軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第三話~訓練をしていたら告白されました~

鎧とセットでクォータースタッフを買った俺は街中を歩いていた。

次の目的地は宿だ。

メニューからマップを呼び出し、位置を確認する。

紹介された宿はそう遠くないようだ。俺は石畳の大通りを歩き始める。

さっきのルイスみたいに耳の長い人はあまり多くない。猫っぽいのは全くいない。

獣耳や尻尾を持つ獣人のような人も居るけれど、これもやはりあまり多くはない。少数民族なんだろうか。

町並みそのものはいかにも中世ヨーロッパといった感じで、冒険者ギルドのような木造建築よりも石造りの建物がやはり圧倒的に多いようだ。

石造りの家が多いと言うことは、あまり地震などは起きない地域なんだろう。石造りだと崩壊したりして危ないだろうからなぁ。

人口は何人くらいなんだろうか。マップを見る限りかなり広い、この街を探索するだけで数日過ごせそうだ。

「ほー…」

街の中央広場に着いた俺は思わず感嘆の声を上げた。

東京の雑踏もかくやという人ごみに、馬車まで行き交っている。

喧騒というよりは怒号に近いな、これは。

とりあえず慣れない人ごみに突っ込んで馬車に轢かれたりしても嫌なので広場の隅っこの方を歩く。

クロスロードの街はこの中央広場を中心として東西南北の四つの地区に分かれている。

まずは先ほどまで俺が居た東地区。

冒険者ギルドや商人ギルド、各種商店などが集まった商業地区のようだ。

北地区は裕福な人たちが住む場所らしい。反対側の南地区は普通の人とか、所謂貧乏人なんかも住む地区。

西地区は教会や役所、王国軍の駐屯地なんかがあるようだ。

目下の目標である宿は南地区の中央広場に程近い位置にあるらしい。

程なくして目的の宿へと辿りついた。

『灼熱の金床亭』とか書かれた真っ赤な金床の看板が目印と言っていたから間違いないだろう。

中に入ると随分と背の低い、しかし異様に体つきのガッチリしたおっさんが宿帳らしきものをつけていた。

奥の食堂らしきスペースには食事を取っている客らしき人影も見える。

おっさんは俺にすぐ気づき、人好きのする笑顔を浮かべた。

「いらっしゃい、灼熱の金床亭にようこそ。宿泊かな?」

「ああ、冒険者ギルドの受付のおっさんに紹介されて来たんだ。宿を取りたいんだが、一泊いくらだ?」

「冒険者ギルドからの紹介なら朝食つきで一泊大銅貨二枚と銅貨五枚だよ。昼と夜もウチで食うなら一皿サービスつきだ」

未だこの世界の金銭感覚が微妙に解らない。

とは言え武器や防具の値段から考えればそんなに高くはないような気もする。

「とりあえず十日分頼む」

「なら銀貨2枚と大銅貨5枚だね」

硬貨の仕組みがわかってきた。

銅貨10枚=大銅貨1枚、大銅貨10枚=銀貨1枚、さっきの武具店でのやり取りを考えると銀貨10枚=金貨1枚。

大銀貨はその中間貨幣のようだから大銀貨1枚=銀貨5枚かな。

実験してみるか。

「これでいいか」

「大銀貨ね、なら銀貨2枚と大銅貨5枚のお釣りだ。宿帳に記帳と、冒険者カードの提示を頼むよ」

どうやら予測は当たっていたらしい。

あとは銅貨1枚辺りの価値がわかればなんとなく経済感覚は掴めそうだな。

