軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

0611 邂逅そして……

「少し遅れましたけど、今から打ち上げパーティーです!」

リュン親王一行を送り出して、涼が宣言した。

もちろん、普通にお昼ご飯を食べるだけだ。

「確かに腹は減ったな」

アベルも頷く。

十二時半を少し回った時間。

「聖帝広場に繰り出しましょう!」

こうして、二人は聖帝広場に 赴(おもむ) いた。

お昼ご飯のピークであろう十二時から十二時半ではないため……。

「多少は客も少ないか?」

「入っていく人よりは、出てくる人の方が多いかも」

ざっといくつかのお店を見回して、アベルと涼は頷く。

「どうします? 久しぶりに汁ありトントン麺いっちゃいますか?」

「ああ、いいな。けっこう久しぶりだよな。前回行ったのは……『春望』たちと食べた時か」

「ですね。懐かしいですね。でも結局、次の日のお昼も、お隣の店で会ったんでしたっけ?」

二人はそんなことを言いながら、外に掛かっているお品書きに、小麦麵の汁ありトントン麺と書いてあるお店に入っていった。

「いらっしゃいませー! そちらのお席へどうぞ」

フロアを仕切っているらしい女将さんが二人を見つけ、席を指し示した。

二人は無事に席に着くことができた。

「日頃の行いが良いと、こういうところで良いことが起きますね」

「日頃の行い? そうか?」

笑顔で涼が言い、アベルは首をかしげる。

いつものことだ。

だが……。

「あれ? アベルさんとリョウさん?」

聞き覚えのある声で二人に呼び掛けたのは……。

「ジュン・ロー?」

「『春望』のみなさん!」

アベルも涼も、誰が話しかけてきたのかすぐに分かった。

さっき、思い出したばっかりだったし。

『春望』の五人が、隣の机でお昼ご飯を食べていた。

「この店でよく会うよな?」

「確かに」

アベルの確認に、ジュン・ローが笑いながら頷いた。

「前回会ったのは一カ月前だろ。あれからずっと帝都にいるのか?」

「はい。領主様は領地と帝都を行き来していますけど、我々は領主様からの依頼を帝都でこなしています」

アベルの問いに、ジュン・ローが答えた。

答えたのだが……顔色が良くない。

「その様子だと、依頼が上手くいっていないのか?」

「そうなんです」

ジュン・ローは頷いて、同じ『春望』の魔法使いバリリをチラリと見た。

バリリはその視線を受けて頷く。

何かの許可が下りたようだ。

「実は、八十人の二級冒険者の行方を捜しているのです……」

「それって……」

ジュン・ローの言葉に、アベルはちらりと涼を見る。

涼がその視線を受けて問いかける。

「ローウォン卿に撃退された七十人の二級冒険者とは別物ですか?」

「その事をご存じですか!」

ジュン・ローが驚いて問い返す。

他の『春望』の四人も驚いているようだ。

「あ~え~っと……第六皇子のリュン親王殿下とは親しくさせていただいておりまして……」

「なるほど! 確かにその七十人が襲ったのはリュン殿下ですからね。ですがそれとは別に、八十人の二級冒険者がいなくなったのです」

「もしかして……その八十人も、ある親王に雇われていたけど、消えてしまったとかそういうことですか?」

「……お二人はいったいどこまでご存じで?」

涼の問いに、さすがに訝しげな表情になってジュン・ローが問い返す。

「けっこう詳しく……知っている方かもしれません。 御史台(ぎょしだい) の 司空(しくう) 、シャウさんも知り合いですので」

「御史台の司空……。そんな大物とも。であれば、その八十人を雇った親王がどなたなのかも……」

「はい。第四皇子ビン親王殿下ですよね」

涼が即答する。

「おっしゃる通りです。元々、ビン殿下の右腕とも言うべき最側近リンスイ殿が仕切っていたらしいのです。ですが、ローウォン卿によって防がれた襲撃の結果、リンスイ殿は帝都から 出奔(しゅっぽん) しました。それと時を同じくして、残りの八十人の二級冒険者たちも行方が分からなくなったと」

