軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外7 森の奥にて

飛行船に残っていたアンブラムを通してアルファに連絡。シリウス号に俺達の上空まで来てもらい、それに乗ってみんなで問題の場所まで移動する。この場合、光魔法の迷彩を施し、大きな魔物を刺激しないようにするのが望ましいだろう。

当然ながらシリウス号に妖精達を満載する形での移動となるわけだが……妖精達は、シリウス号の艦橋内部に興味津々といった様子だ。

船に乗り込んでもらうにあたり、とりあえずの諸注意は伝えてある。妖精達は外部のモニタを覗き込んだりしているが、そのへんは弄られても問題ない個所である。

操船に必要な機能や、メインモニターは操船席周りに集中しているからな。

「ここに触れて遠くの物を拡大したりできる」

「ほうほう。人間達の作るものは面白いのう……」

シーラがモニターの使い方を説明するとロベリア含めて妖精達が身を乗り出して聞いていた。

あちこちに腰かけたりと、状況が少々落ち着くのを待ってから声をかける。

「ではそろそろ、シリウス号を発進させます」

「む。では……道案内をさせてもらおう」

モニターを見ていた女王だが、俺の言葉に振り返るとこちらに飛んできた。というわけで、ゆっくりとロベリアの指示する方向へとシリウス号を動かしていく。

「人間達に森の奥の遺物を明かすか否かは我等としても悩みどころでな。ドラフデニアの王とそなたのような者を見なければ決断も難しかった」

「ふむ。確かに……。遺物の正体が分からなければ判断は難しいところだろうが……」

ロベリアの言葉にレアンドル王が腕組みをする。

「昔から何かがあるのは把握していたが……どうも状況が悪くなってきているようでのう。今日そなたらに会わなければ、見込みのありそうな冒険者達を見繕って、と考えていたのじゃ」

そうだな。妖精達と共に森の中で自由に暮らしているわけだし、あまり森の奥への人間達の干渉や立ち入りを招くようなことは、妖精の長としては避けたいだろうとは思う。

それでもロベリアは俺達に見てもらうことを選択したわけだ。俺達の立場や森の奥の遺物に対する危機感や、予感めいたものがその判断を後押ししたのだろう。

「遺物、ね。古代文明の由来でないと良いのだけれど」

クラウディアが眉根を寄せる。古代文明……つまり月由来の遺産が地上に残っている可能性をクラウディアは心配しているのだろう。

「どうだろうね。まだ現時点では何とも言えないし」

月の民やドラフデニアやその前の王国――アケイレス王国等とは関係なく、どこぞの魔術師の個人的な研究の結果、という事も有り得る。だが実際がどうであろうとクラウディアが気に病む必要はないだろう。俺の言葉にマルレーンやイルムヒルト、それにヘルヴォルテも同意するように頷いた。

森の上空を奥へ奥へと進んでいく。シリウス号で進むのであれば直線的で障害物もないから簡単なものだが……森の中を実際踏破するとなるとこれは相当骨が折れるだろう。奥地に進めば強力な魔物との遭遇も予測されるし、人も立ち入らないから枝葉を切り分けて進まないといけない。

妖精の森と一口に言うが、森は結構広大だ。まあ、国土そのものが大森林だという獣王の国に比べればそこまででもないのだろうが。

「あのあたりじゃな。地形が少し盛り上がっているのが見えるかのう?」

と、ロベリアがモニターの向こうの景色を指し示す。確かに、森の樹冠が少しだけ小高くなっている場所があるが……。

「あれですか」

「うむ。あれの裏側じゃな」

ロベリアに確認を取り、モニターの中央にそれを捉えながら真っ直ぐに進む。

小さな山というか小高い丘というか。地形が盛り上がっているところを植物が覆っているわけだ。

ロベリアの言葉に従い、丘の裏側へと回り込めば……。

「これは……」

「遺跡……でしょうか?」

グレイスがモニターに見えるそれを見ながら言った。

木々の間に、石造りの何かが見える。遺物というからにはそこに何かがあるのだろうが……。

「危険が予想されますので、陛下はここでお待ち頂けますか?」

「余が立ち会わぬのでは他国の客人に協力を求めた道理が通らぬな。ドラフデニア王国やアケイレス王国に関するものであれば、余が直接見ることで分かるものもあろう。何、口うるさい連中はここにはおらんのでな」

