軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

フィンメル②

そうして迎えた大会当日。

まさか一回戦の対戦相手が、彼女だとは思いもよらなかった。

女子生徒で唯一の参加者である彼女。

しかし女子だからと油断するべきではない。

どうやって勝ったのかは分からないが、ランドルフに勝つほどの実力があるのはたしかだ。

それにクラウス様に言われた。

『彼女は魔法が無くても強い』と。

そしてクラウス様の言うとおり、彼女は強かった。

自身の注意が逸れてしまったのもある。だけどそれ以上に、彼女は最後まで強さを悟らせなかった。

そんなことができるのは、真の強者のみ。

要するに私はこれっぽっちも本気を出してもらえずに、負けてしまったのだ。

悔しさのあまり、らしくないとは分かっていたものの、気づけば彼女を呼び止めていた。

なぜ本気を出さなかったのかと問いかければ、彼女は『妖精のせい』だと言う。

すぐにそれがメルリルのことを言っているのだと理解した。

だから忠告した。妹に何かすれば許さないと。

彼女は今後一切関わらないと言っていたが、信用なんてできない。

妹を守れるのは私だけ。

そう思っていた、それなのに……

『お、おにい、さま……』

大切な妹が目の前で苦しんでいても、私はなにもできない。

どうすればいい?どうすれば……

『ごちゃごちゃうるさいのよ!妹を助けたいんでしょう?それなら私の言うことを聞きなさい!』

とても令嬢が口にするとは思えないような言葉。

しかしその言葉に妹も、そして私も救われたのだ。

「フィンメル!」

あのあと屋敷に戻り、医師の診察を受けていると、父がやって来た。

従者からの連絡を受けて、急いで戻ってきてくれたようだ。

「父上!」

「メルリルの容態は?」

「回復魔法をかけてもらったので今は落ち着いています」

「そうか……無事で良かった」

そう言って眠るメルリルの頭を撫でる父。

仕事柄、普段は表情を出さない父が、今は安堵の表情を浮かべている。

それだけ心配していたのだろう。

しかしその表情はすぐに驚愕へと変化することになる。

なぜなら医者から衝撃の事実を告げられたから。

「お嬢様の病気が完治しております!」

私も父も驚くしかなかった。

「なんだと!?」

「そ、それは本当か!?」

「はい!何度も確認しましたが、間違いなく治っております!」

「一体どういうことなんだ……?」

「……」

もしかして彼女が?

まさかと思った。たしかに助けるとは言っていたが、それは一時的なものを指しているのだと思っていたのに。

しかしこれは……

「……フィンメル」

「っ!は、はい」

「先ほど回復魔法をかけてもらったと言っていたが、誰にかけてもらったんだ?学園にいた治癒士か?」

「そ、それは……」

あの時彼女は、魔法のことは秘密にしてほしいと言っていた。

私たちは助けられたのだ。その約束を守らないわけにはいかない。

だから父の問いかけに黙るしかなかった。

「……まぁ病気が治ったことは喜ばしいことか」

私の反応で何か察したのだろう。

父はそれだけ言って、あとは何も聞いてくることはなかった。

そのあと父は医者を連れ部屋から出ていった。きっと口止めをするためだろう。

治療方法のない病が治ったのだ。この事実が公になれば大騒ぎになるのは間違いない。

(もしもそうなれば彼女に嫌われてしまうのでは?……っ!)

なぜ私はそんな心配をしているのか。

いや違う。私はただ彼女に礼をしたいだけ。それだけ。

(あ、でも……)

そういえば去り際、私たちには二度と関わらないとハッキリ宣言していたな……

そのことを思い出した私は、一人頭を抱えることになった。