「それはもう帝都にはいないんじゃないか? ビン親王の領地とかそういうところでは?」

ジュン・ローの説明に、アベルが問いかける。

「ビン親王の領地も、別の冒険者が調べているのですが……そんな二級冒険者たちが入ってきた様子はないそうです」

ジュン・ローは、小さく首を振った。

「その出奔したリンスイさんって、どんな方なのですか?」

「あ~、詳しくは私たちも知らないのですが、ビン親王の陣営を取り仕切っていた方だと言われています。本当に、隅から隅まで全部。ですので、リンスイ殿が離れたたった一カ月で、ビン親王の周りはかなり揺らいでいるとか。実際ビン親王自身も、この一カ月失敗続きで、皇帝陛下の信頼を大きく損ねたとか。極めつけが、昨日の響音会らしいですが」

「その情報って、もしかしてロシュ・テン殿?」

「はい、領主様です。今はまた帝都に滞在されております」

「あれ? そう言えば、昨日の響音会ってロシュ・テン殿は出られていなかったのでは……」

涼は首をひねる。

シタイフ層の人たちも演奏したがその中にはもちろんいなかったし、列席もしていなかった気がする。

「出られていないと思います。響音会は、皇子様方は全員参加ですし、シタイフ層でも六部の長たる尚書も全員参加です。ですが、それ以外のシタイフ層は、毎年十五家ずつ選ばれて出ていたと思います。領主様は二年前とかに出たはずなので、次はまだまだ先でしょう」

「いろいろあるんですね~」

ジュン・ローの説明に頷いてお茶を啜る涼。

「そういえば、ビン親王は帝都の三級冒険者も雇っていたでしょう?」

「ええ。幾人かが、我々を監視していたやつですね」

涼の言葉に、ジュン・ローはニヤリと笑って答える。

監視されていたことには気付いていたのだ。

「皆さんと別れてから僕らも監視されたみたいで……」

「え?」

「いろいろ許可を貰って捕まえました」

「それはなんか……すいません」

涼とアベルにも監視の目がついたとは知らなかったのだろう。

ジュン・ローが頭を下げる。

「いえいえ、全然問題ないです。捕まえて、うまく処理しましたから」

「処理……」

涼がニヤリと笑いながら言い、魔法使いバリリが大きく目を見開いて驚く。

「しかるべき部所に引き渡しただけだ」

アベルが言うと、『春望』の五人は安心したように頷いた。

その後の涼の表情が、ちょっとだけ残念そうに見えたのは見間違いに違いない……。

そんな情報交換のような会話を交わして、涼とアベルと『春望』の五人は食事処を後にして別れた。

今回、二人は屋敷の場所もちゃんと伝えて。

リュン親王や『春望』と会った次の日、輪舞邸を訪れた人物がいた。

あまり訪問者がいない輪舞邸としては、二日連続で人が来るというのは珍しい事だ。

「あれ? ミュン船長?」

「リョウ殿……いや失礼、ロンド公爵閣下、突然の訪問をお許しください」

公船第一船のミュン船長は、 剛毅(ごうき) さの中にも美しさを伴った一礼をした。

さすがは、皇帝の覚えめでたい元提督。

涼もアベルもそう感じた。

部屋に通されると、ミュン船長はさっそく話を切り出した。

「ロンド公は、コマキュタ藩王国やスージェー王国とも親交があるとうかがったのですが」

「はい。どちらもダーウェイに来る前に訪れましたので」

「リュン皇子の婚礼の際に、両国の代表団が帝都を訪れていたのはご存じでしたか?」

「ええ。コマキュタ藩王国のバンデルシュ商会長と、スージェー王国のカブイ・ソマル護国卿にお会いしました。国に戻られる前に、ご挨拶に来てくださいまして」

涼は思い出しながらそう答えた。

ミュン船長は顔をしかめている。

「でしたら話が早いですね。その二国は船団を組んで多島海地域に向かったのですが……行方不明になったようです」