レアンドル王がにやりと笑う。近衛騎士達は苦笑しているし、ペトラは若干困っている様子だが。

あー。シーカーやハイダーがあれば映像は送れるが……それではレアンドル王は納得してくれない、か。近衛の騎士達も、止めるというよりはレアンドル王の考えや行動に苦笑しながらも誇りに思っているようにも見える。

だがまあ、確かに。頼んでおいて自分だけ安全なところに、というのは、俺がレアンドル王の立場だったとしても願い下げだろう。

「では、護衛をつけますので……慎重に行きましょうか」

「異存はない。余としても差し迫った危機というのであれば、現場に自らというのは考えたかも知れぬが……ロベリア女王も見てきているのだろう?」

「確かに、そうですね」

後は魔物の接近、魔法的な仕掛けや罠を見逃さないように注意しながらというのは、俺達も現場に降りるのだし同じ立場ではある。

「私もご一緒します」

と、ペトラもやる気満々だ。ロベリア女王は自分で案内する気のようだし。

まあ、小さな妖精達が一緒となると流石に守り切れないから、彼女達にはここで待っていてもらおう。

そんなわけで、シリウス号の高度を下げられるだけ下げて、妖精の森に降下する。

どれぐらいの間、人が足を踏み入れていないのかは分からないが……もうほとんど鬱蒼とした原生林に埋もれた状態だ。

小高くなった地形を利用するように石造りの柱や、上に登るための階段のようなものが見えるが、木や草が伸び放題になってあちこち崩れたりしている。

「神殿……いえ、祠かしらね?」

「大規模ではないけど……何かしらの魔法的な意味はあるんだろうな」

ローズマリーの言葉に答える。魔力反応は妖精の森全体にかかる魔力のせいで分かりにくくはあるのだが……。

「祠の上――建物の内部に強い反応があるみたいだ。強い生命反応は――ライフディテクションで見る限りでは見当たらないかな」

と、現時点で分かることをみんなに伝えておく。

「ここの事は気になっていて、時々様子を見に来ていたのじゃがな。いつだったか、ここに、もっと森の奥からやってきたオーガの奴めが住み付きおってな。そ奴めがここにある何かを壊したか、崩したかしたのかも知れん。あの奥から怪しげな魔力が漏れ出したのはそれからのことでな」

「そのオーガは……どうなったんですか?」

「不味いと思って我らの術で惑わし、森のずっと遠くに追いやってやったわ」

と、ロベリアは得意げに腰に手を当てて胸を張る。

妖精達はそういう幻惑も得意とするからな。思考が単純なオーガには効果も大きかっただろう。

「祠の周囲を囲むように――魔法陣……結界が張られていた……のかしら」

クラウディアが足元を見ながら眉根を寄せる。年月と共に埋もれてしまっているが、足元も石畳のような建造物の一部らしい。

「魔法陣か……。全体像としては……」

片眼鏡で地面に埋もれた弱い魔力反応を辿る。そうして判明したおおよその魔法陣の形や記述を土魔法で再現してやる。

「地脈を利用して魔力を使うためのもののようだけれど……周囲に影響が出ないように遮断もしていたようね。私達の使う術式とは違うようだけれど」

その陣を見て、クラウディアが言った。

……まず、月の民の遺産という線は消えた、か?

「経年劣化で木の根が術式を崩してるな。結界を組んでたのなら、大分効力が弱まってるはずだ」

それを直してやって一件落着というのなら話は早いのだがな。

建造物の様式等々、詳しく見てみる。倒れていた柱の汚れを除けて、それを見てもらう。

「アケイレス王国か、建国当時のドラフデニア王国か。その頃のもののように見えるがな」

「その頃の様式は共通していますし、文化面で引き継がれた部分も多いのです。両者の判別はつきにくいですが、少なくともその時代のものではないかと」

レアンドル王とペトラが言う。2人の見解は一致していると。

「やはり……祠の中を見る必要がありそうですね」

何か魔法的な目的を持って作られた代物であるのは間違いない。何かを封印するためか、それとも、研究を進めていたのか。

生命反応はないが、漏れ出ている魔力は異常だ。ゴーレムや魔法の罠などには十分に警戒すべきだろう。