軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第29話 ポポ君は、物知りである

トト兄ちゃんたちが、変な人を村に連れてきた日のこと。

僕は、ずっと忘れないと思う。

その人は、見たこともない服を着ていた。

なんだかすごく疲れているみたいで、ユルダおばあちゃんと話している途中で、いきなりバタリって倒れちゃったんだ。

みんなビックリして、大騒ぎになった。

トト兄ちゃんは、その人が「すっごく強い探索者なんだ!」って、興奮して話してた。

「この人は本当に凄い探索者だと思います。ダンジョンの外でも襲ってきた魔物を、石ころ一つで追い払ってたんだから!」

ピピ姉ちゃん、ザザ兄ちゃんもどれだけ凄いのかを身振り手振りを交えて話しているのを、僕は物陰からこっそり聞いていた。

探索者。

それは、この世界では特別な人たちだ。

強い探索者は貴族さまみたいに扱われたり、王様になって、すごい人だと神様みたいに拝まれることもあるって、おじいちゃんたちが言ってた。

そんなすごい人が、どうしてこんな「捨てられた場所」なんかに来たんだろう?

そんな凄い人は、倒れたまま動かなくなっちゃったから、村の皆が集まって、どうするか相談が始まった。

「恩を仇で返すわけにはいかないよ。このお方は、トトたちを助けてくれたんだろ?」

ユルダおばあちゃんが言った。

リリ姉ちゃんも、トト兄ちゃんたちも、それに強く頷く。

でも、ガル兄ちゃんだけは反対した。

「駄目だ! こんな知らない奴、村に入れたら何されるか分かんねぇ! もし目を覚まして俺たちを襲ったらどうするんだよ! ここは廃棄地域だぞ。まともな人間が来る場所じゃねぇ!」

ガル兄ちゃんの声は大きくて、怖かった。

でも、たしかにそうかも。

「そうだねぇ。ガル、アンタの言うことは何も間違っちゃいないよ」

ユルダおばあちゃんは、静かに言った。

「じゃあ!」

「でも、それはできない」

「どうして!」

「私たちが、人間だからだよ。それに、こんな村の状況じゃ、一人や二人増えたところでなにも変わんないよ」

難しいことは分かんないけど、けっきょくおばあちゃんたちの言う通り、その人に水や薬草をあげることになった。

そうだよね。喉が渇いたり、しんどいのはツラいもんね。僕もお腹が痛いときは、誰かに優しくしてほしいって思うから。

二日間たって、その「おじさん」が目を覚ましてからは、本当にビックリすることばっかりだった。

まず、おじさんがどこからかお肉を取り出したんだ。

見たこともないような山盛りのおにく。

これまで食べたことがないような、お口の中でとろける美味しいお肉。

街に住んでた記憶があるおじいちゃんたちも、「こんなの王様でも食べられないぞ!」って涙を流して食べていた。こんなに美味しいのに泣いちゃうなんて変なのって笑っちゃった。

それから毎日、おじさんがお肉を配ってくれるようになった、お腹いっぱい食べられるようになったんだ。

ある日、キレイなカニの甲羅が皆に配られた。

ひっくり返して、スープとかを入れるんだって。

「食器」って言うらしい。

今までは葉っぱとか木切れを使っていたから、なんだかよく分かんないけど、ツルツルしていてとってもきれいだ。

お肉をもらうときに、これだと手が熱くならないからとっても嬉しい。僕はこれを宝物みたいに大事にしている。

いいこともあったけど、怖いこともあった。

夜、村にモンスターがやってきたんだ。

僕らは戦えないから、いつものように隠れ場所へ逃げたんだけど、どうやらおじさんが一人ですぐにやっつけちゃったらしい。

おじさんは「大したことない」って言うけど、本当かな。

トト兄ちゃんやガル兄ちゃんだけだったら退治できなかった気がする。

お母さんが殺された時にもおじさんがいてくれたら、僕はまだお母さんと遊べたのかな。

次の日、お水を飲もうとしたらなんか臭かった。

でも、喉が渇いてるし、仕方ないので飲んだら、すっごくお腹が痛くなっちゃった。

せっかく食べたお肉も口からでちゃって、勿体ないなぁなんて思った。

すっごくしんどくて、熱も出て、このまま死んじゃうのかなって思った。

そしたら、リリおねえちゃんがやってきて、緑色のお水を飲ましてくれた。

苦いのかなって思ったけど、飲んだらお腹の痛みや気持ち悪さがスッとなくなったんだ。

おじいちゃんたちが言うには「ポーション」っていう、貴重なお薬らしい。

それも、おじさんがくれたんだって。

そのあと、おねえちゃんがお水を持ってきてくれた。

また臭いのを飲まなきゃいけないのは嫌だなって思ってたら、見たことないくらいキレイなお水だった。

キラキラしてて、透き通ってて。

飲んでみたら、冷たくて美味しくって、ごくごく飲んじゃった。

水をキレイにしたのもおじさんらしい。

探索者って凄いなぁ。

そして今日の夜。

おじさんが、リリ姉ちゃんやガル兄ちゃん、ユルダおばあちゃんたちを小屋に集めて、何やら難しそうな話をしていた。

僕は小屋の入り口から、こっそり中を覗いていた。

話の内容はよく分からなかったけど、みんなの様子がいつもと違った。

おじさんが何かを言うと、みんなが一斉に「はい!」って返事をして、深く頭を下げたんだ。

やっぱり、おじさんって凄い人なんだ。

いつもは怒ってばかりのガル兄ちゃんまで、見たことないくらい大きな声で「はい!」って返事をしてたもん。

よくわかんないけど、明日の朝、おじさんが何かをくれるらしい。

村の友達やおじいさんおばあさんと話してて思ったんだけど、多分、おじさんが「神様」ってやつなんだと思う。

だっておじさんが来てから、いい事ばっかりだもん。

お腹はいっぱいだし、水は美味しいし、誰も死なないし、怖いモンスターもいなくなった。

おじさんは「俺はただのおじさんだ」って言うけど、きっと照れ隠しなんだ。

僕は、おじさんがくれたカニの甲羅を撫でながら、夜空を見上げた。

明日はどんな楽しいことがあるんだろう。

こんな風にワクワクして眠れるのは、生まれて初めてだった。

いつかお母さんに会ったら、神様っておじさんの見た目をしてるんだよーって教えてあげよう。