それに資金が大分目減りしてきた、当面の目標は情報収集と金稼ぎだろう。

さっきの発動体の件といい、この世界の常識も学習しないと思わぬトラブルに巻き込まれる恐れもある。

「おぉい、ピニャ! お客さんをお部屋に案内してくれ!」

宿帳への記帳と冒険者カードの確認を終えたおっさんが大声で奥の食堂に呼びかける。

デカい声だな、やたらとずんぐりむっくりな体型からするとただの人間じゃなくてドワーフか何かなのかもしれん。

「はーい!」

元気な声と共に奥の食堂から可愛らしいエプロンをつけた女の子が駆けてくる。

小さいな、十歳前後くらいか? 俺の腰くらいまでしか身長無いぞ。

「お客さん、お部屋まで案内するよ。こっちこっち」

ピニャと呼ばれた少女に誘われるまま二階への階段を登る。

階段の一段一段が低い。ある程度経営者に合わせたつくりになってるのかね。

案内された部屋は通りに面した部屋だった。

今は日当たりは良くないが西日は入りそうだし、ベッドも清潔だし、寝起きするには全く問題ない。

広さは五畳ほどだろうか? ベッドがあるのでそこまで広いとは感じない。

通りに面した窓の横には粗末だがテーブルがある。何か作業したり書き物をするのに使えそうだな。

床は板張りだが、ギシギシと音がするようなことは無い。板が厚いんだろう。

「良い部屋だな、ベッドも部屋も綺麗だし」

「食事も期待していいよ。ドワーフ料理は冒険者にぴったりだからね」

そう言ってピニャはにっこりと笑う。

気持ちの良い笑顔だな。

それに見た目の割には受け答えもしっかりしてる。

「んじゃ早速頂くかな。昼飯は今からでも食えるか?」

「勿論、一皿サービスするよ」

鍵を受け取り、クォータースタッフをストレージにしまって再び階下へと移動する。

食堂には宿泊客なのか、俺と同じ冒険者風の人が多かった。

装備を見る限りではどの冒険者も俺よりずっとベテランに見えるな。

真新しい装備に身を包んだ俺はちょっと浮いている気がする。

「はい、日替わり定食。銅貨3枚ね」

お盆に料理を載せてきたピニャに銅貨3枚を支払い、異世界初の食事に取り掛かる。

メニューはキャベツっぽい野菜と何かのモツの炒め物、野菜スープに黒パンだ。

炒め物は味噌炒めっぽい味で、ちょっとこってり気味だが食が進む。

キャベツっぽい野菜は火が通りつつも歯ごたえがあるし、モツもニンニクか何かと炒めているようで香りも良い。

逆にスープはあっさりめ。黒パンが堅いので少し浸して食べた。他の人もそんな感じで食べているようだ。

ちなみに一皿サービスってのはこのスープらしい。

「さて、どうするか」

今日のところは休むか、それとも街をフラフラしてみるか。

考えてみればメニューもまだ触り尽くしていないし、部屋に戻ってゆっくりしながらいじってみるか。

それから時間があればまた冒険者ギルドにいってクォータースタッフの訓練か、或いは外に出てイノシシ退治でも良いな。

「ごちそーさん、ちょっと部屋で休むわ」

「はーい」

厨房で働くピニャに声をかけてから自室に戻る。

メニューを開いてみるといつの間にかレベルが上がっていた。さっきの模擬戦の成果だろうか。

身体強化の効果もあってかSTR、VIT、AGIの伸びが良い。逆にDEXの値は殆ど増えなかった。

