軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

21

次の日。

「おい、お前!」

青い髪に青い瞳の男が叫んでいる。

「はぁ……」

思わず溜め息がこぼれる。

たしかにまた来るとは思ってたよ?でもそれが次の日だなんてさすがに思ってなかった。

昨日あれだけ恥をかいたのだから、せめて一週間後くらいかと思っていたのに、メンタル強すぎない?

そんなにメンタル強いなら、いつまでも昔のことを引きずるなよ!って突っ込みたい。もちろん突っ込まないけどね。

しかも門で待ち伏せだなんて……普通に怖いから。

ただここにアナベルがいないことだけは幸いだ。怖い想いをさせずに済んでよかった。

「おい、聞いているのか!」

「……もしかして私のことを呼んでます?」

「そうに決まっているだろう!お前以外に誰がいるんだ!」

ですよねー。

だってもう日が落ちる直前ですからね。

今日はたまたま図書室で本を読んでいてこんな時間になってしまったけど、普通ならとっくに帰ってます、普通なら。

それをこの男はずっと待っていたのか。怖っ!

「チッ、こんな時間まで待たせやがって……」

「それなら帰ればよかったのでは?」

誰も待っててなんて頼んでませんが?

「なっ……父上がお前に会うためにわざわざタウンハウスに来てくださっているんだぞ!」

「そう言われたって別に私は会う用事なんて……あ」

私には会う用事なんてない、そう思ったものの、ひとつだけ会う用事があったことを思い出した。

(ようやく除籍の手続きをする気になったのね!)

そういうことなら早く言ってくれればいいのに。それなら今すぐ用事を済ませてしまおう。

「馬車を待たせているからさっさと」

「じゃあ私は行くから」

「は?何を言って」

目指すは王都にあるタウンハウス。

「レッツゴー!」

「は?…………は?」

一人取り残された男の間抜けな声は、誰の耳にも届くことはなかった。

「到着!」

――ガターン!

「ん?今なにか大きな音がきこえたような……」

「お、お前……!」

どうやら先ほどの音は、驚いてイスを倒した音らしい。ずいぶんと古典的な驚き方である。

「ふふっ、ごきげんよう?」

「なぜここに……」

「なぜって、私を呼んだのはあなたでしょう?もう忘れちゃったの?」

そう。私が跳んできたのはタウンハウスにある父の部屋。

「……ダミアンは?ダミアンはどうしたんだ!」

「え?もちろん置いてきましたけど?」

「な……」

「だって早く用事を済ませたかったんですもの」

馬車なんて時間の無駄だし、あの男と一緒の空間なんて一秒たりとも御免だ。

「お前……」

「そんなことより除籍の件です。あとは私がサインするだけなんですよね?それなら早く書類を」

「……除籍しない」

「はい?今なんて」

私の耳がおかしくなったのかしら?

理解不能な言葉が聞こえてきましたけど……

「除籍はしないと言ったんだ」

「……なぜです?」

「……除籍になれば貴族ではいられなくなるんだぞ?苦労するのが目に見えている。そんなの親として見過ごせるわけないだろう。これはお前の幸せのためだ。分かったな?」

白々しい。何が親としてだ。

これまで一度だって親として何かしてくれたことなんてないのに、今さらすぎてむしろ笑えてくる。

「お前は立派なブルー家の一員だ。とりあえず寮で生活するのはやめて早くこちらに」

「……ふふ、ふふふふ」

「な、何を笑っている。私は今真面目な話をだな」

「あはははは!私の幸せですって?おかしなことを言うのね。素直に私から得られる利益が惜しいと言えばいいのに」

「わ、私は決してそんなこと」

「もう結構です。あなたに除籍する気がないことは分かりました」

「じゃ、じゃあ」

「これはせめてもの情けでしたのに……」

除籍の手続きなんて、やろうと思えばいつでもやれた。

でもやらなかったのは、せめてそれくらいの誠意は見せてほしかったから。

それさえやってくれれば【この家に干渉しないように】取り持ってあげたのに。

この男は選択を誤ったのだ。

「もういいです。すべて私の方で手続きしておきます」

「何を言ってる?そんなことできるわけ」

「できますよ?私を誰だと思っているんですか」

S級冒険者であり天才魔道具師であり王室御用達商会の商会長だ。それくらいなんてことない。

「では私は手続きの用意がありますので」

「ちょ、ちょっと待て!話を」

「ああ、そうだ。今回のことは私の方からお祖父様と伯父様に伝えておきますね」

「なっ!どうしてそれを知って……や、やめてく」

「それではさようなら」

めんどう事はさっさと終わらせてしまおう。

私はこれからやるべきことを思い浮かべながら、再び魔法を発動したのだった。

そのあと……

「どうしてこんなことに……」

さきほどまで私が居た場所では、一人の男が頭を抱えていた。