軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

フィンメル①

(どうすればいいんだ……)

私――フィンメル・イエローは頭を抱えた。

上級貴族イエロー家の長男として生まれた私には、父と三つ年下の妹、メルリルがいる。

父はこの国の宰相だ。日々陛下と王国を支えているため忙しく、あまり家にいない。

母は幼い頃に亡くなっており、私とメルリルはいつも二人で過ごしていた。

メルリルは生まれつきの病気で身体が弱い。

だから一日のほとんどをベッドの上で過ごすことが多く、私たちは絵を描いたり絵本を読んだりして遊んでいた。

しかしそれも私が六歳になり後継者教育が始まると、忙しさから徐々に少なくなっていく。

そしてその後継者教育では、父から同じ言葉を繰り返し言われることになった。

『全てを疑え』

そうすることで国も家族も守れるのだと。

最初は意味が分からなかった。なぜ疑うことで守ることができるのか。

今思えばこの言葉は当主として、また宰相としてたくさんの人間を見てきたからこその言葉だったのだろう。

けれど幼い私にその言葉はまだ早く、そして重かった。

少しずつ心がすり減っていくのが分かる。だけど私は嫡男だ。

やめることなんてできない……

『おにーさま!』

そんな私を癒してくれたのがメルリルだった。

病気のせいで辛い毎日を過ごしているはずなのに、いつでも笑顔で私に寄り添ってくれたのだ。

私も力になりたい。

そう思うようになった私は、後継者教育の合間を縫って医学の本を読み漁った。

今の医学では一時的に症状を軽くすることしかできない。だけどきっと何か方法はあるはず。

必ず治してみせると、一人心の中で誓った。

それから数年が経ち、十歳になった私に大きなチャンスが巡ってきた。王太子殿下の側近にならないかと声がかかったのだ。

王宮に行けば新しい情報や何か手掛かりが手に入るかもしれない。私は喜んでその話を受け入れた。

結果としては手掛かりを見つけることはできなかったが、王太子殿下であるクラウス様と信頼関係を築くことができた。

クラウス様は優秀で聡明なお方だ。きっと力になってくれるはず。

そんなクラウス様は、ブルー家の令嬢との婚約を控えていた。メルリルも婚約者候補ではあるが、病気のことを考えれば選ばれることはないだろう。

ただブルー家の令嬢はあまり良い噂を聞かない。

それでも年回りの合う上級貴族の令嬢は彼女しかいないので、確実に彼女が選ばれることになる。

私の推測であるが、恐らくお飾りの王妃になって後継ぎを産めば用無しになるのではないか。

不憫だとは思うが、妹じゃなくてよかったと密かにホッとしていた。

けれど学園入学の直前、急遽クラウス様に呼ばれ登城すると、そこでブルー家との婚約が白紙になったことを伝えられた。

驚いた。

上級貴族家との婚約は、クラウス様の地盤を磐石にするためのもの。

国王陛下もブルー家の当主も了承済みだと耳にしていたのに、なぜ今さら白紙になるのか。

しかしその理由は語られることはなく、その代わり彼女を敵に回すなと告げられただけ。

意味が分からない。

クラウス様を問いただしたくなったが、そんなことできるわけもなく、ただ側近としてその指示に従うしかなかった。

私は普通科に在籍している。クラウス様と同じだ。

普通科を選んだ理由、それは人脈を広げるため。

剣も魔法も人並み以上に扱うことができ、後継者教育もほとんど終わっている今、多くの貴族が在籍する普通科で人脈を広げる方がいいという父が判断したのだ。

私もその通りだと思った。それに人脈が広がれば、もしかしたらメルリルの病気を治す手がかりが見つかるかもしれない。

そんな期待を胸に学園に入学したが、入学してすぐ驚くことを耳にすることになった。

魔法科の委員長が、あのブルー家の令嬢になったのだと。

これまで一切表に出ることなく、謎に包まれていた令嬢。

我儘令嬢や不細工令嬢なんて呼ばれていた彼女が、まさかマティアスより優秀だとは思いもよらなかった。

これは調べてみた方がいい。そう思い、クラウス様には内緒で彼女のことを調べた。

しかしどれだけ調べても、学園に入学する前のことは何も分からない。分かったのは学園に入学した後のことだけ。

成績優秀、容姿端麗でありながら、下級貴族の娘と親しい間柄。それにランドルフに勝つほどの実力の持ち主……そしてつい先日、ブルー家から除籍されている。

調べれば調べるほど、彼女がどのような人物か分からなくなる。さらに謎が深まるばかりだった。

これ以上は調べても何も分かりそうにない。

あとは剣術大会が終わってからにしようと、この件は一旦置いておくことにした。