POWの伸びも身体強化のかかってるステータス並みだな。

最大HPは69、MPが164、多分VITとPOWに関係あると思うんだが、上昇値が13、17。

今回伸びた数値と一致しない。この辺の仕様はよくわからんな。

そしてスキルポイントだが6ポイント増加していた。

一つに絞ればレベル3まで取れるが、ここは広く浅くスキルを取得するのが良いだろう。

慎重すぎるか? いいや、これで良い。浪漫は求めない、効率重視だ。

死にたくないしな。

新武器のクォータースタッフを上手く扱うために長柄武器をレベル2にしておこう。

残り3ポイントで魔力強化、魔力回復、純粋魔法をレベル1で取得だ。

魔力強化をレベル1取っただけで一気にMPが164から246になった。身体強化と同じで1.5倍だな。

POWが増えるのかと思ったが、MPが増えるだけのようだ。

回復速度を計算してみると、さっきまで丸一日で全快というペースだった魔力回復の速度が1.5倍になったようだ。

現状で4分にMP1回復…あんまりポンポン魔法は使えんな。何か回復手段を考えないと。

純粋魔法のレベル1では魔矢というのを使えるようになったようだ。

窓から上空に向かって一発撃ってみたところ、どうも特に属性の無い魔法の矢を撃つ魔法のようだ。

変に属性がついてない分汎用性は高いかもしれない。

スキルの習得や検証がある程度終わったところで今度はメニューのインターフェースを弄ってみる。

どうもオプションをいじる事によっていくつかの項目を常時表示させておくことも出来るようだ。

とりあえずHPとMPを示すバーと、方角、ミニマップを常時表示させておいた。

持ち物の内容を再チェックしてみる。

まずは冒険者セット。

ナップザックに入った冒険に使えそうな道具が色々と入っている。

毛布、松明、火口箱、ナイフ、ロープが10メートル分。

後は大銀貨が1枚、銀貨が6枚、大銅貨が18枚、銅貨が17枚。

それにスモールボアの毛皮が一つ、スモールボアの肉が一つ、スモールボアの死体が二つ、ビッグホーネットの死体が一つだ。

後は干し肉とドライフルーツ、カンパンがパッケージングされた保存食が三つ、皮製の水袋に入った水が一つか。

どれだけ収納できるのかわからんが、重量表示とか無いところを見れば重量とか大きさは考慮しなくても良いのかもしれない。

冒険者セットのように一つの袋に入れてしまえば一種として認識されるようだ。

スモールボアの死体も二個スタックされている。かなり持ち運べそうだな。

でも街中を荷物を積んだ馬車が走っていたことを考えれば、これは一般的な能力じゃないんだろう。

これが使えるなら荷馬車なんて必要ないもんな。

とは言えどの程度許容されるのか調べておく必要もある。どこかの店でストレージからアイテムを取り出して見せてみよう。

その後も色々とメニューを弄繰り回しているうちに午後三時を回った。

収穫といえば道具欄のストレージ内に入っているアイテムは念じるだけで手をかざした先に出現させられることがわかったくらいか。

神コールは押せなかった。

このままゴロゴロしてても良いが、暇なので冒険者ギルドに行ってどんな依頼があるのか見てみよう。

死体とか毛皮とか肉とか売れるなら売っておきたいし。

いや、肉は塩でも買い込んで塩漬けにでもしておくか?

