作品タイトル不明
【17】村人百五人、到着。
「な、なんじゃこの塔は……」
はじめに、例の土砂崩れにあったというラミア村の村長だと思われる人が馬車を降りてきた。
あとに続いてゾロゾロと村人達が馬車から出てくる。
──どうやら、馬車はラングスチア帝国が用意したらしく、王宮に飾られていたのと同じ紋章が馬車にも入っている。
その中には以前話した騎士団の人が何人かいた。
どうやら村人達を引率してきたらしい。
「カワグチ殿っ!」
後ろから馬で走ってきたのは騎士団長のグレインさんだった。
「グレインさんっ! えーっとこの方達が例のラミア村の方達ですよね? これで、全員ですか?」
彼は少し困ったように眉を寄せた。
「いや…。まあ今日ここにくるのはこれで全員なのだが。詳しくはそこにいる村長のガイル殿に聞いてみてもらえるだろうか。 よし! 騎士達は村人達の護衛が終わったから今日は王宮に戻るぞ!!」
……何かあったんだろうか?
「わかりました!」
俺がグレインさんを、神妙な顔で見ると彼が眉尻を下げた。
「ゆっくりと話すことが出来ずに済まない。実は北の方でゴブリンの巣が発見されたと報告があってな。だが、ショッピングモールに派遣される予定の文官を6人ほど置いていくから使ってくれ! またセイン様と共に会いに来るっ!」
そして、バタバタと騎士達と行ってしまった。
「わかりました! また遊びに来てくださいねー!!」
俺は聞こえるように叫びながら手を振った。
なんだか嵐のようだったな。
「──カワグチ様。私がこちらにきた文官を取りまとめている”グレイス”と申します。住人達の食事の用意や名簿のチェックは僕達の方でしますね。ただ、お部屋への案内だけは手伝って頂いても宜しいですか?」
メガネをかけた文官の一人が挨拶に来た。
よかった。俺が全部やんなきゃならんのかと思ってた。
「はい、もちろんです。あ、これ、セイン様に頼まれてた名簿とそこに住む人の名前を書いたものです」
俺が挨拶すると微笑んでくれた。
「ありがとうございます。では、私達の方で到着した人達の家族の代表者に名前を聞いて、この名簿にマルを付けていきますね」
グレイスさんの周りの文官の人達もテキパキと動き出したので、俺は村長さんに話しかけた。
「えーっと、ラミア村の村長のガイルさんですか? ……皆さん災害に遭って大変な中、よくきてくださいましたね。僕がこの建物の大家のカワグチと申します」
俺が手を差し出すと、ガイルさんも手を差し出す。
「ワシは神獣のペロじゃ!!」
そして、ペロもどさくさに紛れて挨拶をした。
「カワグチ様。ワシらを受け入れて下さるとのことで……。本当にありがとうございます。おーい、皆の者! カワグチ様とペロ様に挨拶するのじゃ!!」
ガイルさんの言葉で次々と村人達が挨拶に来る。そして、文官達に名前を告げていく。
「では人数の多い家族から部屋に案内します。お昼ご飯と飲み物は各部屋にこちらから後で持っていきますので。夕方になったら説明会をするので、ここにお集まり下さい。カワグチ様。では、お手数かけて恐縮ですが、案内だけお願いいたします」
グレイスさんが叫ぶと村人達が頷く。
うーん…税金免除の為とはいえ、結構大変だな。まあこれから楽できるように頑張ろう。
◇◇
六日前。──ラングスチア帝国皇宮に行った翌日のことだった。
早速皇宮からラミア村の名簿が届いた。
「なんだこれ! 思ってたより多いぞ?」
どうやら八人以上の大家族もいるらしく、合計百五人もいる、とのことだった。
──このままでは部屋が足りない。
どうしようかな……。
顎に手を当てていると、目の前にタブレット画面が現れた。
『間取りを変更しますか? ※スキルポイントを利用すれば、館内に部屋以外の施設も作れます』
どうやらこのマンション、広さを守れば部屋の間取りは自由に変えられるらしい。
