軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

59

「やるわね」

「リアもな」

始まってからすでに十分は経っただろうか。

お互いに一歩も引かない本気の打ち合いが続いている。

こうして本気を出すのはいつぶりだろうか。

最初はジークに対する腹立たしい思いで剣を振っていたが、次第にその思いは薄れ、今はただただ楽しい。

それに改めて思った。

この世界で私を受け止めてくれるのは 彼(ジーク) しかいないと。

だけどずっとこのままというわけにはいかない。

「ねぇ。そろそろ教えてくれてもいいんじゃない?」

あなたが何を考え、何を思っているのか。

「そうだな」

「ふふっ。それじゃあさっさと勝ってたっぷりと話を聞かせてもらわないと、ね!」

私は自分の足に身体強化の魔法をかける。

そして地面から蹴り出す瞬間、さらに魔法で風を起こしその風に乗った。

「はぁっ!」

同じく身体強化が使えるジークには、どうしたって力では敵わない。

それならば私はスピードで勝負する。

「ぐっ……」

これを受け止めるなんてさすがジークだ。

でもほんの少しだけ生まれた隙。

それを見逃してあげるほど、私は甘くない。

「さぁこれでおしま――」

勝ちを確信したその時。

「悪いな。今回だけは勝たせてもらう」

「なっ……」

さっきまでたしかに目の前にいたはず……

それなのに気づけばジークに背後を取られ、そして首には剣が突きつけられていた。

「……」

信じられない。

私の目には魔法がかかっている。

だからいくら速く動こうとも、私が見失うわけがない。

それなのにジークを見失った……いや違う。あれは見失ったんじゃない。

消(・) え(・) た(・) んだ。まるで瞬間移動でもしたかのように。

でもそれって……

「まさか……転移魔法?」

理論上不可能ではないものの、誰一人使うことのできなかった幻の魔法。

魔法とは想像する力だ。

映画にドラマ、アニメや漫画そしてラノベ……

前世で様々なモノに触れてきた私にとって、想像するのは容易なこと。

でもそれらを知らないこの世界の人にとっては、そう簡単なことじゃないはずなのに……それをジークはやってのけたというの?

「…… これ(転移魔法) のために半年もの間連絡をくれなかったの?」

「本当はもっと早く習得する予定だったんだけど、思ったより時間がかかってな」

「……じゃあ今ここにいるのも?」

「ああ。ただまだ使い慣れてなくて着いた途端、魔力切れになってな。会いに来るのに三日もかかっちまった」

「なっ……」

私は急いで振り返り、ジークの両腕を掴み身体を確認する。

「身体は大丈夫なの!?」

「もう大丈夫だ。魔力も全部戻ってる」

ジークは簡単に言うが、場合によっては命に関わってくることだってある。

それくらい魔力切れはとても危険なのだ。

「っ、どうしてそんな無茶なことをしたのよ!」

「リ、リア」

「ジークにもしものことがあったら私……」

もしものことがあったら、きっと私は耐えられない。

始まりはジークの告白だったけど、今は私も心からジークのことを愛している。

「ごめん」

「……ねぇどうして?どうしてそんな無茶をしたの?」

「……堂々とリアの隣に立ちたかったんだ」

「私の隣に……?」

今でも私たちは同じ場所に立っている。

それなのに隣に立ちたいなんて、一体どういう意味なのか。

「ああ。リアは魔法に剣に商売に勉学……たくさんの才能がある。でも俺には剣の才能しかない。だから付き合うようになって何度も考えたんだ。俺と付き合うより別れた方がリアのためになるんじゃないかって」

「なっ!そんなことあるわけ」

「でも情けないことに、俺はリアを手放すことができなかった」

「っ」

「それなら俺は努力し続けるしかない。ただ俺がどれだけ努力しても、リアを越えることができないのは分かってる。だから一つだけでもいい。リアに追い付きたい。そうすればリアの隣に立てる資格があるんじゃないかって」

知らなかった。

ジークがそんなことを考えていたなんて。

「……だから転移魔法を?」

「ああ。この世界でリアにしか使えない魔法を使えるようになれたら、リアに近づけると思ったんだ」

「ジーク……」

「それに会いたい時はすぐに会いに行けるだろ?」

「!」

ジークはいつだって私のことを考えてくれていたんだ。全部私のため……

「まぁ今回は色々とギリギリになっちゃったけど……ってリア!?」

私はギュッとジークに抱きついた。

「……」

「リア?」

「……私だってジークのいない人生なんて考えられないよ」

「っ!」

「だからあんまり無茶なことはしないで」

「……ああ。リアを悲しませるようなことはしないって約束する」

「うん、約束よ?……ねぇジーク」

「どうした?」

「あのね……」

こんなことを言うのは柄じゃないって分かってる。

だけど今この時だけは、理性よりも感情を優先してもいいよね?

「……これからもずっと一緒にいてくれる?」

普段なら絶対に恥ずかしくて言えない言葉。

でも今なら言えると思ったのだ。

果たしてジークの答えは……

「当たり前だ」

「……本当?」

「ああ。むしろリアが嫌だと言っても離れるつもりはないからな。覚悟しろよ?」

未来のことなんて分からない。

たとえ望んだ未来であっても、幸せになれるかなんて誰にも分からないもの。

だけど私は確信している。

彼と共に生きる未来に、必ず幸せがあることを。

「……ええ、望むところよ」

「リア」

「ジーク」

私たちはそれ以上言葉を発することはなく、ただお互いの存在を確かめ合った。

そうしてどちらからともなく顔が近づいていく。

月明かりによって映し出された影が重なり合っていたことは、私たち以外誰も知らない。