軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外編ー9.理由

馬鹿子息が使っていた部屋にあった女性用の髪飾りとハンカチ。

それを見た馬鹿子息の父親も、目を見開いていた。

「お前、まさか!」

「タクラート伯爵がちゃんと魔物を討伐していれば、彼女は死なずに済んだんだ! 彼女は被害者だ! 俺が代わりに魔物を全滅させてやるんだ!」

あー、なんとなく読めるよな。

「申し訳ない。説明させてもらえないだろうか」

馬鹿子息の父親、グラーク伯爵が話し出した。

昨年の事だったらしい。馬鹿子息ことピエーク・グラークの婚約者が魔物の被害にあった。偶然なんだそうだ。間が悪かった、運が悪かったとしか言いようがないと。

グラーク伯爵邸に向かう途中の馬車が魔物に襲われた。抵抗する間もなく、あっという間の出来事だったらしい。

グラーク伯爵邸に行くにはほんの短い距離だが、森の真横を通るのだそうだ。その時に魔物が出てきた。

「直後は流石にショックで倒れるのではと心配しましたが、今年に入ってからは職場にも復帰し息子なりに気持ちの整理がついたのだろうと思っておりました。

それが、この様な馬鹿な事を計画していたとは!」

「魔物が悪いんだ! 彼女は死ぬ必要なんてなかったんだ! ちゃんと魔物を討伐していないからこんな事故が起こるんだ!!」

これは……なんと言うか……

その時、ユキが威圧を放った。

「ヒッ……!!」

馬鹿子息は腰を抜かしている。伯爵2人は胆力があるぜ。堪えて立っているよ。

「どんな理由があろうと、お前はやってはならん事をした。それがまだ分からぬか!」

そうだよ、ユキも被害者だ。

「言い訳にしか聞こえないだろうが、私共も怠慢している訳ではないのだ。魔物は強い。銃で撃った程度では死なないんだ」

タクラート伯爵が言う。

「ピエークと言ったか。お前は実際に魔物を討伐した事はあるか?」

クーファルが馬鹿子息に聞いた。

「あ、ある訳ない! 魔物なんて出会ったら即殺されるじゃないか! 見た事もない!」

父親がまた馬鹿子息を叩いた。帝国の皇子殿下に何と言う口の利き方だ! と怒っている。

「では、これから我々が魔物討伐に出るから付いて来なさい」

げげ! クーファル、マジかよ!

「魔物とはどんなものなのか、実際に自分の目で見るといい。もちろん、私もまだ5歳のリリアスも出る。まさか、リリアスよりずっと大人のお前が行かない等とは言わないだろうな」

うわ……有無を言わせない。クーファルも怒っているんだ。

「兄さま、先にタクラート伯爵のご子息の身体が心配ですので」

「ああ、リリ。そうだね」

この場は任せて、俺はユキとオクソールと一緒に子息夫婦の状態を見る為に部屋を出た。

「リリアス殿下、私は大丈夫です」

「えっと、ご子息は……」

「私はトーモク・タクラートと申します。父からこの領地を継承しております。

私の力不足です。魔物討伐がうまくいかず……」

「トーモク殿、この領地の者だけでどうにかしようとする事自体が無理なんだ。帝国は辺境伯が一手に担ってくれているが、それでも年に数回は騎士団も合同で討伐に出る。攻撃魔法が使える我々でもそうなんだ。

王国は我々とは違う。もっと、国全体の問題として対処しないと無理だ」

「殿下……ありがとうございます」

いや、お礼を言ってもらう様な事は言ってないぞ。それに、王国の問題だからな。俺達はどうしようもないぞ。

3階の伯爵夫人の部屋に子息夫人はいた。ついでに、伯爵夫人も見ておこう。

俺は、鑑定した。まあ、疲労だな。

穢れがなくて良かった。

「皆さん、大変な思いをされたのでしょう。お疲れですね。この邸に医師はいますか?」

「いえ、薬師しかおりません」

「そう。ボクが持っている薬湯を飲まれますか? この国の物ではないので不安でしょうが」

「いえ、殿下。父の様子を見ていれば不安等ありません! 頂けるのでしたら喜んで頂きます!」

おや、そうかい? 俺は、マジックバッグから薬湯を3つ取り出した。

「殿下、それはマジックバッグですか?」

「うん、そうだよ。これは、体力を回復させる為の薬湯です。飲んだら体が楽になるので動きたくなると思うのですが、今日と明日位は安静になさって下さい。伯爵にも安静にする様言っているのですが、お元気で困ります」

「アハハハ、殿下。父はいつもあんな感じです。毒に侵されていなかったら本当に元気な人なんです」

「みたいだね〜、本当困るよ。何度も言っているのに聞いてくれなくてさ」

「うふふふ。殿下、主人が申し訳ありません」

「いえ、夫人。そんな事ありませんよ」

3人に薬湯を飲んでもらった。

「あ、食事は取れていますか?」

「料理人が消化の良いものをと作ってくれていましたから大丈夫です」

「そう、良かった」

「殿下、私も魔物討伐に同行させて下さい」

「トーモク殿、安静にとボクは言いましたよ?」

「しかし、きっと父も付いて行くと思います。絶対にじっとはしていません。私も、実際に見ておきたいのです。私には必要な事です!」

ああ、まあ……そうなんだが。

「ん〜、クーファル兄さまに相談しましょう」

「はい、殿下!」

結局、また同じメンバーで部屋に戻った。

「リリ、どうだった?」

「はい、兄さま。大丈夫です。疲れておられるだけです」

「クーファル殿下、私も同行させて下さい」

「リリ……」

クーファルが俺を見るから、首を横に振っておこう。俺は止めたからね。

「クーファル殿下! 私もご一緒させて頂きますぞ!」

ああ、やっぱりね。トーモクを見るとため息をついている。元気なお父さんだね。

「リリ……」

「兄さま、ボクも止めたんですよ。伯爵には何度も安静にするよう言ってます。もう、仕方ないです。帰りに薬湯を置いていきますよ」

「アハハハ。リリ、そうなのか」

「はい、兄さま」

マジで止めたんだぜ。それより、さっき薬湯を出してから子息のトーモクが俺のマジックバッグに興味津々なんだが。