作品タイトル不明
0587 帝都冒険者互助会
二人は軽くお昼ご飯を食べた後、冒険者互助会に向かうことにした。
ええ、そうですよ。
軽く、ですよ。
いつもいつも食べ過ぎるわけではありません。
二人の名誉のために言っておきますが、食べ過ぎるのは時々です。
はい、そこ!
時々でも食べ過ぎは良くないとか言わない!
二人は六級冒険者だ。
虎山での山狩りでは、七級以下と六級以上で役割が分けられていたから、六級は初心者ではないと思ってはいるのだが……。
「でも、あの時の七級冒険者の子たちって……そう、『子』って付けちゃうくらい若い人たちでしたよ」
「た、確かにそうだな……」
涼の指摘に、顔をしかめるアベル。
つまり、それより一つ上なだけの六級冒険者は、まだまだ半人前の可能性が。
「とりあえず、行ってみれば分かる!」
「うん、アベルはやっぱり剣士です。そして、国王より冒険者に寄っていると思います」
アベルが思考を放棄し、涼が小さく首を振ってぼやいた。
二人は、しばらく歩いて、街の人に教えてもらった冒険者互助会に到着した。
そこは、立派な門。
その左右に、かなりの長さに渡って続く白い塀。
どこかの偉い人の屋敷かのような……。
門は開いており、人の出入りもそれなりにある。
だが、出入りしている人の多くは、冒険者には見えない。
「出入りしている人、小間使いさんとか、そういう人に見えます」
「依頼人か? 貴族……いや、シタイフ層か、そういう人たちは直接来ないんだろう。あと、商人とかも」
「なるほど」
アベルの推論を受け入れる涼。
確かに、妥当な推論だ。
二人は門をくぐって中に入った。
そこは、正方形に切り出された石が綺麗に敷き詰められた広場になっている。
その広場の左右と正面の三カ所に、大きめの建物があるようだ……。
どれも平屋だが、造りそのものが大きい。
「小間使いっぽい人たちの多くが、右の建物に入っていきます」
「そうだな。少し、いい服を着た連中が左手の建物に入っていくな」
涼とアベルは、門をくぐって入った依頼人と思われる者たちが、左右の建物に入っていくのを確認した。
そして見た限り、正面の建物に入って行く者は誰もいない。
「正面の建物が、圧倒的に立派なのに……」
「勝手が違い過ぎて、どうすればいいか全然分からんな」
アベルはそう言うと、小さく首を振る。
そう、たとえば王国の冒険者ギルドとは全く違う。
ルンとも王都とも。
自治都市クベバサの冒険者互助会とも全く違う。
あんなに 寂(さび) れていない。
立ち尽くすアベルであったが、連れはキョロキョロと辺りを見回している。
そして、何かを見つけたらしい。
「アベル、あの隅っこの人、じっとこっちを見ています」
涼がアベルに言ったのは、彼らがいる石畳広場の隅に立っている人物だ。
髪を丁寧に結い上げ、着ている東服も皇宮にいる案内人たちが着ているものに近い。
間違っても冒険者には見えないし、普通の帝都民にも見えない。
そう、どちらかと言うと事務員。
涼は、その事務員に向かって歩き出した。
「おい、リョウ」
その後ろを慌てて追うアベル。
「こんにちは!」
にこやかに挨拶する涼。
すると、事務員も返事をした。
「何かお困りでしょうか」
そう、やはり事務員だったのだ。
いや、互助会案内人と言うべきか。
「はい。僕たち、初めて帝都の互助会に来ました。六級冒険者です」
「ようこそ、帝都冒険者互助会へ」
涼が言うと、案内人は両手を胸の前で重ねるダーウェイ式の礼をした。
「この、建物が三つに分かれていること自体に驚いてしまって……」
「なるほど。では、簡単に説明させていただきます」
そう言うと、案内人は説明を始めた。
恐らく、二人のような者たちに、今まで何回も説明してきたのだろう。
それは、よどみのない説明であった。