そういやストレージに入れておいたままだと腐ったりするんだろうか? ううむ、色々実験しないといかんな。

晩飯の仕込をしていたおっさんとピニャに声をかけて冒険者ギルドへと向かう。

MPは37、大体ギルドに最初行ったのと同じくらいまで回復している。

「おう、いっぱしの冒険者らしくなってきたじゃねぇか」

冒険者ギルドに入るなり声をかけて来た受付のおっさんに適当に手を振ってから依頼が張り出されていると思しき掲示板を眺めてみる。

安全なのは街の中でのお使いのようなものから街周辺の巡回みたいなものみたいだな。

というか普通に文字読めるな。

次に近くに生息した害獣や魔物の駆除、このへんの危険度はピンキリだがしっかりリスク管理されているようだ。

やはり危険なのはどこから何が襲ってくるかわからないような場所に赴いて様々な物品の収集や、あるいは魔物を討伐してくるようなクエストみたいだ。

すぐにできるようなクエストは無いかと見ていると、スモールボアの調達というクエストを見つけた。

どうやら食材として求められているらしい。

必要数は一頭か、これはイケるな。

俺は依頼票を掲示板から剥がし、受付のおっさんへと持っていく。

「おっさん、この依頼を請けたいんだが」

「俺の名前はウーツだ。どれ? スモールボアの調達か。油断しなければ大丈夫だろう」

「実はもう狩ってあるんだ」

そう言って俺はカウンターの上にスモールボアの死体をストレージから直接取り出してみせる。

「うお! っておいこらカウンターが血で汚れるだろうが! あっちの専用カウンターに出せ!」

「すまん」

素直に謝ってストレージにスモールボアの死体を再収納する。

おっさんがカウンター越しに移動するのに俺も着いていき、依頼品の受け取り専用カウンターで再度スモールボアの死体を出す。

殺してすぐ収納したのでまだ生暖かい。

生暖かい? ということはストレージ内では時間経過が無いのかもしれんな。

「トレジャーボックス持ちだったのか、珍しいな」

「トレジャーボックス?」

聞き返した俺におっさんもといウーツは変な顔をする。

「何にも無いところから死体を取り出しただろ? トレジャーボックスじゃないのか?」

「お、おう。トレジャーボックスって言うんだな。田舎で俺に魔法を教えてくれた爺さんに習ったんだが、爺さんはストレージって言ってたんだ」

「ほー。まぁ俺もそんなに魔法に詳しくないからな」

ウーツは特に気にした様子も無くスモールボアの死体を検分している。

検分が終わったのか他のギルド職員に奥の方へとスモールボアの死体を持って行かせた。

「うん、問題ない。依頼達成だな」

ウーツのおっさんが依頼票に判子を押し、報酬の大銅貨五枚をくれる。

ほう、中々実入りがいいな。

「スモールボアの死体がもう一体と、毛皮が一頭分。他にビッグホーネットの死体もあるんだが、買取は可能か?」

「ふむ、見せてくれ。状態は良いな、合わせて大銅貨五枚で買い取ろう」

「頼む」

上手く獲物が見つかるかが問題だが、たったこれだけで大銅貨十枚だから銀貨一枚の稼ぎになったわけだ。

思ったより稼ぎは悪くないんじゃないのか、冒険者稼業ってのは。

「初日からなかなかトバすじゃないか。期待大だな」

ウーツのおっさんはニヤニヤしながら肩を叩いて受付カウンターに戻っていった。

あのおっさんのニヤニヤ顔には嫌な予感が漏れなくセットでついてくるようになったんだが…どんな無茶振りをされるかわかったもんじゃない。

葛藤の末、訓練場で棒術の練習をすることにした。

突き、払い上げ、振り下ろし、回転しながらの薙ぎ払いと後ろ回し蹴りの合わせ技、飛び込みながらの叩き付け。

更に隙を消すように攻撃魔法を組み合わせれば…うん、これは思ったより使いやすいかもしれん。

長柄武器スキルで槍やポールウェポンの類も扱えるっぽいし剣術よりもお得なスキルじゃなかろうか?

狭い場所だと使いづらいのがネックだな。

「ふぅ」

一通り動きを確認したので修練場の隅っこにあるベンチに座って休憩する。

ううむ、タオルとか用意したほうがいいな。

というか考えてみれば着替えも何も無いんだった。早いうちに買いにいかなきゃならんな、これは。

「あの、ちょっといいですか?」

水袋を手に考え事をしていると声をかけられた。

視線を上げてみると、革鎧を装備した女の子だ。

鳶色のポニーテールでパッチリとした目は好奇心によるものか、輝いているように見える。

顔立ちも整ってるし、なかなかの美人だな。

欧米人っぽい顔立ちだから歳はよくわからないが、多分二十歳にはなってないだろう。

「何か用かな?」

水袋をストレージに仕舞いつつ、素早く回りに視線だけをめぐらせる。

こっち見てる怪しいのは二人くらいか。

「あの…わ、私と…」

なんかプルプル震えて俯いてる。

美人局の類か何かかと思ったんだが、考えすぎだろうか。

「ほむ…続けて」

俺がそう言うと彼女は顔を上げ、

「私とつきあってください!!」

静まり返る修練場。

突き刺さる生温い視線。

どうしてこうなった。