軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第20話 今さら自由になったところでどうすりゃいいんだ

重人は玲の亡骸を見下ろしていた。

切り落とされた首は、思いのほか穏やかな顔をしている。完全な奇襲だったため、玲は自分が襲われたことに気付きもしなかったのだろう。

玲のことを好きだったはずなのに、驚くほど何の感情もわいてこなかった。

やはり、玲への感情は能力によって操作されていたものなのだろう。

重人は、玲の墓を作ることにした。

恋愛感情はなくとも、クラスメイトだし、ここまでの冒険を共にした仲間だ。

操られていたことについては文句を言いたい気持ちもあるが、亡骸をさらしたままにしておきたいと思うほど恨んでいるわけでもない。

荷物からスコップを取り出し、洞窟の外に穴を掘る。ギフトで身体能力が向上している重人にとってはたいしたことのない作業で、埋葬はすぐに終わった。

埋葬が終わると洞窟に戻り、世界剣の前に陣取る。

重人に与えられた任務は、世界剣の修復までここで待機することだった。

その任務には、世界剣を奪いにやってきた何者かがいれば迎撃することも含まれているだろう。

だが、特に何がやってくる気配もなかった。

そうするうちに、 運命の女(ファムファタル) の能力から解放される感覚があった。

あのクリスという女への思慕の情がなくなったのだ。

「今さら能力を解除する理由もないし……死んだのか、あいつ」

それは、先ほど玲が死んだ時に感じたのと同じような感覚だった。ふと冷静になるような、我に返るような感覚だ。

「はははっ……今さら自由になったところでどうすりゃいいんだ」

重人は途方に暮れた。

運命の 女(ファムファタル) から逃れたところで、重人にできることなどさほどないだろう。

仲間は皆死んだ。能力もなくなった。残っているのは、一般人よりは多少ましな程度の身体能力と、預言書の攻略情報で集めたアイテムぐらいのものだ。

それだけでもたいしたものだと言う者もいるだろう。

だが、預言書に従って動いていただけの重人にとって、これは茫漠とした空間に放り出されたようなものだった。

身体能力とアイテムだけで、この世界を生き抜いていく方法などすぐに思いつきはしなかったのだ。

「とりあえず……世界剣は持っていくか」

強い剣ではあるらしいが、重人に剣術の心得はない。ただ切れ味がいいだけの剣なら、重人が使ったどころで賢者に勝てはしないだろう。

預言書が賢者に勝てると言っていたのだから、何か方法はあるのだろうが、今となってはそれもわからない。

だが、ここまで苦労して入手した剣を置いていく気にもなれなかった。

重人は、世界剣の繭を見た。

ふわりと宙に浮いている水の球。中に浮かぶ剣は形を取り戻しつつあった。

他にすることも思いつかず、その場でしゃがみ込む。

それからどれほどの時間が経ったのか。からりと何かが落ちる音で、重人は目覚めた。

宙に浮いていた水球はなくなり、剣が地面に落ちていた。

重人は剣を拾い上げた。

シンプルで美しい両刃の剣だ。

「何でも斬れそうな気はするな……」

使いこなせないかもしれないが、所有欲をそそらせる剣だ。もう誰かに渡す気にはなれなかった。

「鞘はないのか」

抜き身のままでは危険だろう。どうしたものかと思っていると、剣は鞘に収まった状態になっていた。

「どういうことだ?」

どういうことなのかわからず首をかしげる。

「お呼びですか?」

「え?」

ナビーがすぐそばに立っていた。

「どうなってんだよ。俺は 預言者(オラクルマスター) の能力を奪われて、お前もあの女についていっただろうが。もしかしてあいつが死んで俺に能力が戻ったのか?」

「いえ。あの方に奪われた能力は、あの方が死のうが戻ったりはしません」

「じゃあどういうことだ?」

「なんだかわからないから、説明が欲しいと思われたでしょう? ですので、世界剣が私を創造したのです」

「訳がわからん……お前は、俺の知っているナビーなのか?」

「はい。あなたのナビーですよ。世界剣は過去の情報を参照し、あなたのスキルとして存在していた私を理想的な説明役として再現したのです」

ナビーが微笑む。

「さて。世界剣についての説明をいたしましょう!」

勝ち誇るように、ナビーは語りだした。