曰く。
右手の建物が、四級以下の冒険者たちへの依頼を取り扱う建物。標準館。
左手の建物が、三級と二級の冒険者たちへの依頼を取り扱う建物。上級館。
正面の建物が、一級と特級の冒険者たちへの依頼を取り扱う建物。特級館。
入っていく者たちのほとんどは依頼人である。
それぞれの級の冒険者たちは、各建物の奥に控室や依頼請負室があるため、そこにいる。
奥の通りに面した出入口もあるため、ほとんどの冒険者がそちらの出入り口を使い、この正門は使わない。
もちろん、ここから建物に入って、受付に言えば奥の控室に入ることは可能である……。
「凄いですね……」
「冒険者の人数も多そうだな」
涼が驚き、アベルも頷く。
「帝都所属の冒険者は、五万人以上います」
「え……」
「帝都だけで五万人か……」
案内人が笑顔で答え、涼が絶句し、アベルが小さく首を振った。
涼が少しだけ 逡巡(しゅんじゅん) した後で、案内人に問う。
「あの~、ちょっとだけ中を見てみたいのですが……」
「お二人は冒険者ということですので、もちろん問題ありません」
「おぉ!」
涼が喜びの声をあげたが、その後、少しだけ声をひそめて案内人が言葉を続けた。
「ですが……標準館だけにしておくことをお勧めします」
「右手……つまり四級以下のところだけにしておけと?」
「はい。決して明記されているわけではないのですが……あまり上級館、特級館には入らない方がよろしいです」
「叩き出される?」
「運が悪ければ生きて出てこられません」
「なんと……」
上級の建物は、 魔窟(まくつ) らしい。
二人は案内人に礼を言って、中に入ってみることにした。
もちろんアドバイス通り、右手の標準館だ。
「たとえアベルが正面の一級、特級の建物……特級館とかいう所に突入すると言っても、僕はついていきませんからね。一人で行ってください」
「突入なんてするわけないだろうが」
「分からないじゃないですか。元A級の 見栄(みえ) とかそういうので」
「リョウが突っ込んできたらどうだ? C級冒険者の力試しとかで」
結局、どちらも突っ込んだりはしなかった。
そんなことを言いながら、正面の特級館の建物を見ていたのだが……。
「あの人たち、正面の建物に向かっています」
「本当だな」
ただ一組、特級館に向かう者たちを発見した。
十人だが、一人だけが使いで、残りの九人は荷物持ちらしい。
「あの荷物全てが依頼料とか?」
「いや、さすがにそれはないだろう」
もしすべてが金貨だったら……中央諸国のお金で数億フロリンでは済まないに違いない……。
そんな集団を見ながら、二人は四級以下の建物、標準館に入っていった。
標準館の中は、活況を呈していた。
依頼人たちと、受付とのやりとりが多数行われていたからだ。
かなり広い部屋。
学校の体育館の二倍の面積と言えばいいだろうか。
天井も体育館のように高いし……。
そこでは冒険者たちが騒いでいる、などということはもちろんなかった。
なぜなら、冒険者に見える者たちはそこにはいなかったから。
「奥の方に控室とか依頼請負室とかあるって言ってましたよね」
「言ってたな。依頼請負室ってのは何だろうな」
「それはやっぱり……誰がその依頼を受けるかを、力で決める部屋じゃないですか?」
「力で決めるって何だ?」
「決まっているじゃないですか、それですよそれ」
涼がそう言いながら指差しているのは、アベルが背負っている剣だ。
「剣? まさか決闘でもするってのかよ」
「当然です。言いたいことは剣で言えです」
涼が、さも当然という雰囲気で、なぜか自信満々に言い切る。
アベルには、なぜそんなに自信満々なのか、理由が全く分からない。
広い受付の隅には、広場にいた案内人と同じ雰囲気の者たちが何人もいる。
