作品タイトル不明
白い世界で出会った人影の正体は
真っ白な雪ウサギは毒に倒れると雪と同化するかのように消え去り、後には魔獣にお決まりの通り魔石が遺された。
大きさはさほどでもないが、とても濃く深い色をしていることから、結構なMPを含んでそうだ。
「見ましたか九重さん! これは毒が効いたってことじゃないでしょうか!?」
「ええ、そんな感じです、傷は浅いのに倒れたってことは、そうだと思います。ナイス毒矢です日出さん」
日出は満面の笑みになって、
「いやあ良かったですよ! なかなかお役に立てなくて申し訳なかったのに、こうして魔獣を倒せて!」
別に戦闘で魔獣倒せなくても全然気にすることないのだが。ともあれ、本人が満足しているならいいことだ。
こうして魔獣を無事に倒した俺たちは、雪の中の探索を引き続きおこなった。進んでいくとさらにまた邪悪雪ウサギがあらわれて襲いかかってくることもあったが、今と同じように二重の矢(ウィズ毒)システムで撃破し、順調に魔石を集めていった。
「いやあいいですね、こんなに儲かるなら寒い時に来たかいがあるんじゃないでしょうか」
「ええ、まったく。魔獣も倒せるし……しかし不思議ですね、こんな魔獣これまで一度も見たことなかったのに、すでに何匹も雪ウサギとあってます」
このウサギの魔獣は初見の魔獣だ。マンション近辺の廃墟はこれまで何度も探索しているのに。
それなのにこれまで一度もあってないってことは、よっぽどレアってことになるが、それなら今日一日で何度も会うのはおかしい。
となると、考えられるのは最近出現した魔獣ってことだ。
雪ウサギ、ツララの攻撃、……まさか雪が降ったから生まれた魔獣なのか?
地下にはモグラの魔獣がいたことだし、環境にあわせて魔獣も発生するのかもしれないな。
雪原という環境になって、これまでいなかった種類の魔獣が出てきたのかもしれない。
これは危険な兆候か、それとも魔石が稼ぎやすくなる朗報か。
さてどっちに転ぶことだろうか。
「あ、むこうの方に誰かいるんじゃありませんか」
とその時、日出が前方を指さした。
雪原の前の方に人影が地吹雪とともに揺らめいている。
「誰か俺たち以外にも寒い中探索してる人がいたみたいですね。お互いご苦労様なことだな」
「せっかくですから一緒に行きましょう!」
日出が人影の方に向かっていく。
俺もそれに続いて進んでいく。
「すごい真っ白な服装に見えませんか?」
「ああいう防寒服もあるんですね。全身覆うスーツみたいだ」
さらに近づいていく。
向こうもこちらに気付いたのかこっちに向かって歩き始めた。
「なんか遠くないでしょうか? もっと近くにいると思ったんですけど」
「たしかにおかしい…………いや、待て! あれって……人間……か?」
「はい? 九重さん何を………………ええええ!? 人間じゃ……ありませんねえ!?」
それは近くにいる人影ではなかった……。
遠くにいる巨人だったのだ。
ズシンッ、ズシンッ、ズシンッ。
「こいつは雪像!?」
巨大雪像が俺たちに向かって走って向かってきていた。
「走るのはやくないですか!? 大きな体してるのに!」
「一歩が大きいですからね、ウサギに比べたらすばしっこくは見えないけど実際の速度はこれの方が上かもしれません……走って逃げるのも無理そうだし、倒すしかない、このへんな魔獣も!」
俺と日出は同時に武器を構えた。
雑に雪を捏ねて作られた巨人みたいな造形の雪像は、的が大きいから外すことはない、魔法の矢と毒矢が同時に身長5m以上ある雪像に襲いかかる。
ザクザク、と矢が刺さる――が、雪像の足は止まらない。速度を落とさずこちらに近づいてくる。
「でかい相手には矢じゃ効き目薄か!」
「でも毒が…………効いてないんでしょうかこれ!?」
「像……だからか」
魔獣は魔獣でも生物っぽくない魔獣だ。
生物じゃないなら毒が効かないってことになる。
しかし、そんな非生物の魔獣これまでにいたか?
……そうか! この前天空国道にいた羽根の生えた魔石。あいつも生物ではどう見てもないけど魔法の力で動いていた。
この雪像もあれに近い存在なのかもしれない。雪が魔獣みたいになった存在だとすれば、雪に毒が効かないようにこいつにも効かないってことになる。
「どうしましょう!」
「だとしても物理的に破壊すれば嫌でも止まるはず! とにかく撃ちまくるしかない!」
俺と日出は矢を放ちまくるが雪像は止まらない。
普通の魔獣なら有効だけど、今相手にしてる雪像だけは一点を突き刺す矢は相性が悪すぎる。
雪像はさらに近づき、腕を振り上げる
「日出さん、攻撃やめていったん回避――」
ザクン。
小気味よい音を立てて、雪像のつま先が切断された。
走ってるところに突然つま先がなくなった雪像はバランスを崩し前につんのめるように転び、雪煙が勢いよく舞い散る。
「日出さん何をしてくれたんですか?」
「え? 九重さんが倒してくれたのでは?」
どういうことだ?
二人とも何もやってないのに雪像が倒れて、助かった?
疑問に思う俺の耳に、空気を切るような音が聞こえた。
目を向けると、そこには空中で回転する鎖鎌が――。
「ふっふっふっふ。私、いーいところにやってきちゃったみたいだね」
雪原で雪代が得意げに笑っていた。