まあ、部屋以外の施設はおいおいだな。
「便利すぎるだろ……」
単身者用の部屋を残しつつ、家族向けの部屋をいくつか広げる。家賃は広い部屋は流石に上げさせてもらうことにした。
その結果、今俺達が住んでいるマンションは単身と三人家族向けにして、三〜五階は七階と同じ間取り(二部屋1LDK、一部屋3LDKの各階三部屋)にした。
この前建てたもう一つのマンションは大家族やファミリー向けにする。
それでも部屋が足りないと判断し、結局マンションをもう一棟建てておいた。ちなみにMPは一晩寝ると回復するらしかった。
他の二つのマンションにも七階に俺達が住んでいるゲストフロアを作っておいた。
その上、セインさんに頼まれてたので、誰がどこの部屋に住むか名簿を作っておいたのだ。
中々大変な作業だったがこれで、やっと村人達を受け入れる準備が整った。
ちなみに「家電などの使い方マニュアル」はフィオナさんが作成してくれた。
サクサク見やすいものを絵まで入れて作ってくれて、「流石、この人元王子の婚約者だな」と感心してしまった俺だった。
◇◇
「見てみて! お母さん、ベッドも椅子も、すごいふかふか!!」
部屋を案内すると、子供達が喜んでいる飛び跳ねている。
「ほ、本当にこんなに立派な所に住んでいいのですか?!」
村の人たちは部屋の設備を見て、あまりの立派さに恐縮しっぱなしだった。
俺は同じフロアの家族を、まずは一気に案内していった。
殆どは文官達がやってくれたが、それでも一時間近くかかってしまった。
「はぁ……疲れた。久しぶりに働いた」
「まあ、それでも文官達が大半やってくれたんじゃし。とりあえずゆっくりするのじゃ」
ペロに慰められながらイートインスペースでぼーっとする。
「……ソフトクリームでも食うか。ペロも食うか?」
「もちろんじゃっ!」
俺は頷くとペロにハーマンさんに作ってもらったソフトクリームを手渡す。
「ねえ、あの人数が引っ越してくるって大丈夫なの?」
ハーマンさんが不安そうにしている。
「はい。ショッピングモールも作ったし働く場所もあるから大丈夫だと思いますけど」
俺の言葉に彼女が少しだけホッとした顔で頷く。
「ならいいけど」
「コンビニも何人か雇う予定なのでハーマンさんも、もう少し休めるようになると思います。その代わり、いろいろ教えてあげて欲しいですけど」
すると、少しだけ彼女の顔が綻んだ。
「本当?! それは嬉しいかも。あ、でもそしたら私のお給料減るんじゃ……」
ハーマンさんとの話が聞こえたのか、タブレット画面が出てきた。
『リリ・ハーマンをペロマートの店長にしますか? ※給料が二倍になります』
そのメッセージに俺は目を見開く。
「ハーマンさん、店長になってくれれば給料倍になるらしいですけど。やります?」
「っえ!! 本当に? やるっ!」
俺の言葉に彼女が満面の笑みで頷いたので、YESを選択する。
──すると、彼女の身体が青白く輝いて、黒い帽子をかぶっており、名札には店長と出ていた。
「おお、凄いですね! 何人か雇うことになると思いますんで、面接はハーマンさんに任せてもいいですか。一緒に働くことになるの、ハーマンさんですし」
「うん、わかった!!いいわよ」
こうして新たにハーマンさんが店長になることが決まり、コンビニもずっと有人仕様に変化することになった。
◇◇
「──各部屋にお昼ご飯も無事届けてまいりました。カワグチ様もお疲れ様でした」
暫くすると、グレイスさん達がやってきた。
「いえいえ。そちらこそお疲れ様です。今の所問題とかはなかったですか?」
俺の言葉に文官達が顔を見合わせる。
「──ええ。ただ、実はこれで全員ではないのです。騎士団長のグレイン様もちらっと全員ではないと伝えていたかと思うのですが。……その。老人が何人か住み慣れた村を離れたくないと言っておりまして」
え、まじで?
俺は目を見開いてしまった。