そして、来てはみたものの勝手がわからない依頼人候補者たちに、一人ひとり説明をしていた。
「 痒(かゆ) い所に手が届くシステムです」
「なんだそれは……」
涼の表現に、小さく首を振るアベル。
そんな二人を見つけた案内人が寄ってきて問うた。
「何かお困りでしょうか」
涼とアベルは顔を見合わせて、結局、涼が口を開いた。
「僕らは、今日初めて、こちらの帝都冒険者互助会に来た六級冒険者です」
「ようこそ、帝都冒険者互助会へ」
広場の案内人と同じ歓迎の言葉だ。
ちゃんと決められているらしい。
「特に依頼を受けに来たわけではなくて……見学、みたいなことって可能ですか?」
「もちろんです。級の確認を行いますので、どうぞこちらへ」
屋内案内人はそう言うと、先に立って歩きだした。
向かった先は、依頼人が多くいる正面受付ではなく、誰もいない隅の方の小さなデスクだ。
案内人は備え付けの椅子に座り、水晶玉のようなものに右手を触れた。
すると、一瞬だけ水晶玉が光る。
それは涼が見慣れた、錬金術の淡い光。
「冒険者カードをお願いします」
案内人に言われて、二人は冒険者カードを渡した。
水晶玉にカードをかざし、案内人は何かを確認した後で言った。
「六級冒険者リョウ殿、同じくアベル殿ですね。確認いたしました」
カードが返却されて、案内人は席を立った。
「どうぞこちらへ。控室に案内いたします」
その言葉についていく二人。
受付奥の扉から出ると、渡り廊下があった。
この辺りは、二人の屋敷同様に、建物どうしを屋根付きの渡り廊下で繋ぐ、ダーウェイの一般的な建築様式だ。
ただし規模が大きい。
「造りは屋敷に似てますけど、一つ一つの建物が大きいです。一階建てなんでしょうけど、屋根が高いですね」
「そうだな。さっきの受付も、天井まで高かったもんな」
涼とアベルのそんな会話が聞こえたのだろう。
案内人が情報を補足した。
「現在の建物は、三十年前に建てられたのですが、その際に、どこでも剣が振れるようにと、全てを高い天井にしたという話が伝わっております」
「マジか……」
思わず呟くアベル。
涼も無言のままだが、口をあんぐりと開けている。
それは、半分以上は呆れてものが言えない、という意味でのあんぐりであろう。
剣を振りたいなら、外で振ればいいじゃないか!
そうは思っても、涼は声を大にして言ったりはしない。
空気が読める、大人な魔法使いなのだ。
「剣を振りたいなら外で振ればいいだろうに」
隣のアベルは、大人な剣士ではなかった……。
「こちらが第一控室です」
案内された建物も、他と同様に高い屋根、大きな……というより巨大な建物であるが……。
「なんか、怒鳴り声が聞こえてきません?」
「確かにな」
涼が耳を澄まし、アベルも同意する。
そこに、案内人の意味不明な言葉が響く。
「お気を付けください」
そして、扉が開けられた。
中では、 喧嘩(けんか) が起きていた。
「喧嘩しているように見えます」
「奇遇だな。俺にもそう見える」
涼もアベルも、扉の外だ。
とても中に入っていこうという気にはならない。
だって、喧嘩しているんだもの。
数十人? いや百人を超える人たちが……。
皆、着ている服はダーウェイでよく着られている東服だ。
「多分、冒険者たちですよね」
「ああ、冒険者たちだろうな」
「不思議ですよね。服も標準的な東服だし、剣だって白焔軍の人たちが腰に下げているのと同じような、片手の両刃直剣なのに、冒険者だと分かってしまいます」
「そうなんだよな。何だろうな、 匂(にお) いみたいなやつなのかな」
「冒険者の匂い……。多分ですけど、あまり良い匂いではない気がします」
「うん、それは偏見だぞ。俺も同感だがな」
涼とアベルのそんな会話は、案内人にも聞こえたのだろう。
小さな、本当に小さなため息をついたように見えた。
