作品タイトル不明
【16】ペロモール、爆誕。
「ありがとう。ステーキ、美味しかったよ。ところで、ショッピングモールの名前は決まっているの?」
セインさんにいきなり尋ねられて俺は黙り込む。
うーん。自分の名前を付けるのも、こっ恥ずかしいし。
かと言ってあんまりセインさんをヨイショし過ぎて完全に国営っぽい雰囲気の名前になるのも嫌だな。
隣を見ると、肉をはぐはぐしながらハッハッと息を吐くペロが目に入った。
「……ペロモールにしようかなって思ってます」
俺の言葉に、セインさん、グレインさん、フィオナさんがペロに注目する。
「……確かに良いかもしれませんわね」
「そうだね。ちなみにじゃあ、コンビニの名前は?」
俺はテキトーにそれっぽく答えることにした。
「うーん、じゃ、ペロマートで」
──その瞬間タブレット画面が目の前に出現した。
『ショッピングモールと、コンビニの名前を登録しますか?』
と出てきたので『YES』を選択する。
次の瞬間──。一瞬、一階が揺れたような気がした。
「なんだ?! 敵襲か?!」
「見に行ってみましょうっ!」
グレインさんとフィオナさんの言葉に俺とセインさんとペロも頷いて一階に降りて、外に出てみる。
「──なんだこれは!!」
なんと、今まで屋号がなかったのだが、コンビニに「PELO MART」という屋号が新たに入っている。
どうやらテーマカラーは緑のようだ。
コンビニの中に入ると、ハーマンさんが驚いた顔で固まっていた。
「ハーマンさん!! 大丈夫ですか?」
俺が呼びかけると、ハーマンさんが引き攣った顔で頷いた。
「う、うん。大丈夫ー。見て、なんか制服のデザインいきなり変わったからびっくりした……」
I’m
よくみると、制服の色がオレンジから緑に変わり、「PELO MART」と入った縦ボーダーのオシャレなデザインに変わっている。
「驚かせてすみません……。今名前を決めたらこうなっちゃいまして」
俺の言葉にハーマンさんが納得するよう頷いた。
「……なるほどね。まあ、いいわ。”ペロマート”って名前になったの? 良い名前じゃないっ」
落ち着いたのか、ようやく笑ってくれた。
「カワグチ殿! ショッピングモールの看板にも名前が入っている!」
外に出ると、確かにここからでも大きな看板が緑色になり、「PELO MALL」と書いてあるのが確認できた。
「スッゲェ……」
俺が呟くとペロが満足そうに尻尾をパタパタと振った。
「わしの名前を付けるとは! お主、なかなか良いセンスしとるのう」
どうやら嬉しいらしい。
まあ、名前が決まって俺もホッとした。
こうして無事店の名前も決まり、従業員となる村人達を受け入れれば、ショッピングモールが本格的にオープンできるようになった。
「じゃあ、僕は国内の貴族に呼びかけておくよ。村人達が7日後にくるのであれば、オープンは30日後でどう?」
セインさんの言葉に俺は頷く。
「はい。かまいません。あ、一つだけいいですか?ショッピングモール、僕のマンションの入居者さんやその家族、移住してきた村人は会員料払わなくても使えることにしてもらっても良いですか? その、近くに住む人達が困ってしまうのはまずいので」
「わかった。かまわないよ。それと、王宮の文官から優秀な者をカワグチ殿の補佐として派遣しても良いかな?」
セイン様の提案に俺は内心ガッツポーズを取る。
やったー! 出来るだけ色々やってもらっちゃおうっと。せっかく不労所得が欲しくて異世界きたのに忙しくなったら意味ないからな。
「はい、もちろんです」
結局今日はこのまま解散しようという流れになり、グレインさんとセインさんにはゲストルームに泊まってもらった。
案内をしたら、二人はカフェスペースで嬉しそうにドリンクバーのジュースを飲んでいた。
◇◇
「じゃあ二人の事送っていくんで。フィオナさん、もし何か異変があったら魔道具に連絡して教えてくださいね」
「ええ、わかったわ!」
──翌朝。
フィオナさんに挨拶してからラングスチア皇都に引っ越すことにした。
「それじゃ、行ってきまーす!! グレインさん、道案内してくださいね」
「ああ。もちろんだ」
俺はセインさんとグレインさん、そしてペロを乗せてタロウと共に空に飛び立った。
「グルオオオオオオオオオ!」
タロウの咆哮が青空に響く。
今日も天気が良くて平和だな。
俺は鼻歌を歌いたいような気分でラングスチアの皇都に向かっていく。
30分ほど飛んだ頃だった。
「右前方に大きな城が見えるのがわかるか? あそこがラングスチアの城だ」
見ると、白亜の美しい少しエキゾチックな感じの城が聳え立っているのが見えた。
あれは大理石だろうか?
