作品タイトル不明
1
私はエレナ。十七歳。
アルマン伯爵家の娘で、来年には大好きな婚約者レミアンと結婚する予定だ。
三年前、私たちは婚約した。
レミアンは一つ年上で、笑顔が魅力的な、とても素敵な人。
……まあ、ちょっと問題もあるのだけれど。
レミアンには、何より大切にしている幼なじみが二人いる。
ユゼフとネリア。
子爵令息と男爵令嬢で、二人は恋人同士だ。
『二人は僕の大親友なんだ。エレナも仲良くしてくれるよね?』
初めて紹介されたとき、私は笑顔で答えた。
『もちろんよ!』
その頃は、本当に軽い気持ちだった。
だって、まさか、三年経っても、ずっと一緒だなんて思わなかったもの。
買い物に行っても。
観劇に行っても。
避暑地へ旅行しても。
お茶を飲むだけでも。
どこへ行っても四人。
最初は助かっていたの。
レミアンの前では緊張していたし、ユゼフやネリアが話を盛り上げてくれたから。
でも、もう三年よ?
来年には結婚するのよ?
婚約者同士で二人きりの時間を過ごしたいと思うのは、そんなに贅沢な願いかしら。
しかも悩みはそれだけじゃない。
レミアンは、とにかくお金を使う。
しかも使うのは、全部アルマン伯爵家のお金だ。
ユーグ侯爵家は昔こそ栄えていたけれど、今は我が家の援助がなければ立ち行かない。
別にお金が惜しいわけじゃない。
アルマン伯爵家は裕福だもの。
問題なのは使い道。
レミアンはユゼフとネリアのためなら、驚くほど気前がいいのだ。
高級な服。
宝石。
豪華な食事に希少なお酒。
次から次へと贈っている。
そして私が一番気になっているのは――ユゼフとレミアンの関係だった。
ユゼフは、私より少し濃い赤毛の優男。
レミアンは、いつも彼を見ている。
ネリアじゃない。
ユゼフを。
目が合えば、ユゼフは意味深に微笑む。
するとレミアンも困ったように笑い返す。
二人は肩を寄せ合い、耳元でこそこそ内緒話。
その距離の近さを見るたび、胸の奥がもやもやした。
だって私とレミアンなんて、せいぜい手を繋ぐくらいなのに!
ある日、我慢できなくなった私はネリアに聞いた。
『レミアンとユゼフって、距離が近すぎない?』
するとネリアは面白そうに笑った。
『ふふふ。あの二人、恋人同士みたいよね』
『ネリアは気にならないの?』
『全然。だってユゼフは私を一番愛してくれてるもの』
そう言って肩をすくめる。
『レミアンだってエレナを愛してるでしょう? それで十分じゃない』
ピンクブロンドの髪を耳にかけながら、ネリアは続けた。
『だって男同士よ? 結婚もできないし。エレナはもっと心を広く持つべきだわ。もちろん、もし一線を越えたら私だって許さないけど』
――私の心が狭いのかしら。
そう思うと、強く反論できない。
実際、ユゼフはネリアをとても大切にしている。
寒ければ上着を掛けるし、少し咳をしただけで大騒ぎ。
誕生日でもないのに、しょっちゅう贈り物をしている。
……その代金、全部うちのお金だけど。
ネリアも当然みたいに受け取っているし。
それなら、レミアンから私への贈り物は?
……いつも花束。
『君のお金で君への贈り物を買うなんて変だろう? 贈り物は心が大切さ。
だからうちで咲いた薔薇を贈るよ。美しい君にぴったりだ』
そう言われたら、怒れなくなる。
だって彼が好きだから。
本当に大好きだから。
結婚したら変わるのかしら。
私を一番に見てくれるのかしら。
もっと二人で話したい。
もっと一緒にいたい。
そう何度も伝えた。
けれどレミアンは首を横に振る。
『僕は昔から人見知りなんだ。心を許せる友達は、あの二人しかいない』
『私よりもユゼフとネリアが大切なの?』
『違うよ! 友達と過ごせるのは今だけだから。その時間を大事にしたいだけなんだ。僕、間違ってるかな?』
結局、私は頷いてしまう。
だって、全てを許してしまうほど、私はレミアンを愛している。