そして、衝撃的な言葉を吐いた。
「今は、まだ取っ組み合いですね」
その言葉は、冷静に案内人の口から放たれた。
恐らくこれは、見慣れた光景だから。
「もしや、いつもこんなことが?」
「はい。この後、剣を抜いての斬り合いになる場合もあります」
「えっ……」
全く表情を変えずに説明する案内人、驚く涼。
「もしかして天井が高いのは、これのせいか?」
「はい、これが主因だったのだろうと思います。どこでも剣が振れるように……喧嘩の際に、剣が建物を傷つけるのを少なくするために……」
「つまり三十年前には、すでにこれが日常の光景だったと」
アベルが推理し、案内人が頷き、涼が呆れた。
転生してくる前には、涼も、いわゆる冒険者ギルドの中では喧嘩もよく起きるだろうと勝手に思っていた。
もちろんそれは、ファンタジー小説などによる、偏ったそしてフィクション的知識が原因だ。
現実には、ルンだろうが王都だろうが、冒険者ギルドの中での喧嘩など、一度も見たことはなかった。
ああ、ルンの訓練場では、新人同士のぶつかり合いは見た覚えがある。
『十号室』のニルス、エト、アモンの三人が、『一号室』のダンたちに打ち倒されていた……。
だが、あれは室外の訓練場であり、ある意味、暴れるのを前提に造られた施設だ。
決して、目の前で繰り広げられているような、室内での喧嘩ではない。
だがよく見ると、部屋の中にいる全員が喧嘩しているわけではないようだ。
部屋の隅に下がって、本を読んでいる者もいるし、飲み物を片手に喧嘩を眺めている者たちもいる。
全員で二、三百人はいるだろうか
だがそれは……。
「今、昼過ぎだよな?」
アベルがぼそりと呟く。
そうなのだ。昼過ぎ。
「何でこんな時間に、こんなにたくさんの冒険者がいるんですかね?」
涼も同じ疑問を持ったために呟く。
そんな二人の疑問への案内人の返答は残酷であった。
「仕事にあぶれた方々です」
憐れむ内容の言葉ではあるが、その言葉には同情など 欠片(かけら) もない。
言外に、働けよ! と言っているかのような。
実際、その表情も、先ほどまでの冷静な様子から、ほんの少しだけ 眉(まゆ) が 顰(ひそ) められている気がする……。
「アベル……彼らを 他山(たざん) の石として、真面目に活動しましょう」
「タザン?」
「別の言い方なら、人の振り見て我が振りなおせです。ダメダメな人を見たら、自分は大丈夫かなと振り返ることが大切だと」
「それは全く同感だな」
結局、二人は控室には入らなかった。
案内人に、ここには入らないと告げると、案内人は何事もなかったかのように扉を閉めた。
「あとは、依頼請負室があります」
案内人はそう言うと、再び先に立って歩きだした。
「依頼請負室も、今みたいに力づくで物事を決する場ですよね。誰が依頼を受けるかを決める場」
「だから、何でそんなに自信満々なんだよ」
涼が自信満々に依頼請負室で展開される光景を述べ、アベルが否定的な言葉を吐く。
「今の光景を見て確信しましたよ! 控室ですらあんなに暴力的なんです。誰が依頼を受けるか、それを決める場が平和なはずがありません」
涼は断言する。
はたして……。
「こちらが依頼請負室ですが、案内された人以外は入ることはできません」
扉は閉められたままだが、ものすごく静かだ。
時々、受付の建物から依頼人と思しき者たちが案内されてくる。
同じ感じで、先ほどの控室の建物から冒険者と思しき者たちが案内されてくる。
どちらも平和的に。
「静かで平和です」
なぜか少しだけ残念そうな涼。
「これが普通だろ」
当然な顔をして頷くアベル。
「こちらの依頼請負室にて、冒険者は依頼人から直接依頼内容を聞くことになります」
案内人が説明する。
「もしかして、どの冒険者に依頼を回すかを決める場所ではない?」