「へえ、素敵な城ですね。素材はなんで出来ているんですか?」
嬉しかったのかセインさんは、得意げに教えてくれた。きっと、こだわりポイントだったのだろう。
「魔石を砕いて砂状にしたものを固めたものだ。
こうする事で城そのものが魔力を纏って害を成すものを排除する事ができる」
「へえ……なんだか凄いですね」
俺はグレインさんに指示された場所にタロウを降ろすと、招かれるままに城に入って行った。
「ほお。オシャレな城じゃのう」
白と金を基調とした豪華なインテリアを見ながらペロが感嘆の声を漏らす。
城の中では身なりのいい人達が好奇心の混ざった目でジロジロと俺とペロを見てきた。
「カワグチ殿。ここで待っていてくれ。──グレイン、カワグチ殿を頼む。良かったらお茶でも飲んでいてくれ。一時間程で戻る」
俺は、何やら豪華なシャンデリアのある執務室っぽいところに、グレインさんとペロと残された。
「……ここって何の部屋ですか?」
恐る恐る尋ねると、グレインさんが頷く。
「ここはセイン殿下の執務室だ。一応厳重な警備はされているが、其方に何かあると困るからな。今、侍女がお茶を持ってくると思うから待っていてくれ」
少しすると、お菓子とお茶が運ばれたのでグレインさんと談笑しながら待つ。
スパイスと生姜が少し効いたような味のクッキーは独特だけれど結構美味しかった。
「この近辺の人達ってスパイスが効いたような味が好きなんですか? 隣国のリオネル王子もカレーっていうスパイスが効いたカップ麺……昨日泊まった建物の店に売ってた麺料理が好きだったんですよね」
「ああ、確かに人気があるな。なんとなく香辛料が効いたものを飲んだり食べたりすると身体がシャキッとする感じがするしな」
グレインさんとペロと話していると、コンコンとドアがノックされた。
「待たせてすまないね。せっかく来てもらったから無理を言って急遽書類を作ってもらった。この条件でいいだろうか?」
──それは、ショッピングモールや税金、村人の受け入れに関する契約書だった。
俺のマンションで村人達を最終的に八百人ほど受け入れすること。
ショッピングモールの会員の審査をラングスチアの城で行い、会員料の半分の売り上げを国で徴収すること。(ただし近隣住民は例外であること)
ショッピングモールの売上の3割を国に譲渡する代わりに、税金を免除する事。
国から何人かモールの経営をサポートする者が派遣する事……などが書かれていた。
「うん、問題ないです。サインしますね」
俺が契約書にサインした時だった。
──タブレット画面が目の前に現れた。
『ペロモールをラングスチア帝国と共同経営することに同意しますか? ※会員料の半分、売上の3割を国に譲渡します』
そのメッセージに俺はYESを選ぶ。
──その瞬間、俺とセインさんの身体が青白い光に包まれる。
「これは……!」
セインさんが驚いたように目を見開く。
「どうやら僕のスキル的にもきちんと今の内容で契約されたみたいです」
「そっか。まあ、これから宜しく頼むよ」
笑顔でセインさんが手を差し出したので、俺は笑顔でその手を握った。
◇◇
「……おいペロ」
──それから一週間。
朝、マンションのエントランスを箒で掃いていた俺は遠くの地平線を見て目を細めた。
俺の言葉にペロが首を傾げる。
「なんじゃ?」
「あの馬車ってこっちに向かってきてるよな」
土埃を上げながら、何十台もの馬車の列がこちらに向かってきていた。
それを見て、ペロが頷く。
「そうじゃな」
「……いよいよ村人達が来たのか」
いよいよこの場所に、人が増える──そう思うと、何となく緊張する俺だった。