軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

スノーボール理論

急に雪が降り積もったことに危機感を覚えた俺は、マンション通販で冬の備えをすることにした。

まずは冬服のページを開く。

生地の厚いのがいい。昔はUNIQR◯の暖かいダウンとかよく着てたけど、そういう感じのがないかな~……と。

「お、まさにあるじゃないか。誰かが店と商品見つけてくれたんだな、切れ端かもしれないけど、ともかく通販のラインナップに追加されてる。これで決まりだな。色は……グレーでいいか。あとは暖かいズボンも必要だ」

さらにコートも欲しいが、しかし外で活動する事を考えると微妙か?機動力を考えると、アウトドア用のジャケットみたいなものの方がいいか。

ページを移動して見てみると、そういうのもあるが……かなりいい値段するな。これを買うとMPがなあ。

個人的に結構多めにマンションの活動のためにMPを供出してたから、あまり今はMPがないんだよな。

別に大家だから多く払えと皆に詰められたりは全然していないのだが、マンションを早く進化させたい、その先がどうなるのか見てみたい、という欲求を俺自身が抑えきれなかった。

幸い、大家である俺は家賃を払わなくていいどころか一部が懐に入ってくるから、多く支払っても生活に余裕はある。それに最古参だけあって、生活に必要なものも人一倍そろっているから、今多くのMPが必要ってわけでもない。

その点は久我や綾瀬とは大きく違うところだ。彼ら最近入ってきた住民は、まず生活のために一通りのものを集めるだけで大量にMPがいるからな。

そういえば彼らはエアコン買っただろうか?

これだけ寒いと欲しくなるだろうが……まあでも最悪なくても布団を頭からかぶってれば耐えられるか、寒さは暑さよりもまだ耐えやすい。

「そうだ、布団だ」

布団も冬用のものは夏用のものと違う。

あったかフワフワのものが必要だ。これも買わなきゃいけないとなると、さらにMPが必要だな。

さらにこれは世の常だが……冬物は値段が高い。

服であろうが布団であろうが、綿にしろ化学繊維にしろ、あったかくするには量が必要だから、その分値段が上がるのは避けられない。

頭ではわかっちゃいるが、夏との差は辛いところだ。

この冬準備を予測して貯MPしていなかった俺は、そんな高額になりがちな冬物を一式揃えるには所持MPが足りそうにない。

あと5000MPくらいは稼ぎたいところだ。

もちろん、日々の普通の生活用品にもお金を使うってことを考えると、贅沢言って7000、8000MP稼いでおきたい。

頑張ってやっていこう、冬を越すために。

「でも今日は雪が積もってるし、明日にする方が良いかな。雪がやんで溶けてから、スマートにやろうじゃないか」

そして翌日。

「うわ、これは……」

朝起きて外を見た俺が目にしたのは、昨日よりさらに深くなった雪だった。

「スマートじゃなかったか……」

まさかこんなに積もるとは思ってなかった。

だって彩草市なんだ、年間雪二回くらいしか降らないし、積もっても指の第一関節くらいしか積もらないのが常だったような市なんだ。

それでこんな……こんなに雪深くなるなんて予想できるわけない。

しかしどうする?

雪がなくなるまで待って探索しようと思ってたらさらに深くなったし。

今日も寒いし雪もちらついてるから、待っていたら雪がなくなるどころかさらに深くなりそうな予感がする。

くっ、天気予報さえあれば……。

先が見通せないってのは大変だ。

「……行くか、こうなったら」

待っていても事態が好転するかわからない。

後から見てみれば今日が一番いい状況ってこともありえる。

雪が溶けてなくなるまでずっと寒さを気合で我慢するくらいなら、一日頑張ってその後快適に過ごすほうがいい。

ああ、そうだ。今日やるべきだ。

冬を越すための魔石集め、今、出発。

そうと決まれば今日外を探索するために必要なものを通販で購入する。冬を越すための全ては購入できないが今日一日の分なら足りるから、その一日分で冬の分を買うための魔石を集めるのだ。

厚手の服と、アウトドア用ジャケット。冬の山で活動できるようなものを買えば、この雪の中でも余裕だろう。あとは手袋とか雪用の靴とか、そういうものを購入。これで準備は万全。あとは雪を掘るスコップとかは元々持ってるし、よし、出発だ。

買ったばかりの防寒グッズを身に着け、俺はマンションを出た。

エントランスを出ると、緑の芝生が一面真っ白になっている。しかもそれは、果てしなく先まで。地平線まで真っ白に輝いている。

永遠に遠くまで芝生が続くよう見えるこのマンション空間独特の性質だからこその、幻想的で息を呑むような光景だ。しばし寒さも忘れていたのは、防寒具のおかげだけではない――。

「いや~、すごい景色ですねえ~」

雪景色に見とれていた俺の背後から聞き慣れた声が聞こえてきた。

この声は、

「日出さん、いつの間に後ろにいたんですか」

「結構前からいましたよ。でもあまりに見事な雪景色だから、声をかけるの忘れてたのです」

「日出さんもですか。めちゃくちゃきれいですよね、これ」

「おっしゃるとおりです! こんな景色が見られるなんて驚きじゃありませんか! …………でも、一つ気になることがあるんですよねえ」

日出は手を顎に当ててむむむと唸りだした。

「いったいなんですか?」

「野菜埋まっちゃってるけど、大丈夫なんでしょうか?」

「あ」

菜園のあったところにも当然雪が厚く降り積もり、葉が少し頭を出す程度になっていた。

通販の魔法の肥料、信じていいんだよ……な?