「はい、違います。どの冒険者に回すかは、受付の方で選定されます」
「危ない冒険者には、そもそも依頼を回さないということか」
涼が問い、案内人が答え、アベルが小さく首を振る。
もちろん、アベルは否定的な意味で首を振ったのではない。
冒険者互助会からすれば、組織の評価を落とすような者たちに依頼を回したくないと思うのは当然だろう。
お金を払って仕事をしてもらうとして……。
先ほどのような、喧嘩ばかりしている者たちにやってもらいたいか。
それとも、真面目に問題なく仕事をしてくれる者たちにやってもらいたいか。
ほとんどの依頼人が、後者だろう。
冒険者互助会だってそれを理解しているのだ。
だから、誰に仕事を回すかを決める。
当然仕事が回ってくる者たちは良いが……。
「あぶれると悲惨ですね」
「実績がものを言うのは、どんな世界でも一緒ということだ」
涼が首を振りながら呟き、アベルが肩をすくめる。
仕事を回したのに顔を潰されてはたまらないから……。
「仕事を受けたい冒険者たちは、必ずさっきの控室にいないといかんのか?」
アベルが案内人に問う。
確かに、あそこにいたら巻き込まれたくもないのに喧嘩に巻き込まれる可能性がある。
その結果、危ない奴認定されて仕事を回してもらえなくなったら困るだろう。
「基本的には、控室にいる方々に依頼を回します。ただ、先ほどの場所は第一控室です。控室は、第五控室までありまして、どの控室にいらっしゃっても問題ありません」
「つまり、喧嘩に巻き込まれそうになったら、別の部屋に移ってもいいんだな?」
「はい」
アベルの確認に、案内人が頷く。
だが、涼は先ほどの光景を思い出して疑問を抱いた。
「さっきの第一控室、喧嘩していない人たち……部屋の隅にいました」
「そうだな、別の部屋には移ってなかったな」
涼の指摘にアベルが頷く。
「先ほどのようなことは、よくある事ですから……」
「慣れっこになったんですね」
「冒険者なんてのは順応性は高いんだろうが……」
案内人の説明に、涼もアベルも肩をすくめた。
こうして、見学会は終了した。
二人は、冒険者たちが出入りによく使う裏門を見せてもらったが、結局、最初の石畳の広場から出ていくことにした。
特に理由はなかったのだが……なんとなく、他の建物を眺めたかったからだ。
もちろん、上級館や特級館に入ったりはしない。
「あっちの上級者たちの建物はどうなんでしょう」
「さすがに、毎日喧嘩はしていないだろう。そんな奴らにはあんまり仕事を回さないみたいな話だったろう? そうなると結局、数をこなせなくて上級には上がりにくいだろうからな」
「こういうのを見ると、王国が平和だったのがよく分かります」
「まあナイトレイ王国は、冒険者の国だからな」
涼がため息をつきながら言い、アベルが補足した。
じゃっかんの、王国冒険者としてのプライドを滲ませながら。
「ああいう冒険者同士の喧嘩はないんですか?」
「全く無いわけじゃないが……少なくとも剣で斬り合うことはない」
涼の問いに、アベルは正直に答えた。
どうしても、冒険者という人種は喧嘩っ早い者たちが多い。
他の職業に比べれば間違いなくそうだし、ある程度は仕方ないとアベルも理解している。
だが少なくとも、喧嘩していて仕事が回されないなどという冒険者はいない。
左手の建物、すなわち上級館から出てくる十人の集団が、二人の目に入った。
「あの人たち、さっきの人たちじゃないですか?」
「さっき、特級館に入っていったやつらか。なんで上級館から出てきた?」
涼もアベルも、首をかしげる。
そして、入っていく時に持っていた荷物は、半分に減っていた。
「やっぱりあの荷物、依頼金とかそういうのだったんですよ」
「この建物にいるやつらとは、金取りが違うということか」
涼もアベルも肩をすくめた。