」

急いで中級魔道士の杖を持ち盾のマホウを発動する。

ウサギ魔獣がくるんと回転ジャンプしながら飛ばしてきたニンジン、もといツララは展開された円の盾に弾かれた。

ウサギ魔獣はちょこんと立ったまま首をかしげている。

ずいぶんかわいい動作をしている、いきなりツララぶっ刺そうとしてきた凶悪な魔獣のくせに。

だがやられる前にこっちの番だ。

俺は右手の初級魔道士の杖で凶悪雪ウサギに狙いをつけて、魔法の矢を放つ!

ぴょんっと凶悪雪ウサギは華麗にジャンプして矢をかわした。かわされた矢はずもっと雪に埋もれていく。

カウンターをするように凶悪雪ウサギは魔法のツララを再び生成する。

だが盾があれば同じように防げ……これは!

凶悪雪ウサギはすぐにツララを放つのではなく、ぴょんぴょんと左右に跳ね回り攪乱してきた。

「まさかどこから撃つかわからないようにフェイントをかけてるのか」

「ウサギってそんなに賢いものでしょうか!? うわあっ!」

左右に振ったあとに、凶悪雪ウサギは大ジャンプをして俺たちの頭上を飛び越えた。

そして背後からツララを射出してくる!

「くっ! 間に合え!」

急いで中級魔道士の杖を作動させながら体を反転させ後ろに盾を作り出す。

シュッ……。

ギリギリ間に合い、ツララの軌道がそれるように別の方向へと飛んでいった。

なんとか間に合った。

だがしかし、最初は完全に跳ね返せたのに、ぎりぎりで軌道を変えるのが精一杯。

次さらなるフェイトをかけてきたら防げるかわからない。

「意外な強敵です。大きい魔獣より小さい魔獣がこんな厄介だなんて」

「……九重さん」

どこか高さの違うその声に、日出の方に目を向けた俺は驚愕した。

その手には弓と矢が握られていた。

「狩りと言えば、やっぱり弓矢でしょう!」

「日出さん、そんなもの使えるんですか?」

「以前、戦闘ではお役に立てませんでした……その時に決意したんです、戦える男にならなければと! そして考えたんです、あの時の九重さんの魔法の矢よかったなと……その時に閃いたんですよ! 僕の能力を生かした矢があると!」

その時、俺は気付いた。

日出が持つ弓には溝が刻まれており、そこにはどろりとした液体が滴っていることに。

「まさか、毒?」

「お気づきになられましたか! 毒矢です。普通の矢より殺傷能力が高まるじゃないですか、こうすると」

「でも扱いを間違えると……はっ」

「そうです、僕の『解毒』のマホウがあれば、うっかり自分や仲間を毒で傷つけてしまっても事なきを得ます。リスクをなくしメリットだけを享受できる、まさに僕にぴったりの武器なんですよ」

なるほど考えたな日出。

毒は強いが扱いづらくて素人には難しい。

しかし解毒できるなら、普通の刃物と同じレベルで使用できる。万が一誤爆してもすぐ解毒のマホウを使えばノーカンだ。

「よし、やろう。準備はOKですか」

「いつでもいけます!」

俺は杖を構え、日出は弓を引き絞る。

邪悪雪ウサギと向かい合い――俺がまず矢の魔法を放った。

邪悪雪ウサギはぴょんとさっきと同様にジャンプしてかわす――が、今度はもう一人いる。弓の弦を引き絞り、着地点を狙って日出が毒矢を放った。

着地狩りは素早さなんて関係なく当たるはず――そう思ったのだが、邪悪雪ウサギは体をぐにゃりとヒネり、必死に矢を回避する。

直撃するかと思った矢は、残念ながら体をかすめただけで終わってしまった。

ほぼ無傷だった邪悪雪ウサギはすぐさま立ち直りツララを作り出す。しかも今度は三本同時だ。

フェイントで左右に揺れて、これで俺たちを仕留めるつもりに違いない。

フェイントのステップはドンドン速くなっていき――。

ドサリ。

突然邪悪雪ウサギは雪の上に倒れた。

「これは……日出さん!」

「毒がまわったんじゃないでしょうか!? やりました!」

かすり傷でも致命傷。

毒矢の強さここにあり。